第69話 内張り一段、見える口が減る
朝、棚を見る。上段 今日返却が空いてる。中段 明日返却が整ってる。下段 遅延札が少ない。確認箱の口も増えてない。静か。静かな日は進捗が入る。進捗は一つだけ。今日は内張り板の一段目。枠が閉じたから、次は中を閉じる。中が閉じると覗きが死ぬ。覗きが死ぬと噂の入口が減る。入口が減ると燃えない。
レイナ、今日
内張り一段。音小。穴と番号一致。板ログは一行。余計な紙は出さない。窓口は同文。外の貼り紙は対象外
了解
内張りは覗き対策。覗きは舞台の入口。入口を塞げ
了解
フィンが欠伸しながら言う。
昨日の返却箱のやつ、もう誰も話してないな
話させなかった。話す椅子が立たないと、人はすぐ別の話に行く
ミナが帳面を抱えて頷く。
話題が移る前に、こちらは板で固定して箱で流します。短いほど効きます
ゼフが木札束を揃える。
番号、同じでいく
ユハが短く言う。
一段。止める
拠点工房へ。内張り板は用途パックで束ねてある。炉用、倉庫用、作業台用。混ぜない。混ぜると口が増える。口が増えると燃える。燃やさないために、穴の数と位置で揃える。穴は喋らない。
ゼフが板束を持って言う。
一段目、倉庫側から
倉庫側は人が寄りにくい。寄りにくい側から閉じると、見学口が減る。見学口が減ると止まらない。
レイナが短く言う。
倉庫側から閉じろ。覗ける面を先に殺せ
了解
工房内、枠の一段目に板を当てる。合わせる。合わせが甘いと隙間から覗ける。覗けると口が増える。口が増えると燃える。燃やさないために、合わせは丁寧に、ただし動作は短く。丁寧と長いは違う。長いのは舞台。舞台にしない。
ミナが言う。
板の番号、これで合ってます
ゼフが短く答える。
合う。穴も合う
ユハが板を押さえる。押さえ方が静かだ。静かだと音が出ない。音が出ないと人が寄らない。
フィンが小声で笑う。
この静けさ、逆に怖いな
怖いくらいで丁度いい。騒ぐと燃える
釘は一発。打ち直しは音が増える。音は覗きを呼ぶ。覗きは舞台の入口。入口を塞ぐ日だ。
ゼフが釘を打つ。カン、が一回。そこで止める。次。板を入れる。釘は一回。繰り返し。繰り返しは運用になる。運用になると口が減る。口が減ると燃えない。
その最中、外の足音が増えた。増え方が嫌な増え方。止まる足音。覗く足音。覗く足音は入口を探してる。
フィンが耳だけ動かして言う。
来たな。観客席
ミナが即答する。
窓口の角、二人止まってます
止まる理由を消す。消す道具は箱(導線)と板(同文)。
レイナが短く言う。
止まらせるな。空箱で流せ。板は同文。内張りは止めない
了解
フィン、空箱二つ、窓口の角と返却棚の角に置いて導線を一本にして
フィンが笑う。
はいはい、箱の杭ね
空箱は増やさない。倉庫にある空箱を二つ借りて、置いて、終わったら戻す。箱は道を作る。道が一本なら止まりにくい。止まりにくいなら舞台が立たない。舞台が立たなければ噂が座れない。
窓口に出ると、止まってる二人のうち一人が紙を持ってた。紙は燃える。燃えないために紙を読まない。紙の内容に反応しない。反応が舞台になる。
男が言う。
検収を見せないのはおかしい。端材の束が合ってる証拠を見せろ
板は見せる。箱は見せない。板は燃えない。箱は舞台になりやすい。
ミナが板を指す。
検収は済。束数は板にあります。閲覧は窓口でのみ
男が言う。
だから窓口で見せろ
窓口でのみ、は窓口で終わるという意味だ。見せるとは言ってない。ここで説明を足すと燃える。燃やさないために同文を返す。
閲覧は窓口でのみです
フィンが軽口を足す。
同じ言葉しか返ってこないの、逆に安心だろ。返事が変わる店が一番こえーんだよ
男が言う。
舐めてるのか
舐めてない。板だ。板を読む。止まらない
ユハが一歩だけ位置をずらす。塞がない。止まる理由を消す位置。空箱が導線を作ってるから、そこに立たれると流れが止まる。止まると燃える。燃やさないために、立つ位置をずらすだけ。
