第79話 倉庫パック二つ
朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。
返却棚に落ちていた箱は、昨夜の分だけ。札穴は一致。番号も一致。遅延は無し。対象外も無し。
静かな日ほど、仕掛けが入る。だから確認だけは増やす。説明は増やさない。
レイナ 次。倉庫パック。二つ。
フィン また一段だけ?
レイナ 一段だけ。覗きを腐らす。
ミナ 紙は一枚ね。板は一行。
ゼフ 倉庫用。穴札は同じ位置。
ユハは入口側に立って、足の流れを細く保った。近づいて止まれる幅を作らない。覗きを寄せない。
補修班工房への拡大は、台で一度回った。次は倉庫。
倉庫パックは、噂になりやすい。物が増えると人が寄る。寄れば椅子が生える。だから数は二つだけ。夜便だけ。返却は翌朝。札一致だけ。
ミナが紙を一枚だけ置いた。筆が走る。短い条件文。理由は無し。
補修班 用途パック(倉庫) 二つ 夜便のみ 札一致 返却は翌朝
ミナ これで終わり。
レイナ 条件だけ。口は増やさない。
ブラント 外で聞かれても、そのまま返せます。
フィン 倉庫って言葉が出ると、椅子が生えやすいぞ。
レイナ 生やさない。箱で流す。止まらない。
ゼフが倉庫パックを二つ用意した。中身は同じ。箱の外見も同じ。札穴の位置も同じ。番号の位置も同じ。
新しく見せない。整列も見せない。内側で揃えて、外へは出さない。
ゼフ 箱二。倉庫。
レイナ 板は一行。数だけ。
ミナが板の端に一行だけ書く。
補修班 倉庫パック 夜便 2
昼は動かさない日を混ぜる。進捗を見せない。完成感を外に出さない。
子供便は空箱だけ。叱らない。走らない。走っても得が無い。
子供 これ、どこに落とす?
ミナ 返却棚。落としたら終わり。
子供 終わり!
フィン 終わりが早いと燃えない。最高。
レイナ 止まらない。偉い。
その頃、左肩が擦れた男が来た。今日は焦りが雑に出てる。
入口の暗がりに顔を寄せて、返却棚の前へ回り込もうとした。止まりを作る気だ。誰かに見せる気だ。
ユハが一歩だけずらした。返却棚の前の幅が細くなる。止まれない。立てない。椅子が消える。
男は立ち位置を探して、見つけられずに歩くしかない。
レイナ 雑。止まり芽。潰す。
フィン 今日は散歩か?
男 ……。
男は次に、別の手で来た。返却棚へ箱を落とすふりをして、札穴の違う箱を混ぜて置いた。
混ぜが入ると、手戻りが増える。手戻りが増えると、説明が増える。説明が増えると燃える。狙いはそこ。
だが箱は箱で終わらせる。
ゼフが札穴を一瞥した。穴の形が違う。番号の位置が違う。倉庫パックじゃない。
ゼフ 違う。対象外。
レイナ 触らない。箱ごと凍結。
ミナ 数だけね。
ゼフは箱を起こさない。整列しない。完成感を増やさない。
そのまま流れの外へ抱えていき、凍結送りの既存箱に入れた。箱を増やさない。口を増やさない。名前も増やさない。
男 おい、何を、
フィン 番号違うのに混ぜたら、対象外だろ。終わり。
レイナ 同文で終わり。
ミナ 対象外は対象外。
男は言葉を探したが、探すほど自分が雑になる。雑は距離で死ぬ。
捕まえない。追わない。燃やさない。距離だけ残す。
すぐ後ろから、帳面役の息のかかった連中が寄ってきた。紙の束。署名。公開。安全。
返却棚の前で止まらせるつもりだ。止まれば議論が生まれる。椅子が立つ。燃える。
相手 今のを見たか! 混ぜがある! 公開点検を、
フィン 混ぜじゃない。対象外。終わり。
相手 危険だ! 皆のために、
レイナ 皆のためは椅子。却下。
ミナ 紙は凍結送り。
ミナが紙を受け取った。読まない。視線を落とさない。凍結送りへ。
既存箱へ入れるだけ。説明は無し。議論は無し。場所も無し。
相手は続けたが、続ける場所が無い。ユハが幅を殺している。人が流れていく。流れの中で叫ぶほどみっともなくなる。
相手 読め!
ミナ 読まない。
レイナ 読まないで回る形にする。
フィン 終わり終わり。次の角行け。
ほのぼのは、ここに出た。
子供便が返却棚の落とし口を覚えて、空箱を勝手に運び、勝手に終わらせる。大人が止まる暇が減る。
棚の前に溜まる人が減る。溜まらないから椅子が生えない。
子供 落とした!
別の子供 次、どれ?
ミナ 空箱。軽いの。
フィン ほら、止まりが死ぬ。
レイナ 良い。燃える理由が減る。
夕方、ブラントが市場から戻る。噂の内容は持ち帰らない。形だけ。
今日は倉庫という言葉が、外で勝手に膨らみかけていた。
ブラント 倉庫を開けたって言葉が回りそうでした。
ミナ 板にないなら、ない。
レイナ 数だけ。言い切り。
フィン 倉庫って単語、外で育ちやすい。
ブラント 育つ前に折りました。夜便二つ、返却翌朝。それだけで止まります。
領主へも数字だけ。
板の一行をそのまま見せる。説明はしない。理由は言わない。
領主 補修班、倉庫パック、夜便、二。
ブラント はい。
領主 二なら盾になる。増やしすぎるな。噂は嫌いだ。
レイナ 承認だけ。
ミナ 承認だけで十分です。
領主 よろしい。
夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。
油の払い出しは番号一致。返却も番号一致。異常なし。余計な光は増やさない。
箱二つ。倉庫パック。札穴一致。番号一致。
レイナ 夜便。二つ。渡して戻る。
フィン 夜は口が滑る。滑らすな。
ミナ 条件は紙にある。口で増やさない。
ゼフ 札穴、合う。
補修班工房の前で止まらない。
箱を置く。札穴を見せる。相手が札を合わせる。合えば受け取る。合わなければ持ち帰る。
会話は最小。理由は無し。議論は無し。椅子は無し。
補修班頭 倉庫も来たか。
二つだけ。夜便のみ。返却は翌朝。
補修班頭 分かった。
レイナ 終わり。戻る。
帰り道、左肩の男の気配が遠い。詰められない。
灯りが足元だけで顔が見えない。入口は暗い。外から学べない。空振りが積もる。
追わない。捕まえない。燃やさない。距離で終わる。
翌朝。返却棚に二つ落ちていた。向きは流れに向く。止まらない。落として流す。
札穴は一致。番号も一致。混ぜは無い。
昨日混ぜた箱は凍結送りのまま。外には出ない。説明も出ない。残るのは数だけ。
フィン 倉庫って言葉が出たのに、外が静かだな。
ミナ 条件だけで回したから。
ゼフ 穴が合う箱だけが戻る。
ユハは無言で入口の暗がりへ戻る。止まりは今日も死んでいる。
レイナ 次も一つだけ。外変化0。
俺は板に一行だけ残した。
補修班の倉庫パック許可を夜便で2つだけ回し、混ぜは対象外として凍結送りにして数だけ残した。




