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タイムリープするお嬢様――二度目の婚約破棄はもう遅い。あなたが破滅する始まりです  作者: 御咲花 すゆ花
3話 ソフィア・ホーウッド

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幕間 折れた羽根の小さな依頼①

この幕間はファンタジーの色が強いので、読み飛ばして全然OKです!

 自分から婚約を破棄してから、一週間が経った。

 ソフィア・ホーウッドは今日も研究室にいた。

 朝に来て、夜に帰る。

 食事は取っている。

 睡眠も、おそらく取れている。

 祖父のアルバートに聞かれれば、そう答えることができた。


「……」


 ペンを走らせる。

 採取地の異なる三種の月草を、それぞれ異なる温度条件下に置いたときの魔力活性値の変化。

 数字は正直だ。

 感情を挟まない。

 だから、今のソフィアには心地がよかった。

 考えなくていい。

 ペンだけを動かしていればいい。

 そうしていれば、余計なことも思い出さずに済んだ。

 植物園の木漏れ日も。

 雨宿りをした東屋の匂いも。

 あの日、初めてだれかに打ち明けた母親の話も。


「……」


 ペンが一瞬だけ止まる。

 すぐにまた動きはじめる。

 数字に戻る。

 トントン。……トントントン。

 気がつけば、研究室のドアが何度もノックされていた。


「どうぞ」


 来客の予定はない。

 アルバートはあまりノックをしない。

 訝しみながら顔を上げれば、そこに見知らぬ少女が立っていた。

 年の頃は16か17だろうか。

 くせのある栗色の髪を無造作にまとめた少女は、見習い研究員を意味する紺色の上着を着ていた。

 その上着は、サイズが合っていない。

 大きすぎだった。


「ホーウッド先輩ですか?」


 先輩、という呼ばれ方に、ソフィアは少し面食らった。


「……そうですが。あなたは?」

「レナといいます。先月から見習い研究員として雇われました」

「ああ、飛び級で入ってきた方ね」


 噂は聞いていた。

 平民出身の16歳。

 院内では、好悪含めて様々な声があるらしい。


「何かご用?」

「研究を教えてほしいんです」


 直球だった。

 前置きも何もない。


「……。私に?」

「はい。ホーウッド先輩の論文を読みました。月草の魔力活性と採取時期の関係を調べているやつです」


 レナの言葉遣いに、ソフィアは眉をわずかに動かした。


「読んだんですね……」

「はい、全部読みました。面白かったです」


 悪びれない。

 その態度に悪びれた様子全くない。


「今は少し、忙しいです」

「そうですか、それならいつが空いてますか?」


 返答に詰まった。

 断りたい。

 今は他人と関わる気力がないのだ。

 ただでさえ、研究に逃げ込んでいるのが精一杯だというのに。


「理由を聞いてもいいですか。なぜ私でないといけないのか」

「先輩の研究が一番、自分のやっていることと近いからです」


 レナは続ける。


「自分は植物から採れる素材の魔力活性を調べています。父が薬草商なので、素材のことは少しわかります。でも魔力の挙動を記録する方法がよくわからなくて。先輩はそれが上手いみたいなので」


「……。その研究が何のためになるのか、わかっていますか?」


 思わず、ソフィアは問い返していた。

 見習いに研究の意義を説くつもりはなかった。

 ただ、純粋に気になった。


「魔法陣とか術式を研究している人たちがいるじゃないですか」


 レナが答える。


「クラちゃ……クラリス先輩みたいな人たちです。あの人は術式の構造を調べていますよね? どの記号をどう組み合わせれば何が起きるのか、そこを理論に落とし込もうとしている。でも、同じ術式でも使う素材によって結果が変わることがあります。それがなぜかを調べれば、術式研究の役にも立つんじゃないですかね」


 ソフィアは少し黙った。

 さすがに飛び級だけあって明晰だ。

 地味だと言われ続けてきたソフィアの研究分野。

 派手な成果が出にくいものだと、ソフィア自身もわかっていた。

 それでも続けてきたのは、この研究がいつか誰かの土台になると信じていたからだ。


「……。わかりました」


 ため息をつくように、ソフィアが言う。


「週に2回、昼過ぎなら時間が取れます。来ますか?」

「はい!」


 レナの顔が、ぱっと明るくなった。

 その笑顔が少しだけ、ソフィアにはなんだか眩しかった。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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