低次元の使い道
あたしの庭に変なものが落ちてくるのだ……。
2011年3月にピクシブにアップ済み
皆さま、よんでいただきありがとうございます。
2026/6/29
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1
あたしの庭に変なものが落ちてくるのだ……。
いや、その言い方は適当ではない。
生じる。やってくる。落ちてくる。具現する。ひねり出される。構築される。
どんな言い方で表そうと、既存ではないものが新たに存在することは変え
ようがなかった。
淡雪に似たものであることもあれば、青い透ける蛇みたいなものであるこ
ともある。
それが何か、あたしは知らないけれど、
無機物に見えるような鱗、ではなく。本当に無機物の生命体みたいなもの
も庭のあちらこちらで見かけた。
毎日現れるわけではないが、確実に増えていく。
のた打ち回るものもあれば、大人しく地面に降り積もり、そのままのものも
ある。風に飛ばされていくこともある。動きを止める(命を失う?)と塵のよう
にばらばらになってしまうこともあった。虹色の光を放って、そのためのエネ
ルギーの塊だったといわんばかりに、ゆっくりと消えうせてしまう物体も多
い。
庭の木々はその光を受けて、枯れたり、逆に大きくなったり、大きく変質し
た。昆虫も歪なものが増えた。
土はいつしか、それらの屍や降り積もる淡雪もどきに染め上げられ、嵩が
上がった。白と紺と赤のマーブルされた粉で覆われてしまっている。
そこから、健気にも頭を突き出す植物は著しく成長点が狂い、真っ直ぐに
伸びなかった。
あたしは長い間、それらがどこからどうやって生じるのか、わからなかっ
た。
なぜ、ここに現れるのかも。
2
市役所かどこかに問い合わせようとしたこともあったが、根本的な解決に
ならないことと、このほとんど死に行く生き物らしきものがどういう処遇にな
るのかを考えてしまうと、あたしには何も出来なかった。
生き物らしいものは、こちらの物を口にすると半日で死んでしまう。
だから懸命に、上から降り注ぐ淡雪もどきを食べる。
雪もどきは発泡スチロールの粒みたいだ。手にとると溶ける。発光しなが
ら。地面に触れても溶ける。
それだけを食べていても長くは生きない。
哀れだ。
あたしはそれをただ見つめ続ける。
庭への出入り口だった窓は半分まで埋まってしまい、使えなくなった。積も
ったものは異様に重いし、また軽い。重心が狂っているという問題ではなく
て、風で飛ばされることもあるくせに、雪もどきへと深く沈みこむ。
蛇みたいなものが、太陽に角を向ける。たぶん、あの硬く縞模様のあるそ
れが、目なのだと思う。耳でもあるのかもしれない。体のあちこちについて
いる。
時々、蛇は僅かに浮かぶ。
空を見上げて悲壮な声で泣く。
それは風の音に近い。
3
疑問は疑問のまま。仮定をいくつか生みだしはしたものの、明確な回答も
真実もあたしの手にはないままだった。
庭に降り注ぐ『何か』たちは減少する傾向だったが、それは他の場所で同
じようなものが生じるようになったという事実と照らし合わせると、全体として
は着実に増えていた。
深夜番組でこの不思議な存在が取り上げられてからは、一気にあちらこ
ちらで話題になり、週刊誌や新聞、ネットをにぎわせていた。
そのせいで、一大ニュースであったはずの二次元に通じる穴を開けること
が出来たという話題はかすんでしまった。扱いは小さかった。
簡潔に記された内容はこうだ。そこには地を這う線虫のようなものしかい
ないから、世界中で悩まされている核廃棄物やゴミ問題に終止符が打てる
かもしれない、という。
あたしはそれを聞きながら、ああなるほどと思った。
四次元とか五次元とか、高位の次元の者から見れば、あたしたちは線虫
程度にしか見えなくて、意思や会話を交わそうなどと思わないのだろう。
二次元には二次元の重要資源があって、彼らは三次元人が攻め込んで
きて、自分達の世界を手に入れようとすることに怯えているのかもしれな
い。私たちがアニメや小説やその他のモチーフとして高次元からの使者に
危機にさらされるように。
でも、実際は。
あたしは庭に溢れかえる奇妙な無機生命体を見つめた。
なるほどね。
あれらは上の世界からのゴミ。ペットを生きたまま捨てているのだろう。い
や、もしかしたら、物に魂が入っているのが、そちらの世界の常識なのかも
しれない。
あたしには一つ確信があった。
この世界を埋め尽くすまでこれらは増えるのだろう……。上の住民はあた
したちが全滅しても気にしないのだから。
もしかしたら私達は、いや、この世界にある生命そのものが、高次元から
の汚染された実験用ラットのなれの果てなのかもしれない。
あの青い角蛇はペットか。物か。道具なのか玩具なのか。
もしかしたら。
あれは流刑に処された罪人かもしれない。
そして、あたしの庭の青い角蛇は故郷を恋うて今日も空へと声のない咆
哮を上げた。
珍しくSF。星新一風。でも実はこれは押上美猫さん(マンガ)の短篇からきていたり。(星作品のが読んだのあとでした。。)
綺麗に書けたので気に入っています♪




