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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第五話 付き合い初日の朝、周囲の反応と、(俺の)ファンからの脅迫手紙

しばらく間が空いてしまいました。これからもちょくちょくこういうことがありますが、投稿は続けていきます。

第五話 付き合い初日の朝、周囲の反応と、(俺の)ファンからの脅迫手紙


 陽菜と付き合うことになった翌朝、割とすっきり起きることが出来た。ベッドに寝転がった姿勢のまま、天井をぼんやりと見つめた。


 俺、彼女が出来たのか。一晩経っても、まだ実感が沸かない。


 突然、壁がドンドンと音を立てた。俺にとってはおなじみのことなので、驚くことはない。


 きっと隣に住んでいる早智が叩いてきているのだろう。


 俺の住んでいるマンションは、隣の家との壁が薄いので、ちょっと強く叩いただけで、隣の部屋に聞こえてしまうのだ。これだけならいいのだが、テレビの音まで漏れてしまうので困る。以前、ホイケルとエロDVDを鑑賞した時も同じように漏れてしまい、ホイケルが帰った後で散々いじられた。


 話を戻そう。早智は俺が叩き返すまで壁を殴り続けるのだ。居留守を使っても無駄だ。壁が薄いから、俺が帰宅して自室に入ったことなど、隣にいる早智には丸わかりなのだ。


 無視していると、もう一度壁が叩かれた。


「うるさいな。何度も叩かなくても、ちゃんと聞こえているよ」


 朝の静かな時間を邪魔されたことで、イラッときたので、少々乱暴に返事を返す。


「おはよう。昨夜はよく眠れた~?」


 隣室から早智の元気の有り余った声が聞こえてきた。ボリュームがありすぎるので、少し落としてほしい。そんな大声でなくても、この家の薄い壁なら、十分聞こえる。


「いつも通りだ。良く眠れたよ」


「あら。美咲さんとのあんなことやこんなことで頭の中が一杯になって、寝不足だと思ったのに、つまらないの」


 まだ俺で俺のネタで楽しむつもりなのか。内心、ざまみろと思いながら、時計を見た。時計の針は、午前七時ちょうどを指していた。特に意味はないが、何気なく見たときに、ピッタリのタイミングだと得した気分になる。今日は良いことがありそうだ。


「ねえ! これから朝食を食べるんでしょ。外で待ってるから、一緒に登校しようよ」


「OK!」


 問題はないので、二つ返事で承諾する。彼女が出来たのだから、誤解されないように、同世代の女子と二人で歩くのは避けるべきだという思考は全く働かなかった。


 壁の向こうではドアの開閉する音が聞こえた。早智が自室から出ていったのだろう。


 俺も起きることにした。素早く身支度を整えて、リビングに移動する。人気はなかった。母さんはもう働きに出ているのだろう。


 朝食の作り置きがなかったので、昨日の夕食の残りで、朝食を済まそうと冷蔵庫を開けた。冷蔵庫の中には、大きな鶏のむね肉が二切れしか入っていなかった。牛乳すら入っていない。普通は肉やら卵やらも入っているところなのだが、こんなバランスの悪い配置は、いかにも俺の親らしい。


 腹が減っていたので、むね肉を二つとも出してフライパンで痛めた。強火で熱したので、あっという間にこんがりと焼き上がった。


 それを腹の中に詰め込むと、ガスや水道の点検を簡単に済ませて、鞄を片手に玄関を出た。


 外に出ると、早智が携帯ゲームをしながら、俺を待っていた。


「朝からゲームをしていて目が疲れないか?」


「電脳系美少女の早智ちゃんには、これくらいが丁度いいのです」


 自分のことを美少女とのたまう厚かましさは相変わらずだが、早智はバリバリの電脳オタクだ。自室は最新の電気類で埋め尽くされている。全てのゲーム機を所持しているし、自作PCも4台も組んでいる。最近では、趣味が高じて、秋葉原のPCショップでバイトまで始めてしまった。ここまでくると畏敬の念すら沸く。


「立ち話もなんだし、出発するか」


「そうね」


 携帯ゲームを切りのいいところまでプレイすると、早智はゲーム機をカバンに仕舞い込んだ。




 早智と通学路を歩いていると、あることに気づいた。違和感と言った方がいいのかもしれない。


 隣を歩く鈍感な早智は気づいていないようだけど、明らかに周囲から睨まれている。注意してみると、ほとんどが俺と同じ王泉高校の男子からだった。


 どうして男子からこんなに睨まれているのか、疑問に思ったのだが、すぐに理由が分かった。俺を睨んできているのは、陽菜のファンのようだ。殺気を飛ばしてきている奴までいる。