もう一人が紙を掲げた。
補修班が横流ししてる。月末箱の中身を出せ
強い言葉。椅子を作る言葉。椅子に座らせない。座らせないには、話題を箱に落とす。落とす場所は確認箱。
ミナが淡々と言う。
不明紙は確認箱へどうぞ。内容は扱いません。数だけ記録します
男が言う。
逃げるのか
逃げない。止まらない。窓口で終わる
レイナが短く言う。
相手は舞台が欲しい。舞台にしない。紙は箱へ。板で終わり
了解
男は紙を確認箱に入れない。入れないなら、ただの紙だ。紙は喋らない。喋らないなら燃えない。燃やせない。
そこで、子供便が通る。空箱の導線があるから、子供は止まらない。止まらない子供は燃えにくい。
子供が言う。
じゃまー
止まってた二人が少しどいた。どいた瞬間、導線が流れる。流れれば勝ち。
フィンが笑って言う。
ほら、子供便が最強なんだよ。止まると負けだからな
子供が頷く。
止まると負けー
窓口の角が痩せた。俺は工房に戻る。戻るのが正しい。外の口は距離。距離を取ったまま、内張りを進める。進捗は一つ。内張り一段。それ以外は現状維持。
工房の中、板は半分まで入った。半分入っただけで空気が変わる。外から中が見えにくい。見えにくいと覗きが死ぬ。覗きが死ぬと、工房はただの作業場になる。作業場は喋らない。
ミナが小声で言う。
外、止まりが減りました
良い。外の椅子が立たないなら、内の釘が勝つ
ゼフが言う。
次、板
ユハが短く言う。
押さえる
板を入れる。穴が合う。番号が合う。合うと速い。速いと音が少ない。音が少ないと覗きが来ない。覗きが来ないと燃えない。燃えないとほのぼのが増える。
フィンが戻ってきて言う。
導線、流れた。空箱だけで勝ったな
空箱は強い。木の道は喋らない
その時、レイナが短く言う。
今、板に違和感。束の端
どこ
右から三枚目。穴位置が僅かに違う。パック外
ゼフがすぐ手を止める。止め方が静か。静かに止めるのが大事。止める音は舞台を呼ぶ。
ゼフが言う。
これ、穴が浅い。位置も違う
ミナが息を吸う。
紛れ込みです
紛れ込み。これが相手の次の手だ。差分を作れないなら混ぜる。混ぜて、後でズレを作って、横流しと言う。燃える筋。燃やさないために、追わない。犯人探しをしない。混ざった板を対象外にして距離で終わらせる。対象外にした板は、正規の流れに入れない。入れないなら燃えない。
レイナが短く言う。
対象外。隔離。説明しない。板ログは数だけ。穴違いは証拠にならない。証拠にすると真似が進む
了解
ミナ、対象外札一枚。ゼフ、その板は板回収箱へ。今日の用途パックには戻さない
ミナが即答する。
対象外札、書きます
対象外札は短く。
穴位置不一致 対象外
以上。理由は一つだけ。増やさない。増やすと真似が進む。進むと追いかけっこになる。追いかけっこは燃える。
ゼフがその板を板回収箱へ落とす。板回収箱は既にある。新しい箱は増やさない。増やさないのが強い。
ミナが板(1行ログ)に一行だけ。
内張り 不一致板1 対象外
数だけ。内容は書かない。穴位置の詳細も書かない。書くと真似が進む。
フィンが小声で言う。
うわ、嫌なやつだな。混ぜてきたのか
混ぜた。混ぜたけど燃えない。対象外で終わり
ユハが短く言う。
距離
レイナが短く言う。
混ぜは次も来る。だが同じ手は効かない。対象外が積めば、混ぜる側が損をする。損が続けばやめる
了解
作業に戻る。戻るのが重要。混ぜを話題にしない。話題にすると相手が喜ぶ。喜ばせない。喜びは舞台。舞台にしない。
板を入れる。釘一発。板を入れる。釘一発。繰り返し。繰り返しは静かに強い。
昼前、ブラントが顔を出す。昨日の帳面役の話の続きだろうが、今日は内張りの日。進捗は一つ。話は短く。
領主は板の束数を見て納得した。だが帳面役は引いてない。次は市場側から回すつもりだ
市場側
