マーダーミステリーがつまらなくなる話① 犯人は楽しいか
本稿の注意
本稿『マーダーミステリーがつまらなくなる話』であるが、今回の記事では対人ゲームとしてのマーダーミステリーを扱う。対人ゲームとしてのマーダーミステリーを扱っており、メタ視点満載で、ゲームへの没入を害する内容なので、今後のゲーム体験を損なう恐い、つまらなくなる可能性がある。
ストーリー重視やRP重視と記載のあるシナリオを好む人間はブラウザバックしてこの作者をブロックしておくことをお勧めする。
また、ある程度マーダーミステリーに慣れている人向けの記事なので、基本的な、そこらの記事に書いてあるようなテクニックなどについてはわかっているものとする。
前書き
Twitter(現X)で、犯人が面白くない話が半年に1回くらいの頻度で回ってくる。誰か助けてやれよ、と思いつつネットを漁る。すると、嘘をつくための基礎的なテクニックしか流れてこない。これはカスだ。
なぜカスなのかといえば、それがミクロなテクニックの話だけをしているからだ。技術というのは、目的に合わせて変えなければならない。定石を覚えるなんてつまらないことは、布石というマクロな視点の技術がわかっていなければただの苦行でしかない。
そのうえ、マーダーミステリーは各シナリオの特性が全く違うので、どのシナリオにも犯人だからと言って同じ手法で対応してはいけないのである。さながら小目の定石を星にも適用しているようなものである。
講釈を垂れる私がどれほど犯人がうまいのか、と言われると断言が難しい。諸兄らほどマダミスを遊んでいないし、犯人役でなさそうなものを選ぶことが多い為である。
強いて言うなら自認として、犯人役の立ち回りが得意ではある。初期の頃に遊んだマダミスと、最近遊んだマダミスでは、ちゃんと犯人がいるタイプのシナリオで犯人をやったことが複数あるが、4シナリオ中3シナリオ逃げ切っている。何より、犯人役を楽しいと思えているので、その感覚だけでも共有できれば嬉しい。ちなみに、探偵側で犯人を特定する成功率は体感1割を切っている。
犯人というものは実に素晴らしいポジションである。事件を起こしたというキャラクターの唯一性と、敵が多い状況。対人ゲームが好きなら心躍るだろう。そしてプレイヤーよりもまず先にあなたが対峙しなければならないのは、シナリオ作者である。
当然ながら、作者は犯人ではなく探偵側の味方であることが多い。あなた一人がゲームに不満を持っても、残り全員が満足すればゲームの評価は高いままだからだ。前述の「作者と対峙しなければならない」とは、文字通り作者は敵だと思って行動しろということである。
当然敵であるので、そのシナリオを破壊するつもりで振る舞ってよい。と、思えるくらいの精神力が無いと犯人役は楽しめない。GMに次ぐホストのつもりでゲームに挑むな。ルールとマナーの範疇で、真剣に全員を騙せ。ゲーム後の、プレイヤーたちの不満げな顔を肴に酒を飲むのだ。作者の苦い顔を思い浮かべて笑おうではないか。
マーダーミステリーとは対人ゲームであり、畢竟敵を打ち倒せば当然楽しい。その感覚はあってしかるべきだと私は思う。そしてその感覚を最も楽しめるポジション、それが犯人だ。
シナリオの類型と、それぞれの対応例
そのシナリオがプレイヤーに何をさせるシナリオなのか。その特定の素早さが、犯人としての立ち回りを大きく左右する。そのシナリオがどんなゲームになっているかで、使わなければならない情報隠蔽技術や議論の攪乱技術が変わってくる。
どんなシナリオか、というのはそのシナリオがどのような犯人の追い詰め方を理想として想定しているか、を指す。あとがきに書かれている推理導線というやつだ。
その内容は、どういった理屈で犯人を投票で多数にするか、もしくはアクションフェイズなどの投票に代替される意思決定フェイズで犯人を無力化するかが記載されていることがほとんどだ。私が類型すると以下のようになる。
A. 事件推理型
B. 印象操作型
C. 協力型
D. 勢力構築型
E. プライズ型
これらは複合し得る。今自分がいるシナリオがどの類型の色が強いのか、その類型の特色に合った対応ができるかが、犯人として逃げ切る確率を大きく左右する。あなたは他プレイヤーよりも先に、まず作者との勝負を乗り越えなければならないのだ。
