半永久の殺意
すっと読めるはずです。
私は三十路の女、恵子。
私には、付き合って10年の彼がいる。名前は正則同い年でとってもやさしい男。
彼の容姿はとても良いとはいえないが長年付き合っていると愛嬌があり愛おしく感じる。
そろそろ私も結婚したい。
彼と温かい家庭を持ちたい。
彼に結婚の話をしても聞く耳を持たない。10年も付き合っているのに、責任取れないなんて冗談じゃない。
今日はそんな彼のウチに泊まりに行こうと思う。突然いって驚かしてやる!彼への罰だ!
彼のアパートまできてそっと窓から中を覗いてみた。
えっ!?
思わず声を漏らした。女がいる。浮気?ありえない!あんなブ男があたしがいながら他の女に手を出すなんて!
恵子は顔を真っ赤にして血走った目で女を睨みつけ玄関を開けてとっさに台所にあった包丁を持って女に切りかかった。
女はひるみ尻餅をついた。興奮した恵子は女に飛び掛り刃物を振り下ろそうとした瞬間、正則に首を絞められた。
恵子は必死に抵抗するが正則は鬼気迫った表情でさらに強く首をしめ終に恵子はぐったりとして二度と目覚めることが無かった。
私はしばらく意識を失っていたらしい、彼に首を絞められ苦しかったことを覚えている。彼が憎い殺したいほどに憎い・・・・
おぎゃぁ!おんぎゃぁ!おぎゃぁ!
恵子が亡くなり49日たったある日病院でひとりの赤ん坊が産まれた。のちにその子供は抱えきれない殺意とともに育っていった。
わたしは恵子16歳今はあずさという名前で生活している。不思議なことに私は生まれる前の記憶がはっきりと残っている。そうあれだけ愛していた彼のこともその彼に殺されたことも、私は生まれて16年間そのことを何度も繰り返しおもいつづけていた。あの男を今夜ついに殺すことができる。今すぐに殺してやりたいあの男の苦しむ姿をこの目にやきつけたい。
本当はもっと早くに殺したかった、しかし彼は私を殺した後引っ越して居所がわからなくなっていた。たまたま通いだした高校に登校するため乗っていた電車に彼がいたのだ。私は彼を尾行して家を知ることができた。私は考えていた殺し方からひとつを選びそれを実行することにした。
私は46歳の親父、下田正則。妻も子供もいる。昔はひどいおんなに散々振り回されたが今はとても幸せだ、この幸せが一生つづけばいいと思っている。今日も妻の作る夕飯はうまい、かぼちゃの煮つけに味噌汁そして鰯のハンバーグどれも健康的だがよほど外で食う飯よりもうまいものを出してくれる。そんな妻にもあのときは辛い思いをさせた罪滅ぼしに一生を妻に捧げることを決意した。
女「宅配便でーす。」
正則「はいー!今行きます。」
こんなとき私は妻をわざわざ呼んだりしない。だれ宛か知らないが日ごろ家庭を任せているのだ、家にいるときは、妻をゆっくりさせたい。
正則は玄関の扉を大きく開けた。そこには電車でよく見る女子高生がバケツを持って立っていた。
女子高生「恵子さんからガソリンとライターが届きました。」
するとバケツに入ったガソリンを正則の全身に浴びせすぐにライターを投げ込んだ。
正則は勢いよく燃え上がり断末魔の叫び声をあげた。
恵子は、恍惚としていた。しばらくして満足そうな顔をしてその場を去った。
正則はもがき苦しみ倒れこんだ。すると妻のみきが駆け寄り、火を消そうと水をかけた。しかし火はほとんど消えなかった。それどころか火は玄関から廊下に燃え広がってきていた。
正則「くるな!はやく子どもと一緒に窓から逃げろもう家ごと燃えてしまう」
しかし玄関の観葉樹が燃え盛りながらみきを襲った。
正則は意識が朦朧としながらみきが燃え盛るのを見ていた。そこに駆けてくる子どもの姿も。
時は経ち
私の名前は下田正則20歳今は秋坂大輔と名乗っている。私には生まれる前の記憶が残っている。そう恵子にガソリンをかけられ私自身も妻も子どももなにもかも燃やし尽くされた記憶が。
下田正則と名乗っていたころ、あの女が電車に飛び込もうとしていたところを助けた。それから告白してきて、ふった。それからストーカーが始まったんだ。
私はあまりモテなかったそれでもあの女と付き合う気になれなかった。完全にイカレてるそれが第一印象だったからだ。
月日がたち引っ越しをしながら30才になりやっとみきと出会ったのだ。そして、あの日初めてみきを家に呼んだ。そのとき恵子がきてみきに切りかかったそれを私は殺した。過剰防衛で罪に問われたが恵子は精神疾患があったそれを考慮され罪が軽くすんだのだ。
あの時殺したはずの女が高校生になって私を殺しにきた、そんなの信じられない。しかし今は信じられる。
今日私は恵子を殺そうと思う。恵子の通っていた高校を調べあの年から3年後までのアルバムをやっとみつけ、しらみつぶしにあのときみた顔を捜しだした。すぐ見つけ出し名前を検索。
そしてすぐにSNSで居場所がわかった。
この日は彼とデートだそうだ行き先や移動手段までくわしくつぶやいている。
36歳の恵子は地下鉄で電車を待っていた。若い男と腕を組み楽しそうにいちゃいちゃしている。突然後ろから何者かに背中を押されて恵子は線路に放り出された。恵子は顔を上げると怒りに満ちた目で睨まれていることに気づいた。
恵子「まさかお前!」
その瞬間電車は恵子を轢き殺し車体が血に染まった。
300年後
私は恵子、今はしずくと呼ばれている。もちろん正則を殺すために産まれてきたのだろう、これで何回目だろう、もはや何の恨みがきっかけかさえわからない。でも正則を殺すのは楽しい次はどうやって殺そうかワクワクする。
恵子と正則の殺意は、生まれ変わるたびに増し、それは人類が滅亡するまで続いた....
みなさんも殺したくなるほど人を憎んだことは無いだろうか。それは魂に乗って何世紀も受け継がれた殺意なのかもしれない。
殺意は遺伝する。人の愛も受け継がれます。戦争がなくなるといいですね。