端材が回ると、板材が動く。板材が動くと値が動く。値が動くと口が増える。値の口で噂を座らせる
値の口は燃える。燃やさないために、値を語らない。値はブラントに任せる。現場は箱と板だけ。
レイナが短く言う。
値の話はブラントに吸わせろ。現場は言わない。値札を作らない
ブラントに任せる。俺は内張り
ブラントが頷く。
了解。俺は外で吸う。お前は中を閉じろ
ほのぼのが差し込むのは、こういう分担ができた時だ。全部を自分で抱えると燃える。燃えないために、役割を箱に分ける。箱は導線。導線は役割。役割が決まると口が減る。
昼、ミナが小さい包みを出す。パン。甘いやつ。工房の中で食べると紙屑が出る。紙屑は燃える。燃やさないために外で食べる。外で食べると覗きが来る。覗きは入口。入口を作らないために、食べる場所も箱で切る。
フィンが言う。
食う場所まで箱かよ
箱で導線を作るだけ。裏の壁際、空箱一つ置いて、そこから先に来る理由を消す
ミナが笑う。
食事導線
ゼフが真顔で言う。
導線、大事
ユハが短く言う。
座るな
座らない。立って食う。短く終わる。短く終わると燃えない。食べたら戻る。戻るのが勝ち。
午後、内張り一段目の最後。隙間は小さい。小さい隙間ほど覗きの入口になる。入口を潰すには、板を削って合わせるのが一番だが、削ると音と粉が増える。粉は散る。散ると掃除が増える。掃除が増えると手が止まる。止まると燃える。燃やさないために、板を削らず、端材の薄い当て木で寄せる。寄せるのは静か。静かな勝ち。
レイナが短く言う。
削るな。寄せろ。当て木。穴を増やすな
了解
ゼフ、当て木
ゼフが薄板を持ってくる。端材から作った当て木。端材が現場で役になる瞬間だ。役になった端材は燃えない。
当て木で隙間が埋まる。埋まったら釘一発。これで一段目が終わった。終わったら止める。二段目に手を出すと欲が出る。欲は燃える。進捗は一つ。ここで終わり。
ミナが小さく言う。
一段、閉じました
フィンが言う。
見た目変わったな。中が見えねえ
見えないのが狙い。見えないと覗きが死ぬ。覗きが死ぬと、工房はただの箱になる
ゼフが言う。
箱、強い
ユハが短く言う。
終わり
戻って返却棚を見る。相変わらず回ってる。外の貼り紙は増えてない。増えてないなら、内張りが効き始めた。覗けない場所は噂の入口が減る。入口が減ると、外の口は次の餌を探す。餌を探してるうちは、こちらが進む。
夕方、端材出口は一回。受領は夕方のみ。固定を守る。固定は燃えない。燃えないと観察が腐る。
ミナが板(1行ログ)。
時刻 端材出口 補修班 束数
補修班の若い衆が言う。
今日、昼に来たやつ、空振りして帰った。夕方だけが効いてる
効いてるなら続ける。続けるのが勝ち
若い衆が頷く。
揉めない方が得だな
確認箱。午前夕方二回。今日は見せろ勢が紙を増やす日ではなかった。代わりに混ぜが来た。混ぜは工房内で止めた。外の紙は増えない方が良い。紙が増えるほど、椅子が立つ。椅子が立たない日が続けば勝ち。
ミナが言う。
不明紙1。隔離
板に数だけ。
時刻 不明紙1 確認箱 隔離
夜、工房の中を見る。一段目の内張りで、外の光が入りにくくなった。光が入りにくいと、影が減る。影が減ると覗けない。覗けないと想像が増える。想像は紙で吸う。紙は窓口で短く終わる。終われば燃えない。
フィンが言う。
今日、なんか勝った感あるな。静かに
静かに勝つのが一番強い
ミナが頷く。
静かに勝つには、短い板と、喋らない箱です
ゼフがぽつり。
不一致板、対象外。気持ちいい
ユハが短く言う。
距離
レイナが短く言う。
次は二段目に見えるが、進捗は一つだけにしろ。二段目か、棚の追加か、どちらか。混ぜは続く。対象外で積め。外の口は値で揺らす。値は外で吸わせろ。中は閉じろ
了解
俺は板に一行だけ残した。
内張り一段で覗きが減った。混ぜの板は対象外で木に戻し、見せろの口は空箱の導線で流して、今日も燃えずに終わった。




