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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第二十八話 季節外れのニューフェイス

いつも読んでくださってありがとうございます。まだまだ力不足なところはありますが、少しでも面白いものを書こうと精進しております。


↑前書きを書いていて感じましたけど、私の言葉もなかなか固いですね。その内、慣れてくると思いますので、適当に流してくださいw

第二十八話 季節外れのニューフェイス


 翌日、登校すると、学校は水をひっくり返したような騒ぎになっていた。


「一体どうしたって言うんだ?」


「王泉ランキングの六位が、久しぶりに登校してくるらしいな」


 登校中に、珍しくホイケルと顔を合わせたので、クラスに向かいがてら聞いてみたら、そんな返答が返ってきた。


 王泉ランキング。美少女研究会の連中が、王泉高校の女子をランキング分けした、女子側にとっては至極迷惑な順位表。陽菜も一位にランキングされているらしい。


「何だ、そんなことか。学食のカツカレーがタダで食べれるようになったのかと思った」


「確かにそのニュースも捨てがたいけどな。お前、もう少し性欲を持った方がいいぞ」


 親身になって心配しているようだが良いのかい? 俺が性欲を持つと、その矛先が向くのは陽菜だぞ。お前にとっては気分が悪い話題の筈だ。まあ、こいつにとっては、かわいい女子の話が出来ればいい程度の気持ちで言っているだけなんだろう。


 教室が近づいてくると、陽菜が駆け寄ってきた。


 交際当初は発狂せんばかりに叫んでいたホイケルも、最近では俺と陽菜が横で話していても、冷静に対応するようになっていた。人間、慣れるものだな。


「今日も熱いな……」


 とはいっても、あまり気分が良いものではないらしい。用事があると言って、どこかに行ってしまった。


 気を取り直して、二人で教室に入ると、教壇の前に人だかりができていた。


「何だ? アイドルでも転校してきたのか?」


「半分正解かしらね」


 先に登校していた七海が話しかけてきた。人だかりに思い当たる節があるのか、陽菜が七海に質問をした。


「あの輪の中心にいるのって光?」


「そうよ。早速話題になっているわ」


 光。昨日陽菜の家で会った、病弱な子か。確か学校を休んでいるって聞いたけど、転校でもしてきたのだろうか。


「優司君も昨日、私の家で会っているから、覚えているよね」


「ああ、病気を理由に屋敷に強制送還された子だろ」


「うん。人間米袋として、日向に担がれて屋敷に運ばれていった子だよ」


「何なの、この会話」


 七海が呆れたように突っ込んだが、気を取り直して光の説明をし出した。


「彼女はね。陽菜専属のボディガードよ」


 ボディガードって、主人をあらゆる危険から守るっていう、あのボディガード? 言っちゃなんだけど、光に勤まるのだろうか? 病弱なボディガードなんて、奇抜すぎる。てっきり家事専門の使用人とばかり思っていた。


 また、ボディガードという言葉を聞いて、俺は背筋に冷たいものを感じた。以前、陽菜と遊園地でデートした時に遭遇したお兄さんたちを思い出したのだ。


「あいつらはAチームよ。陽菜が屋敷の外に出るたびに、身辺を警護する、一般に知られているようなボディガードの仕事に徹している連中よ。それとは別に陽菜と一緒にこの学校に通って、彼女をサポートするBチームが存在するの。あなたが昨日会った琴羽光と深海日向の二人はBチームに属しているわ。一応二人とも空手の有段者よ」


 空手の有段者ねえ……。光には失礼だけど、全然黒帯に見えない。俺でも楽勝できそうなくらい威厳も感じない。


「しかし、陽菜を護衛するためとはいえ、わざわざ転校してくるとはね……」


「違うわよ。彼女たちは今までも王泉高校に通っていたわ。クラスは違ったけどね。日向はともかく、光は結構噂になっていたわよ。耳にしたことはないかしら? 六組に天使みたいにかわいらしい子がいるって噂話」


「いや、聞いたことないな」


 生憎美少女の噂話には疎いもので、たまにホイケルが話しているのを聞いても、すぐに忘れてしまうのだ。


「他の男子との会話にはついていけないでしょうけど、陽菜の彼氏としては、そちらの方が安心できるわね」


 本心から安心しているのか、それとも馬鹿にしているのか分からないため息を七海は吐いた。


「じゃあ、クラスを移ってきたってことか? この中途半端な時期に」


「うん! 最近、豊嶋さんと言うライバルが現れたからね。万全を期すために、光と日向にクラスを移ってもらったの」


 あっさりと言ってくれるが、自分の我がままで使用人の通うクラスを替えさせるとは。転校させるより、何倍ものパワープレイだ。


 陽菜の家が大金持ちなのは昨日骨身にしみさせられたが、生徒の配置にまで影響を及ぼすとは。計り知れない!


