第四話 罰ゲーム的な告白(後編)
前回の続きです。思ったより早くupできました。ひょんなことから、告白した岩見優司の運命や如何に!?
第四話 罰ゲーム的な告白(後編)
放課後の屋上にて、俺と陽菜は見つめあったままでいた。俺は陽菜の返事を待ち続けていた。というか、身構えていた。どんな言葉で罵られるのだろう。こっちから告白しておいて何だけど、俺、結構打たれ弱いから、友達でいましょうとか、ごめんなさいとかで、簡単に済ませてほしい。
「ククク……」
「馬鹿! 気づかれるでしょ。もう少しの辛抱よ」
物陰から、馬鹿共の押し殺したような笑いが聞こえてくる。幸いなことに陽菜には聞こえていないようだ。
元はといえば、ホイケルのために恥を忍んで告白しているのだ。なのに、当の本人ときたら、笑いを堪えているばかりで、自分が告白する際のデータを集めているような素振りはない。これでは何のために俺が告白したのか、分からない。理不尽だ。
あの不届き者たちには、後でたっぷりとお礼をしてあげねばなるまい。
とにかく一つ言えるのは、早くこの時間が去ってくれるのを、全力で祈っているということだ。
なのに、陽菜は黙ったまま。
どうしよう。返事の催促でもしようか。などと考えていると、ふと陽菜の変化に気づいた。
彼女の顔がさっきより喜びの度合いが増えている気がする。
気のせいかと思って見ていると、陽菜の顔はどんどん紅潮していった。遂には目には涙まで浮かぶ。俺に告白されたのが、そんなにショックなのだろうかと、女心に疎い俺はどきどきした。
そして、次の瞬間、全く予想もしていなかった言葉が、俺の耳に入ってきた。
「私も岩見君のことがずっと好きだったの。両想いだったなんて嬉しい」
そう言って手を握ってきた。
「……え?」
あれれ? 話がどんどん明後日の方向に進んでいくぞ。予定では、「ごめんなさい」と丁重に断られている頃なんだが。もしくは、「あんたなんか眼中にないわよ。身の程を知りなさいよ、馬鹿!」と手痛い言葉を言われてへこんでいる頃か。
「そうなんだ……」
とりあえず絞るようにして出したのがこれ。もう気が動転してしまい、これが精いっぱい。今更緊張してきて、唇は乾燥し、喉もカラカラに干上がった。
「えへへへ……。私たち、両想いだったんだね。こんなことなら、うじうじ悩んでいないで、私の方から早く告白すればよかったよ」
告白が嘘と知らず、陽菜は本気で喜んでいた。何か、彼女にすごくひどいことをしている気がしてきた。土下座して謝った方がいいかな……。
「い、いいじゃないか。こうしてお互いの気持ちを知ることが出来たんだから」
「そうだね……」
早く本当のことを言わなきゃいけないことは分かっているのに、陽菜の顔を見ていると言い出せない。彼女を傷つけまいと、嘘を重ねていく。
「ただのクラスメイトなのは今日まで。この瞬間から、カップルだね!」
「ああ……」
結局、俺は本当のことを言えず、告白を終了させてしまった。つまり、陽菜と付き合うことになったのだ。
物陰の二人も、さぞかし驚いているだろうな。特に、俺の後に告白する予定だったホイケルには衝撃だろう。ただ、先を越されたならいざ知らず、自分で自分の首を絞める結果になってしまったのだから。
「まずは、一緒に帰ろう。恋人同士なんだから変じゃないよね」
「うん。別におかしくない……」
改めて見ると、陽菜は幸せそうだ。好きだった相手から告白されたんだから、無理もない。問題なのは、その相手というのが俺だということだけど。
「いろいろお話ししよう。あ、でも、もしかしたら、私の方が一方的に優司君に質問しちゃうかも。私、おしゃべりだから。気になったら、言ってね」
「分かった……」
陽菜のペースに合わせていたら、このまま二人で仲良く帰宅コースか。その前に、早智とホイケルと話しておきたかった。話すことで、ちょっと頭を整理したいと思ったのだ。
「教室に鞄を置いてきたから、取ってくる。悪いけど先に下駄箱のところで待っていてくれないか?」
「うん!」
満面の笑みで、陽菜は屋上から去っていった。去り際に「先に行っているから、早く来てね」と言ったのがかわいくて、不覚にもグッときてしまった。
屋上に一人ポツンと残される俺。いや、厳密には一人ではない。隠れキャラが二人いるのだ。
「おい、もう出てきていいぞ」
後ろを振り返らないで、独り言のように叫ぶ。
「OKされちゃったわね……」
「振られちゃったね! 岩見君元気出せ! 女の子は一人じゃないよ!」と書かれた横断幕を持った早智が、何とも言えない顔で出てきた。後ろにはゾンビのような顔をしたホイケルもいた。
「何だよ、それ。俺が振られた後、からかうつもりだったのか」
横断幕を見たら、また怒りが沸いてきた。
「あははは! その点は水に流してよ。それより、OKされちゃったね」
こいつは「OKされちゃったね」しか言えない子なのだろうか。何回繰り返すつもりだ。
「でも良かったじゃない。彼女が出来て。私ね、あんたには一生彼女が出来ないって信じていたから、この結果には素直に驚いているの。あんたの方は……、そんなに嬉しそうじゃないけど」
当たり前だ。悪ふざけの延長で、好きでもない女子に告白させられ、思いがけずに付き合うことになった。整理するだけで一杯一杯だ。喜んでいる余裕などあるはずがない。ていうか、俺に一生彼女が出来ないって何だよ。勝手に失礼な期待を寄せるな。
胸の内を正直に打ち明けると、早智は仕方ないといった顔をしてため息をついた。
「だったら別れろよ……」
ゾンビ顔のまま、ホイケルが恨めしそうに俺を見た。ゾンビで満たされた町に行けば、彼らから仲間として迎え入れてもらえそうなくらいだ。
「断る!」
俺はホイケルの要求を断固として拒否した。
俺を笑いものにしようとした罰だ。先に告白させるから、こういうことになるのだ。存分に反省するがいいさ。
それにあんなに喜んでいる陽菜に、本当のことを打ち明けるのは気持ちが痛んだ。
「てめえ……」
恨みがましくホイケルが睨んでくる。俺には心地よい顔だ。すっかり立場が逆転している。
一方の早智は、「いつもの調子で面倒くさいから付き合うのは止める! とかいうと思ったのに、意外。さては本気で惚れたか?」とか言っている。相変わらず失礼な奴。いつもの調子って、何だよ!
心配しなくても、陽菜とのラブラブ生活などすぐに終わる。賢い陽菜なら、俺などつまらない人間だということに気づき、自分とは釣り合わないと、すぐに向こうから別れ話を切り出すに決まっている。流れで付き合うことになったとはいえ、せめてそれまでは彼氏として接しよう。
俺をからかおうとした罰だ。さっきのお返しを決め込んだ俺は、ホイケルの憎しみがかなり混じった視線を背に受けながら、校門で待つ陽菜の元に急いだ。
この時の俺は陽菜との交際をこんな感じで軽く捉えていた。自分の人生がこの日を機に大きく変わっていくことになろうとは、夢にも思っていなかった。
こんな展開が自分にも起きないかな……。などと思いながら書きました。このコメントを読んで、気分を害された方がいたらすいません。間を空けないで、続きを書きたいと思っていますので、また読んでいただければ嬉しいです。




