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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: てへろっぱ


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第83話 炉パック二つ

朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。

返却棚に落ちていた箱は昨夜の分だけ。札穴は一致。番号も一致。遅延札は内側の角に刺さったまま、目立たない位置に残っている。触らない。触らないから燃えない。


ゼフ 遅延だった箱、戻った。

フィン じゃあ再開だな。

ミナ 再開の理由は言わない。条件だけ。

レイナ 再開は言わない。回す。


再開って言葉は椅子を生やす。誰かが祝いたがる。誰かが点検したがる。誰かが公開したがる。

祝わせない。点検させない。公開させない。箱で流して終わらせる。


レイナ 進捗、一つ。炉を二つ。

フィン お、増やすのか。燃えるぞ。

レイナ 二つだけ。夜便だけ。

ミナ 紙一枚。板一行。

ゼフ 箱二つ。外は同じ。

ユハが入口側に立つ。覗きが寄れる角度を潰す。止まれる幅を残さない。


炉は言葉が集まる場所だ。危険、安全、点検、責任。全部が椅子の材料。

だから一つから二つへ。たった一つの増加。でも現場は楽になる。補修が早く終わる。終わりが早いと燃えない。


ミナが紙を一枚だけ置いた。短い条件文。理由は無し。増やさない。飾らない。


補修班 用途パック(炉) 二つ 夜便のみ 札一致 返却は翌朝


ミナ これで終わり。

レイナ 同文で回す。説明しない。

フィン 炉が二つって言葉、外に漏れたら踊るぞ。

ブラント 漏れても条件だけなら踊りにくいです。二つ、夜便、返却翌朝。

レイナ それ以上は言わない。


昼は動かさない日を混ぜる。外に進捗を出さない。完成感を外に出さない。

棚の前で作業をしない。入口で喋らない。窓口は短く。同文で終わらせる。

子供便は空箱だけが回る。叱らない。損で走らない。


子供 今日、箱ある?

ミナ 空箱はある。落としたら終わり。

子供 終わり!

フィン 終わりって言える子供、強いな。

レイナ 口が増えない。良い。


補修班の若いのが一人、昼前に来た。止まりたそうな顔をしているが、止まれる場所がない。返却棚の前の幅はユハが殺している。


補修班の若いの 今日、夜便…来る?

ミナ 紙。

ミナが箱の縁に紙を置く。手渡しにしない。手渡しは会話が生える。置いて、取らせる。

若いのは紙を読んで、黙った。理由が書いてない。だから言い返す形がない。


補修班の若いの 二つ…夜便…返却は翌朝。

レイナ はい。終わり。

若いの ……分かった。

ユハが一歩だけずらす。幅がさらに死ぬ。若いのは立ち話を続けられず、紙を握って戻った。


フィン この短さ、外から見ると冷たいのに、現場は助かるんだよな。

ミナ 揉めないからね。

レイナ 揉める暇を潰す。


その午後、左肩が擦れた男が来た。動きが雑。目が落ち着かない。

再開に乗じて、椅子を立てたい。炉に乗じて、公開点検を立てたい。狙いは分かりやすいほど同じ。


男 おい!炉だろ!危ねえ!見せろ!点検しろ!

フィン 危ねえって言えば椅子が出ると思ってんの? ここ椅子ない。

男 だったら椅子を持ってきた!

男が本当に椅子を二つ、返却棚の前に置こうとした。止まりを作る。観客を座らせる。座らせたら議論が育つ。育ったら燃える。


ユハが無言で立ち位置を変えた。返却棚の前の幅が細くなる。椅子が置けない。置こうとすると通路が死ぬ。死んだ通路は流れに押されて動く。椅子だけが邪魔者になる。

ゼフは椅子に触らない。触ると“片付け”になる。片付けは完成感になる。完成感は餌。

代わりに、子供便が通った。


子供 あ、空箱じゃないの?これ。

ミナ 空箱じゃない。触らない。

子供 じゃあ、通れないからどけてー。

子供が声を上げた瞬間、周りの子供が勝手に回り込み、椅子を避ける動線で走り抜けた。椅子の周りだけ流れが加速する。置いた本人だけが止まる。止まった方が負ける。


フィン お前の椅子、座る前に負けたな。

男 ふざけるな!危険だ!公開で、

レイナ 却下。外変化0。

男 理由を言え!