 彼らのアイドルに手を出したのだから、多少の危険は予想していたが、初日の登校時からくるとは。この分だと、家に帰るまでに、痣の一つや二つできることを覚悟しなければなるまい。


「あなたらしくもない真面目な顔をしているけど、どうかした?」


「何でもない」


 早智はまだ俺に向けられている視線に気づいていない。こいつほど鈍感なら、今日からしばらく続くだろう日々も幸せに送れるのに。



学校に着くと、用事があると言って、早智はそそくさと先に行ってしまった。


 一人になった俺は教室に向かって歩き続けた。


 校舎に入って下駄箱を開けると、手紙が一通入っていた。女子が好むようなピンク色の便せんに入っている。ウサギの絵も描かれていて、一見すると、かわいらしい印象を受ける。もっとも、今朝の件もあるので、油断はできない。


 開けても爆発はしないと思うけど、慎重に開ける。中に入っていたのは手紙だけ。画鋲や危険物の類は入っていない。


「美咲さんと付き合うことになったって本当なの。ひどいよ! 私というものがありながら。早く別れて! そして、私と付き合って!」


 手紙には以上のことが書かれていた。


 「……何これ?」というのが率直な感想だった。意表を突いた内容に口を開けたまま、立ち尽くした。


 頬をつねってみる。痛い。もう一度手紙を見る。まだ手元にあった。眠気のせいで、幻覚を見たわけじゃなかった。


 手紙を読み返してみたが、差出人の名前はなかった。新聞の切り抜きのみで書かれていたため、筆跡で差出人を推理することも出来ない。


 早智やホイケルのイタズラだろうか。もしくは、陽菜ファンの誰かの仕業か?


 第一、要求通りに陽菜と別れても、どこの誰か分からないのでは付き合えないではないか。


 おそらく罠だろう。手紙の差出人を美少女と思って、陽菜と別れさせようという魂胆があるとみた。いや、待て。陽菜も美少女だから、俺が引っかかる可能性は低い。


 じゃあ、この手紙はマジなのか? うう……、こんがらがってきた。朝から頭を使いたくないのに。


 その時、後ろからいきなり目隠しされた。手が女性だったことと、心当たりがあったので、誰なのかはすぐに分かった。


「だ~れ~だ?」


 陽菜の声だった。今時、目隠しとは古典的なことをする。


「陽菜」


「大正解♪」


 手を放すと、俺を見て笑った。何の変哲もない日なのに、やけに楽しそうだ。


「早く優司君と会いたくて、今朝は五時に起きたんだよ」


「早すぎ。授業中に眠くなるよ」


 俺なら時計を見た後に二度寝する。異性にそこまで興奮してもらえるのを、男として喜ぶべきなんだろうか。恋愛に疎い俺にはよく分からない。


「ねえ、手をつないでもいいかな?」


「さすがに校内はまずいんじゃないか? 生活指導の先生に見つかったらたいへんだ」


 本音を言うと、教師よりも、陽菜ファンからの過激な報復を恐れたんだが、陽菜に言うことでもないだろう。


「それもそうだね。じゃあ、手をつなぐのは放課後まで我慢! その代わり、放課後になったら握りまくってあげるから、覚悟しておいてよ」


 曖昧に笑いながら、陽菜と一緒に教室に向かい歩き出す。


「そういえばねえ。不思議なことがあったの」


「何?」


「昨日の夜、男友達から優司君との交際を確認するメールが何通も来たの。おかげで勉強が手につかなかったわ。誰にも話していないのに、どうしてみんな知っているのかな?」


 陽菜は本当に分からないようで、頭を捻っている。


 もしかしたらホイケルが腹いせで情報を漏えいしたのかもしれない。いや、昨日仲睦まじく二人で帰ったからな。邪推したやつらが陽菜にメールでそれとなく聞いた可能性もある。


「それで何て返事をしたの?」


「本当のことを書いて送信したよ。隠すことでもないでしょ♪」


 全てのつじつまがあった。今朝の刺すような視線は、俺と陽菜の関係を知った隠れファンの連中からのもので間違いなかった。陽菜は自分の人気の高さを自覚していないのか。


 まだ付き合い始めたばかりなのに、この大荒れ。収束して欲しいものだが、どんどん激しくなっていきそうな気もする。


 さっきの手紙はどうしよう。何もしてこないと思うけど、万が一ってこともあるしなあ。これが俗にいうヤンデレというやつか。


 とりあえず早智にでも相談してみるか。一人で抱え込むより、幾分かマシだろう。


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