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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: てへろっぱ


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第82話 止めた夜便

朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。

返却棚に落ちていた箱を数える。札穴。番号。落とし口の向き。流れは死んでない。止まりも生えてない。

だが数が合わない。昨日の補修班の返却が、ひとつ足りない。


ゼフ 一つ、戻ってない。

フィン 来たな。遅延。

ミナ 聞かない日ね。

レイナ 遅延1。次便停止。終わり。


理由を聞くと口が増える。口が増えると椅子が立つ。椅子が立つと燃える。

だから探さない。詰めない。追わない。遅延は遅延で止める。条件で止める。札で止める。


ゼフが穴札の束から、遅延札を一枚だけ抜いた。小さい。目立たない。見せびらかす道具じゃない。止める道具。

ミナは既に紙を一枚、同じ文で用意していた。昨日と同文。理由なし。増やさない。変えない。


ミナ 同文でいく。

レイナ 同文回数、数で。

フィン はいはい。冷たくて燃えないやつ。


補修班 遅延札一致 次便停止 返却後再開


ゼフ 札、ここ。

返却棚の内側、落とし口のすぐ横。外からは見えない角。動線の邪魔にならない角。止まって眺める幅がない角。

ユハが無言で立ち位置をずらし、返却棚の前の幅をさらに細くした。止まりが生えない。立ち話が死ぬ。


フィン これで、今日は夜便無しか。

レイナ 補修班だけ。止める。

ミナ 止めた理由は言わない。条件だけ。

ブラント 市場には、止めたって言葉が出ます。

レイナ 出すなら数だけ。言い切り。


昼は動かさない日を混ぜる。外に進捗を出さない。完成感を外に出さない。

棚の前で作業をしない。入口で喋らない。窓口は短く。同文で終わらせる。

子供便は空箱だけが回る。叱らない。損で走らない。


子供 今日、箱ないの?

ミナ 空箱はあるよ。落としたら終わり。

子供 終わり!

フィン 終わりが早いと燃えない。

レイナ 良い。空振り。


空振りが積もると、相手の観察が腐る。

止めた日ほど覗きは寄る。寄っても何も変わらない。外変化0。完成感0。話題0。

ただ、止めたという事実だけが残る。それを説明させるのが相手の狙い。説明しない。


昼過ぎ、補修班から走ってきた若いのが一人。息が切れてる。止まりたそうな顔。だが止まれる場所がない。

返却棚の前は細い。ユハが立ってる。立ったまま通れるが、立ち止まれない。


補修班の若いの 今日の夜便、来ないって、

ミナ 紙。

ミナが同文の紙を一枚、箱の縁に置いた。手渡しにしない。手渡しは会話が生える。置いて、取らせる。

若いのが紙を見た。理由が書いてない。だから反論ができない。反論の形がない。形がないと燃えない。


補修班の若いの ……遅延札一致、次便停止。

フィン 読めたな。終わり。

若いの でも、作業が、

レイナ 返却後再開。終わり。

若いの ……。

ユハが無言で一歩だけずらした。幅がさらに死ぬ。若いのは立ち話を続けられず、紙を握ったまま引いた。


フィン 優しい顔して、優しくない運用。

ミナ 優しいよ。揉めない。

レイナ 燃えない。損も増やさない。


その直後、左肩が擦れた男が現れた。今日は雑。焦りが目に出てる。

遅延を作った本人か、遅延に乗りたいだけか。どっちでも同じ。燃やす材料にしたいだけ。


男 おい!遅延だぞ!危ねえだろ!点検しろ!

フィン 危ねえって言えば椅子が出ると思ってんの? ここ椅子ない。

男 入口を照らせ!確認しろ!

レイナ 却下。外変化0。

男 返ってねえ箱があるんだぞ!