ミナ 理由なし。

レイナ 同文で終わり。


男は叫んだが、叫ぶほど自分が止まって見える。止まりは餌じゃない。止まりは負けだ。

椅子は置けない。観客も座れない。議論の席が生えない。燃えない。


そこへ帳面役の息のかかった連中が寄ってきた。紙の束。署名。公開。安全。炉が二つになったという噂の形だけを掴んで、椅子にしたい。


相手 炉を増やした!危険だ!公開点検を、

フィン 公開って言った瞬間、椅子。ここ椅子ない。

相手 皆のために!

レイナ 皆のためは椅子。却下。

ミナ 紙は凍結送り。


ミナが紙束を受け取った。読まない。視線を落とさない。凍結送りは既存箱。増やさない。名付けない。掲示しない。

相手が理由を引き出せない。引き出せないと、燃える形が作れない。


相手 危険の根拠を、

ミナ 理由なし。

レイナ 条件だけ。

フィン はい終了。次の角行け。


左肩の男は、さらに雑な手を打った。返却棚の落とし口に、札穴の違う札を一枚だけ滑り込ませた。拾わせて声を出させる狙い。声が出れば椅子が生える。

だが拾わない形がある。触らない形がある。


ゼフが一瞥した。

ゼフ 穴違い。対象外。

レイナ 触らない。箱ごと凍結。

ミナ 数だけ。


ゼフは札を拾い上げない。返却棚の前で止まらない。流れの外へ押し出すだけ。既存の凍結送り箱へ落とす。

男が歯噛みした。焦りが雑に出る。雑は距離で死ぬ。


夕方、ブラントが市場から戻った。噂の内容は持ち帰らない。形だけ。

今日は炉が二つ、という言葉が膨らみかけていた。安全、点検、公開。椅子セットが揃いかけていた。


ブラント 炉が二つ、の形が回りそうでした。

レイナ 数だけに戻す。

ミナ 条件は紙一枚。理由無し。

フィン 外は勝手に理由作るからな。

レイナ 作らせても、板にないなら盾にならない。

ブラント 二つ、夜便、返却翌朝。それ以上の話題を渡してません。


領主へは数字だけ。短く。

板の盾を立てるのは領主の役目。噂が嫌いな人間は数字で切る。


領主 炉が増えたと聞いた。

ブラント 補修班に炉パックを二つ。夜便のみ。

領主 二つなら盾になる。増やしすぎるな。噂は嫌いだ。

レイナ 承認だけ。

領主 よろしい。外は変えるな。

ミナ 外変化0。


夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。

油の払い出しは番号一致。返却も番号一致。異常なし。余計な光を増やさない。増やさないから覗きが腐る。

ゼフが箱を二つ、内側で揃える。炉パック。外は同じ箱。札穴一致。番号一致。

ミナは紙一枚があることだけ確認する。開けない。読まない。説明しない。

ユハが先に歩き、角の幅を殺して道を作る。立ち話が生える角は通らない。


レイナ 夜便。二つ。渡して戻る。会話しない。

フィン 今夜は見物が湧くぞ。

レイナ 湧かせない。止まらない。

ミナ 条件は紙。口で増やさない。

ゼフ 札穴、合う。


補修班工房の前で止まらない。

箱を置く。札穴を見せる。相手が札を合わせる。合えば受け取る。合わなければ持ち帰る。

会話は最小。理由は無し。議論は無し。炉の前ほど口を短くする。


補修班頭 今夜は二つか。

二つだけ。夜便のみ。返却は翌朝。

補修班頭 分かった。

レイナ 終わり。戻る。


帰り道、足音が遠く一つ。左肩の男の気配。詰められない。灯りが足元だけで顔が見えない。入口は暗い。外から学べない。空振りが積もる。

追わない。捕まえない。燃やさない。距離で終わる。


翌朝。返却棚に箱が二つ落ちていた。向きは流れに向く。止まらない。落として流す。

札穴は一致。番号も一致。遅延は無し。混ぜは無し。

昨日の穴違い札は凍結送りの中で寝ている。外に出ない。説明も出ない。残るのは数だけ。

補修班の作業は早く終わる。終わったら帰る。帰ったら燃えない。


フィン 炉が二つでも、外が静かだな。

ミナ 条件だけで回したから。

ゼフ 穴が合う箱だけ戻った。

ユハは無言で入口の暗がりへ戻る。止まりは今日も死んでいる。

レイナ 次も一つだけ。外変化0。


補修班 炉パック 夜便 2/対象外 1/遅延 0

俺は板に一行だけ残した。

補修班の炉パックを夜便で2に増やし、再開に乗じた椅子と混ぜは凍結送りで数だけに落とした。

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