協力型・勢力構築型・プライズ型は、推理導線というもので大きく取り扱われない可能性が高い。おおよそのマーダーミステリーが事件推理型・印象操作型の体をとっているので、協力型以下3つの類型を重要視して嘘をついたり、議論のかく乱を試みるべきではない。つまり、ここでは事件推理型と印象操作型についての考え方を記述するに留める。
類型を見極めるというのは、あなたの注意力が試される。Boothやウズのシナリオ紹介ページをきちんと読んでいるだろうか? ヒントはそこにも落ちています。メタ情報だから使ってはいけない、というルールはない。人読みからハンドアウトの文体まで、ヒントとなるものはすべて疑ってよいのだ。優しい作者は犯人に、言外のヒントを与えてくれているのに、それを見逃すなんてもったいない。
それぞれにどのような特徴があるのかと、 対応の仕方を次に記述する。
A. 事件推理型
事件を起こす方法から逆算してアリバイ、凶器、動機などから犯人を捜すゲームである。 上記以外の、言語や数字などの共通知識である概念を暗に示された条件下で組み合わせるような、いわゆるなぞなぞを解くゲームはここに含まない。
あなたは、犯行にかかわるすべての情報を一次情報としてキャラクターが持っていたり、プレイヤー数が2~5人程度のシナリオかつハンドアウトに勢力や協力者がいるような世界設定ではない場合はこの類型を疑ってよい。
犯人を見つけ出すための、明確な推理導線が設定されているゲームであるからして、ゲーム上のいくつかの情報がしかるべきプレイヤーの手に渡ると一意に犯人が定まるようになっている。このタイプのゲームで、犯人が取れる選択肢は、議論を攪乱する手段すべてである。採ってはいけない手法は、議論を進める手助けや、罪を認めたり開き直ることや、自分が犯人だという前提で議論を広げることである。
推理小説とは異なり、「こんな結論、思いつくわけねーだろ」みたいな超絶難易度の推理であることはほぼない。そもそも作成が難しい上に、不完全情報ゲームでそうした推理を説明しても、ゲーム後に探偵側は納得できないかもしれない、という作者の不安があるからだ。大体は推理とは名ばかりの、なんの跳躍的発想も必要としない情報合わせのことも珍しくない。というかそんなゲームは楽しめる想定顧客が少なすぎる。
このようなシナリオであなたがやれることはただひとつ。時間稼ぎただそれだけである。だからこそ、どんなテクニックでも構わず使うべきなのだ。タイムリミットの前に真相にたどり着かれてしまえば、あなたは否応もなしに敗北する。犯人だと疑われたときに感情的に反抗する、というような、下の類型ではあまり使いたくない手法でもここでは使ってよい。あなたの勝率は元から低く、デメリットの大きい手法でも探偵側の真理到達寄りはよっぽどマシだからである。
理想的には、あまりヘイトの買わない対応から行っていくのがよく、情報は隠匿すべきである。ただし、あくまで理想例であるので、シナリオ類型の判別を見誤って情報を公開していても気を落とすことはない。真相にたどり着かなかった場合のリスクが、理想的な対応でないほうが低いのだから。犯人に必要な胆力とは、犯人ならやらないであろう、リスクの高い行動をいかにしれっとできるかが大事だ。そもそも不完全情報ゲームで後悔は先にも後にも立てることはできない。
この類型だと思ったシナリオで犯人である場合、あなたはカードの全体公開を控え、自発的な情報発信は最低限にしたほうがよい。司会役を買うべきではなく(無能な司会が得意であるならその限りではない)、議論のペースを落とすような、関係のなさそうな話題を提供し、犯人としてのヘイトが高まったら感情ではねのけよう。理屈で返すと、シナリオには理屈で回答が用意されているので、探偵側の手がかりへのイニシアチブを高めるだけである。
なぜ犯人だと思うのか、と反論するべきではなく「あいつのほうが犯人っぽいぞ」と言うしかない。
また、嘘のつき方も一番難しいゲームだ。理想的な情報共有をされてしまうと嘘をつく余地が全くない可能性すらある。そのくせ、嘘をつかなかったら犯人はお前だと言われてしまうのだ。情報共有をしないほうがいいというのはまさにここが肝で、プレイヤーたちの情報共有に対する穴や、認識の祖語がどこなのかを慎重に見極める必要がある。