「あ、あれ? 六位がいる!」


 遅れて教室に入ってきたホイケルが光を見て声を上げた。


「光のことを知っているのか?」


「知っているも何も。彼女は王泉ランキングの総合六位だ。今朝、話したばかりだろ。もう忘れたのか? でも、琴羽さんは六組の筈だろ。なぜここに?」


「クラスを移ったらしいぞ」


「マジか!」


 この世の天国が到来したと言わんばかりのはしゃぎようだ。そうか。今朝、ホイケルとの話に上がったランキングの六位って、光のことだったのか。


 ホイケルは完全にデレデレモードだ。ただでさえ間抜けな面に、さらに締りが悪くなっている。本人は気づいていないが、鼻の下が完全に伸びていて、気持ち悪い。


「本人は目立つのが嫌いだから、ランキング六位という地位には不満の様だけどね」


 ため息交じりに七海が会話に入ってきた。


「光はね。仕事もできるし、努力家なんだけど、あのルックスでしょ。とにかく目立っちゃって。いつの間にか、王泉ランキングの総合六位に上り詰めちゃったの。本人は陽菜の下だから、一応ホッとしているみたいだけど」


 確かに、主人よりも目立ったら、使用人の立場がないからな。光の気持ちは分からないでもない。


「そういえばお前も総合十一位なんだよな。お前には勝ってるってことか」


「い、いいのよ! 所詮男子が勝手に考えたランキングですもの。それで人間の優劣が決まるわけじゃない。私は気にしてなんかいないんだから!」


 気にしてないと言いつつ、内心相当気にしているようだ。


 光を見ると、こちらをちらちら見ている。どうやら、こちらに来ようとしているみたいだが、クラスの連中の質問攻めに遭ってしまい、足止めを食らっている様子だ。


 昨日、屋敷でも陽菜に押し切られていたし、押しに弱い性格なのかもしれない。


「なあ。光はなかなか陽菜のところに来れないようだけど、あれでボディガードとしてやっていけるのか?」


「……どうでしょうね」


 光の業務内容については、七海も疑問を持っているらしい。


「まあ、Bチームの人間はもう一人いるから……」


 そう言って、窓際に目をやった。


 俺も窓際を見ると、見慣れない女子生徒が一人本を読んでいた。日向だった。人の輪が出来ている光とは対照的に、一人で窓際にポツンと佇んでいる。


「よお! 昨日はどうもな!」


 タメ口で話しかけて大丈夫かどうかは分からなかったが、丁寧語で話す関係でもないので、これでも問題はないだろう。


「おはようございます、岩見様」


「は? 岩見様?」


 事情を知らないホイケルが眉間に皺を寄せる。


「ああ、この子な。陽菜の家の使用人なんだ。昨日行った時もいたから、軽く再会の挨拶をしたんだけど、真面目な子だから畏まっているんだよ」


 説明はこれで間違っていないよな。


「ああ。そうだったな……。そういえば、昨日美咲さんの家に行っていたんだっけなあ……」


 忘れていた怒りが再燃してきたように、ホイケルのこめかみに青筋が浮き出てきた。今、話題にしたいのは、そっちじゃないのに、ややこしくなってきたなあ。


「相変わらず固いのね。ここでは主従関係もないんだから、せめて教室ではタメ口で話せばいいのに」


「そうだよ。もっとフレンドリーに行こうって今朝も話したじゃない!」


 日向の真面目さには、七海と陽菜も頭を悩ませているようだ。一方の日向も真面目な性格ゆえに、陽菜たちと砕けて接することが


「なあ、何も無理に砕けさせることもないんじゃないのか? 迷惑を被っているわけでもないんだし」


「でも、不自然だよ?」


「時間が経てば緊張もほぐれて、自然と砕けていくよ」


「まあ、あなたの提案にも一理はあるかもしれないわね」


「……そうだね。日向の頑固な性格は筋金入りだし。ということで、硬いままでOKだよ、日向」


「はい、ありがとうございます。岩見様」


 そう言って深々とお辞儀した。……陽菜たちにはこのままでもいいんじゃないのかと言ったばかりけど、やっぱり固いなあ。


 どんどん俺の周囲が賑やかになっていき、徐々に収集がつかなくなりつつあった。


 そこに先生がドアを開けて入ってきて、未だにざわついている教室内に向かって一喝した。


「おいこら! 始業のチャイムはとっくに鳴っているんだぞ! 静まれ、静まれ!」


 俺は気づかなかったが、チャイムが鳴っていたらしい。もっとも、このクラスの担任は鳴っていなくても、鳴ったと言い張るときがあるルーズな性格なので、全面的に信用はしないが。


 とにかく、担任教師の指示に従い、ざわついていた教室内は一斉に静かになり、生徒は一様に自分の席に着いた。


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