ゼフ 一つ。遅延札。停止。

男 理由を、

ミナ 理由なし。

レイナ 同文で終わり。


男は声を上げ続けたが、上げるほど自分が止まって見える。止まった方が負ける。

人は流れていく。子供便が空箱を抱えて走り抜ける。返却棚の前が空く。空けば空くほど、叫ぶ男だけが浮く。浮けば距離ができる。距離ができれば燃えない。


その隙に、男は別の無茶をした。返却棚の落とし口に、箱をひとつ落とした。

だが札穴が違う。番号の位置が違う。混ぜ。手戻りを増やして、説明を引き出す狙い。


ゼフが一瞥した。

ゼフ 穴違い。対象外。

レイナ 箱ごと凍結。

ミナ 数だけ。


ゼフは整列しない。起こさない。丁寧にすると完成感が増える。完成感は餌。

そのまま流れの外へ運び、既存の凍結送り箱へ落とした。増やさない。名付けない。掲示しない。

男が歯噛みする。焦りが雑に出る。


男 おい!それは、

フィン 対象外。終わり。

レイナ 終わり。

男 ……っ。


続けて帳面役の息のかかった連中が来る。紙束。署名。公開。安全。遅延を餌にして椅子を立てる気だ。

止めた夜便を、人権だの妨害だの言い換えて燃やす気だ。燃やさない。


相手 補修班の作業が止まる!危険だ!公開説明を、

フィン 公開って言った瞬間、椅子。ここ椅子ない。

相手 皆のために!

レイナ 皆のためは椅子。却下。

ミナ 紙は凍結送り。


ミナが紙束を受け取る。読まない。凍結送りへ。既存箱へ入れるだけ。

相手が叫ぶ。叫ぶ場所がない。ユハが幅を殺してる。人が流れていく。流れの中の叫びは、ただの音になる。


相手 理由を言え!

ミナ 理由なし。

レイナ 同文で終わり。

フィン はい終了。次の角行け。


ほのぼのは、止めた日の中に出た。

子供便が空箱を運ぶだけで、返却棚の前が片付いていく。大人が止まる理由が減る。

止まる理由が減ると、紙の束が刺さらない。刺さらないと燃えない。燃えないと、運用が勝手に静かになる。


子供 箱、軽いのだけ集めた!

ミナ えらい。落とし口は一つだよ。

子供 わかってる!

フィン 条件だけ渡すと、勝手に回るな。

レイナ 口が無いから。


夕方、ブラントが市場から戻った。噂の内容は持ち帰らない。形だけ。

今日は止めたという言葉が、外で勝手に膨らみかけていた。妨害。いじめ。危険。公開点検。いつもの椅子セット。


ブラント 止めたことで、言葉が踊りかけました。

レイナ 踊らせない。数だけ。

ミナ 条件は紙一枚。同文。

フィン 理由が無いと、外は勝手に理由を作るんだよな。

レイナ 作らせても、板にないなら盾にならない。

ブラント 板の数に戻しました。遅延一、停止一。それ以上の材料を渡してません。


領主へは数字だけ。短く。

板の盾を立てるのは領主の仕事。噂が嫌いな人間は数字を好む。


領主 止めたと聞いた。

ブラント 遅延が一つ。条件通り停止です。

領主 理由で揉めるな。噂は嫌いだ。止めるなら条件で止めろ。

レイナ 条件で止めた。

領主 よろしい。外は変えるな。

ミナ 外変化0。

領主 板の数だけ残せ。


夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。

油の払い出しは番号一致。返却も番号一致。異常なし。

今夜の夜便は、補修班には出さない。止める。止めたと説明しない。止めたと叫ばせない。

止めるための札が、内側の角に刺さっている。それだけで回る形。


フィン 今日、ほんとに行かないのな。

レイナ 行かない。条件。

ミナ 紙はもう渡してある。

ゼフ 返却待ち。

ユハは無言で入口の暗がりに立って、覗きの角度を殺した。止まりが生えない夜。灯りは足元だけ。入口は暗い。外から学べない夜。


その深夜、足音がひとつ。

補修班の若いのが、箱を抱えて戻ってきた。遅延だった一つ。

走ってきた形跡。汗。だが立ち止まれない。返却棚の前は細い。落とし口は一つ。落として終わり。


補修班の若いの 返します!

ゼフ 穴、合う。

ミナ 落として終わり。

レイナ 終わり。


箱が落とし口へ落ちた。音は小さい。灯りは足元だけ。誰も拍手しない。勝った顔をしない。完成感を出さない。

ただ、条件が満たされた。再開できる状態になった。

だから明日、また一つだけ進められる。外は変えずに。


朝。返却棚には、遅延がゼロの形が戻っている。遅延札は内側の角に残っている。目立たない。触らない。触らないから燃えない。

止めた日が、止めただけで終わった。相手が燃やせる理由を渡さなかった。


フィン 止めたのに、燃えなかったな。

ミナ 理由を言わなかったから。

ゼフ 穴が合うものだけ戻った。

ユハは無言で入口の暗がりへ戻る。止まりは今日も死んでいる。

レイナ 次も一つだけ。外変化0。


俺は板に一行だけ残した。

遅延1を条件通り停止1で処理し、混ぜは凍結送りで潰して口を増やさず返却で再開可能にした。

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