サーキットに行くまで
車を買うことは決まったものの、基本的な操作が危うい姉妹。
そこで男2人が操作の仕方を教えるためにサーキットに誘う。
社長である白鳥さんから買うにあたっての注意を聞く。
「この車は小型なボディな上にハンドリングが良く自分の思ったとおりに動いてくれるし、オープンカーならではの気持ち良さも兼ね備えている。だがな、自分の車を買った喜びから無謀な運転してしまう可能性がある。これはスポーツカーに限ったことじゃあない。どの車にもありえることだ。車が求めているのは単なる速さではなくドライバーとの一体感、ドライバーの意図を車が答える。それこそが理想像なのだよ。つまり安全運転をしろということだ。それと、これはオープンカーに限った話なんだがね、屋根が薄いということもあって事故に遭ったときのリスクは高い。念のため頑丈にするためのロールバーというものを付けとくが、くれぐれも事故にあわないようにな。」
なんだか難しそうな話だ。私にはよくわからないけど、つまり安全にすればいいってことなのかな・・・
「社長さん、そのロードスターに私たちが乗れるのっていつからなんですか?」
「エアロなどのパーツも付けないといけないからな、だいたい一週間ぐらい後だ。」
「一週間か・・・わかりました。では一週間立ったらまた来ますね。」
「こっちもできるだけ早く出来上がるようにするよ。もし一週間以内にできたら連絡する。」
「わかりました。では楽しみに待っています。」
私とお姉ちゃんは白鳥自動車を後にする。
「一週間後が楽しみだね!早く私の車に乗りたいなぁ」
お姉ちゃんはすごい嬉しそう。そんなにあのロードスターって車に乗りたいのかな・・・。
「美羽はあのエアロパーツ見せてもらった?すごいかっこいいんだよぉ」
「エアロパーツ?あぁ、速く見えるようになるって言ってたね」
そういえば言ってたな。でも私は見てなかったなぁ。
「なんだかイカつい見た目になるし、しかもでっかいウィング付けるからレースカーみたいで速そうなんだよ」
「そうなの?もしかして私の車にも付けるのかな・・・?」
イカつい見た目ってなんなんだろ、あの車って丸くてかわいかったイメージが・・・それにでっかいウィング?あんまり予想できないや。
「もちろん美羽の車にも付けるよ、だって姉妹おそろいにしたいもん」
「お姉ちゃんとお揃いなら私も付けたいな」
そんな話をしていると、さっきの男二人と会った。
「やぁ君達、こんなトコで会うなんて偶然だね」
たしかこっちが白鳥君だっけ。
「偶然なもんか、ずっと待ってたくせに」
大助君だ・・・
「いぃや偶然だ、この白鳥九十九様がそんなちまちましたことをするなんてことは断じて無い!」
「何が“九十九様”だ。そんなことよりさ、君達はMTって運転したことあるかい?」
「え、えむてぃい?えっと、その・・・車の名前・・・なの?」
どうしよう、まともに喋れない・・・
「マニュアルトランスミッション、お父さんかお母さんが運転していていちいち棒みたいなのをガチャガチャしていたのを見たことないかな?」
「そ、そのえっと・・・あんまり運転してるとこ見たことないから・・・わかんない・・・」
下向いちゃった、どうしよう・・・
「ならさ、親の車を運転してたときは真ん中にある棒を“D”というのに合わせてからアクセルを踏んでたのかい?」
「はい、お父さんの車もお母さんの車もそういうのだったから」
お姉ちゃんが私の代わりに話してくれてる。感謝しなきゃ・・・
「免許取るときに運転中に真ん中の棒をガチャガチャするのは習ったかい?」
「たしか習ったよ。たしかアクセルとブレーキに、もう1つ踏まないといけないものがあった記憶がある・・・」
たしかに私もそんな記憶あるかも・・・
「なら大丈夫だ。その運転中にがちゃがちゃするのがMTって言うんだ。ちなみに真ん中の棒はギアで、踏まないといけないのはクラッチね。がちゃがちゃしてるのは自転車みたいにギアを変えてるんだよ。自転車は回すけど車の場合はギアを動かすんだ。君らが買おうとしている車はMTだからギアを変えれる技術が必要だからさ、一応聞いてみた。」
「1年も前の話だから今は運転できるかわからないや・・・」
「そうか、なら今からサーキットでも行くか」
「サーキット?」
「レースとかする場所だよ、レースしないときは俺らも走っていいんだ。だからさ、そこで運転の練習しようや。」
「でも私たち車無いよ?」
「気にすんな、俺らの車貸してやる。いいだろ、白鳥?つーかそのために待ち伏せしてたんだろ?」
「待ち伏せとは失敬な、でも俺らの車じゃきつくないか?さすがに改造車だとさ」
「確かにな、でもそれ以外が用意できねぇから使うしかないだろ。」
「そうだな。そうと決まればさっさと行こうぜ、ちょっと来てや」