例えばきちんとアリバイの時間軸をメモしていても、書き間違いや聞き間違いであやができることはあるし、作者が想定していない逃げ道がある可能性もある。全員が見ていないようなところにいたと言うには、全員の居場所がわからなければならない。理想的には、アリバイを聞くフェイズ以前に全員が何をしていたかの概観でそれを察知し、アリバイを聞かれたときや、自らアリバイ披露を全員に強いたときに堂々と嘘がいえるのがよい。前後の移動導線は、いたと嘘をついた場所から逆算して議論中に作っていこう。嘘が少ないよりも多いほうがマシで、この嘘はバレないだろうと思ったら即座に仕掛けていき、議論の攪乱を狙おう。
凶器などの殺害手法にまつわる技術的導線などがヒントとなりそうな場合、早めに対抗馬を見つけておくことだ。例えばクレーンの運転が殺害に必須だった場合、あなたが付くべき嘘はアリバイ以外に、「こいつがクレーンを運転していたのを知っている」が追加される。
この類型の犯人である場合、犯人のあなたはハンドアウトの情報から、ヒントになり得そうな情報を一番持っている。どの情報がクリティカルになりそうか、100%の確信がなくとも、可能性があり得そうな嘘は先手を打ってついておくことが、嘘が通った時の信用が高くなる。そのシナリオでどの情報から自分が吊られるのか、というのを逆算してつく嘘を決め打ちしよう。真理よりも信用で勝ち取れる票もある。
B.印象操作型
犯人となるプレイヤーの議論内容の印象が悪くなるように設計されていることを根拠に推理導線をつくっているタイプのシナリオである。
このタイプのシナリオは採れる選択肢の難易度が高いものの、あなたはこのタイプのシナリオであることはすぐにわかる。プレイヤー数が5~9人程度かつ、犯人であるにもかかわらず犯行時現場にいないトリックを使っていたり、トラブルに巻き込まれた形で犯行を行ってしまったが故に前後関係がわからない場合など、ハンドアウトに犯行に必要な情報があまり書いていなかった場合はこの類型を疑おう。
大抵は知識の差を利用してあなたの発現の印象を悪くしようというトラップが、シナリオのそこら中に仕掛けられているので、それを回避するゲームとなる。あなたは作者が罠を張っていそうなところを疑い、情報共有によってそれを解除する、もしくは触れずに回避してあるくことが求められる。
あなたは知らないことや、そうなってるはずのものについて語るべきではなく、ハンドアウトで1次情報として語られていない事柄についてはそうでない可能性があることに注意しなければならない。
事件の全容がわかるまで、あなたはなるべく嘘をつくべきではなく、事件にかかわる周辺情報について知ることが肝要なので、司会役を買って出るべきである。
自分の持っている情報を場に出すことなく当たり障りないことで発言量を稼ぎ、あなたが知りたい情報を議題に上げるよう誘導し、事件についての知識がついたところで、どこで嘘をつくかを吟味しなければならない。
相手の情報を得るためには情報を切り売りしていいのだが、売っていいのはハンドアウトの情報ではなくカードなどの誰もが持ち得る情報が優先される。議論を誘導して他人の情報を抜きつつ、自分の情報は、例えば即座に共有しなければなさそうな情報を急に引いた、気づいたような顔をして話題を逸らしたり、議論時間の時間切れを狙うなどして、情報整理の時間を作ろう。
情報を得たら真っ先に、嘘をつくべきかどうかの判定が入る。印象操作型のゲームの場合、明確な推理ルートは存在しないこともある。合理的な思考で情報を整理しても2、3人までしか犯人候補を絞れないというシナリオも多いので、嘘をつく場合も最小限にしたい。
犯人であるあなたは、犯人候補の2,3人に入ることを恐れてはならない。その情報はあなたがコントロールできる範疇ではない可能性が高いからだ。あなたがやるべきことは、ただひたすらに、全員に対する印象を上げることである。