私たちは白鳥君の後についていく。
「俺らの車見てびっくりすんなよ?」
「絶対びっくりすると思うんだがな」
近くのコンビニの駐車場に着いた。
「じゃん、これが俺の愛車だ」
白鳥君が指差した先には・・・明るい緑色ででっかいウィングに派手な絵がいっぱい描いてある車があった。
「九十九って暴走族?」
私もそう疑問に思った。
「暴走族じゃねえよ。今までいろんなレースに出たからいろんな会社のシールが貼ってあるんだ。気づいたらこうなってた」
「へぇ、にしてもかっこいいわね。なんて車なの?」
「RX-8さ、君らの買う車と同じ会社から出てるスポーツカーだ。」
「ふぅん、確かにこのRX-8って車もいいけどやっぱ私の車が1番だね」
「結構意地っ張りなんだな」
微笑む白鳥君。
「因みにこれが俺の車ね」
大祐君が指差す先には・・・・真っ赤ではない赤、なんだか黒が混じったような濃い赤の平べったい車がある。そしてでっかいウィング。お決まりなのかしら。そういえば今まで見た車と違ってライトが無い気がする。あれ?ボンネットに四角くへこんでるところがある・・・。
「トヨタMR2だ。あまりいい車とは言えないが俺にはこいつしかいない」
「その、この車ってどこに・・・ライトが・・・・あるの・・・?」
「確かに気になる。ライト無いもんね」
ライトが黒く塗られていてわからないだけなのかなぁ・・・
「ちょっと待ってろ」
大祐君が車に乗る。
「こうやって光るんだよ」
ボンネットのへこんでいる所からぬるぬるライトがでてきた。なんかかっこいい・・・・
「変なライトだねぇ」
「リトラクタブルヘッドライトって言うんだ、おもしろいだろ」
「なんだかすごい・・・」
「今みたいな明るいときは閉まっとく。危ないしな」
「なんで危ないの?」
「誰かとぶつかったときにこのライトのせいで怪我するかもしれないからさ」
「へぇ、でもこんなライトのほうが個性的でいいよね」
「今の時代、このライトの車乗ってるやつなんて俺ぐらいだろうな。それはそうと、さっさとサーキット行こうぜ。」
「そうだな、早く行かないと日が暮れちまう」
現在2時半、ここからそのサーキットまでは30分ぐらい掛かるらしい。サーキットは午後5時までだから2時間使える。その間にちゃんとMTが運転できるようになるかしら。
「私たちどうやって行くの?」
「二手に分かれて行くから真希と俺、三矢野ちゃんと早瀬と行けばよくないか?」
「そうね、でも美羽はお姉ちゃんと一緒に行かなくても大丈夫?」
「ちょっと怖い・・・」
「半泣きじゃないか、そんな怖い人たちじゃないって。ねぇ九十九、九十九のそのRX-8は4人乗れないの?」
「残念ながら2人乗りだ。元々は4人乗りだったんだけどなぁ、改造しちまったし」
「ならさ、早瀬君のそのMR2は4人乗れないの?」
「無理だな。元々後ろの席が無い車だし」
「困ったわねぇ、美羽は男の子と2人きりでも大丈夫?」
「無理・・・」
「でも我慢しなきゃだめだよ?」
「・・・・・・うぅ・・・」
「泣いちゃだめだよ、たった30分ぐらいなんだから我慢しなさい」
「・・・わかった・・・」
「よし、なら早瀬君の車に乗りなさい」
私はしぶしぶ大祐君の車に乗る。たった30分ぐらい平気、絶対に大丈夫。
大祐君が車のエンジンをかけ、駐車場から出る。白鳥君の車も後ろからついてきた。
サーキットは楽しみだけどこの状況がとても苦しい・・・
実は私、男の子と喋ったことも無いのに男性恐怖症なのです・・・。
雑談オンリーですね。
とてもつまらない(前話もですが)話です。はい。
今回はRX-8とMR2が新しく登場しましたが、この2つの車にした理由もちゃんとあります。
まずRX-8
この車はアフターパーツ(要はチューン)をすると性能が落ちると言われたことがあるほど純正の性能が高かったんです。
マツダ特有のロータリーエンジンも乗せている上に4ドア4シータ、ファミリーカー寄りみたいですが良い車だと思います。
次にMR2
私の大好きな車なので出しました(笑)
性能を話すのならば・・・
この車はエンジンが後ろにあり後輪が回る、俗に言う”MR”なのです。
このMRというのはスポーツカーの中で理想とされる駆動形式であります。
あのF1カーもMRですよ。
今MRの話をしましたが、そしたらMR2は性能高いじゃん?と思う人が出ると思います。
ですが、MRが理想というのはちゃんとした条件が揃ってこその事。
MR2という車はハッキリ言って条件が揃っているとは言えません。
高速だとスリップの可能性が高いため、高度なドライビングテクニックが必要だったりします。
要は性能が悪いとです。
ですがなぜかこの車が好きですのでこの車を出させていただきました。
そういえば私、車に興味が無い人も楽しめるようにしたいんですよね・・・