そのためであれば嘘をついたほうが良い。なんなら、事件と関係ないところで嘘をつくのも手である。被害者と親しかっただとか、全然関係ない時間帯に人助けをしていただとか。あなたは作者に想定された、善人な吊られ候補となって、他プレイヤーの同情を買わなければならない。人狼ならローラーで吊られておしまいだが、投票が1度しかないマダミスでは見逃してもらえるかもしれない。
クリティカルな情報を言わざるを得ない時に、嘘をついたらバレる可能性があると感じたら、最大限まで真実である嘘で誤魔化す必要がある。「その時間は実は事件現場にいて被害者と言い争ったが、私はそのまま部屋を後にした」など。あなたは事件に対する知識がかけている可能性があり、どう嘘をつけばバレないかがわからないのだ。犯人候補が実は現場付近にいて、後からそれを唱えられたら当然あなたのほうが印象が悪くなってしまう。
大きな嘘をつきたいという衝動そのものが作者からの罠である可能性もあるので、迷ったら自分はやっていないが、という体で真実を言ってしまおう。嘘をついてもバレそうにないと判断できれば、大きく嘘をついたほうが安全なことは言うまでもない。
必要な情報を獲得する過程で、真剣な探偵役を装えることだろうから、そのままシナリオ最終盤までその姿勢を貫かなくてはならないし、自らが犯人である可能性を議論中にあげつらってもよい。
この時点で、事件推理型とは対応の方向性が正反対である。どちらの類型か迷ったら、こちらの類型だと思って慎重に議論を勧めよう。欠けている情報をかき集めた結果、どんな情報があれば犯人が自分であるとたどり着けるのか、それを提示できる外部情報がありそうかを吟味し、早急にどちらの類型か判断しなければならない。どれだけ早く判断できるかで、勝率は大きく変わってくるだろう。基本的には事件推理型と印象操作型のどちらか、という思考が最も脳を支配することになる。このシナリオ作者との探りあいが、犯人役の楽しみである。
そもそも、犯人が楽しくないシナリオを避ける
上記はすべて、難易度設計がマシなゲームについて記述している。類型の見分け方のシナリオ紹介の欄に、「ストーリー重視型」がないことに、お気づきだろう。この記述のあるシナリオは多いのに、それについて書かないことなんてありえない。その意味は、「犯人を楽しみたいなら、犯人がクソゲーなシナリオを遊ばない」、が最重要事項だからだ。「ストーリー重視」と書いてあるシナリオの半分以上は、推理難易度の極めて低い事件推理型で、犯人が逃げ切る余地はほぼ存在しない。
作者は楽しいストーリーをゲームのバックグラウンドに用意しており、それは大抵犯人ではない者のために描かれる。そんなゲームをしていたら、犯人が楽しいわけがない。犯人が楽しいかどうかは、シナリオ選別から委ねられた運命だ。
犯人が楽しくないシナリオは、あなたを誘惑する要素が多いかもしれない。華美な装飾、壮大なあらすじ、魅力的なキャラクター。あなたはプレイする前に、そのシナリオで犯人が捕まらなかった場合の卓の雰囲気を考えるべきである。既定路線の物語じゃなくて意気消沈するような風景がよぎったら、そのシナリオで犯人を選ぶべきではない。犯人以外を選ぶキャラクター勘が無いのであれば、そのシナリオをやるべきではない。
冒頭で犯人がつまらない、という意見に反対しているわけではないことに留意してほしい。私は、ランダムに選ばれたシナリオで犯人になったらおもしろいか、と言われたら多分十中八九おもしろくない体験をするだろう。それだけ、犯人にとって無理ゲーなシナリオは多い。
それは作者だけの問題ではない。プレイヤーが、そのようなシナリオを求める限り、作者は探偵有利なゲームを作り続ける。あなたがゲームの作りを称賛すれば、そのゲームに似たゲームが量産される。犯人苦手と唱えるアカウントを見させてもらうと、加担している側の人間ではないか、と邪推してしまう。
マーダーミステリーの概観は対人ゲームそのものであるのに、対人ゲームそのものへの不満が多く見受けられる。その意見は、対人ゲームをする人間としてはあからさまに思慮不足と言わざるを得ない。そういう人間のもとには、対人ゲームである自覚が無いゲームが多く集まり、結果不満がたまっているだけにも思えるのだ。だからこそ、こうした意見が飛び交ううちは、私にとってマーダーミステリーはつまらないものだし、趣味になることはないだろう。




