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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: 検証中


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第68話 枠が閉じると覗きが死ぬ

朝、空気が軽い。検収を見せないで終わった翌朝は、現場が静かだ。静かだと手が動く。手が動くと余裕が出る。余裕が出ると進捗を一つ入れられる。今日は内張り枠。拠点工房の中が見えにくくなる日。見えにくくなると覗きが死ぬ。覗きが死ぬと口が減る。口が減ると燃えない。燃えないと、ほのぼのが増える。

レイナ、今日

進捗一つ。内張り枠の完成。扉側の合わせと固定。箱と板は維持。検収の話はしない。数だけ

了解

内張り枠は覗き対策。覗きは噂の入口。入口を塞げ

了解


フィンが欠伸しながら言う。

枠って、地味だけど楽しみだな。見た目変わるし

見た目が変わると、見に来る口も変わる。変わった口は板で切る

ミナが帳面を抱えて言う。

枠が閉じると、説明の回数も減ります。見えないと勝手に想像されますが、想像は紙で吸えます

想像は紙で吸う、板で固定、箱で導線

ユハが短く言う。

閉じる

ゼフが鍵を鳴らす。

鍵、二つ。枠、釘


拠点工房は街外れの物置跡地。昨日までに枠の形はできてた。残りは扉側の合わせ。合わせが甘いと、隙間から覗ける。覗けると噂の種になる。噂の種は燃える。燃やさないために、隙間を潰す。ただし潰しすぎて動きが悪くなると、現場が燃える。燃えるのは外だけじゃない。中も燃える。だから、作業しやすい範囲で閉じる。閉じるは守りだけど、守りは進捗になる。


工房に入る前に返却棚を見る。回ってる。表示板は固定。遅延札は少ない。対象外札も増えてない。増えてないのが勝ち。勝ちは目立たない。目立たない勝ちは長い。

フィンが棚を見て言う。

回ってるな。なんか、棚が機嫌いい

機嫌の良さは板の短さ

ミナが頷く。

条件紙が短いほど揉めません。揉めないと棚が回ります


工房へ。中は木の匂いが落ち着いてきた。作業台の脚も揺れない。棚の位置も決まった。決まった場所は口が減る。口が減ると燃えない。

枠は壁沿いに立ってる。内張り板をはめるための骨組み。扉側の縦材が一本、ほんの少し反ってる。反りは覗きの入口になる。入口は潰す。潰すけど暴力は要らない。木は叩けば直る。でも叩く音は呼ぶ。呼ぶ音は燃える。燃やさないために、音を小さく、動作を短く。

レイナが短く言う。

音を出すな。叩かず締めろ。楔で寄せろ

了解


ゼフが薄い楔を持ってくる。端材から作った楔だ。端材の出口は一つ。だけど端材は現場で役になる分がある。役になる端材は束ね箱に入れない。入れると出口行きになる。出口行きだと今この場で使えない。使えないと別の木を切る。別の木を切ると端材が増える。増えると燃える。燃やさないために、役になる端材は役のまま使う。役になる端材は喋らない。

ゼフが短く言う。

楔。二枚。ここ

楔を反りの裏に入れて、少しずつ寄せる。叩かない。押す。押して釘で止める。釘も一発で決めたい。打ち直しは音が増える。音は覗きを呼ぶ。


フィンがわざと囁く。

今の、地味に職人っぽい

地味が勝ち筋

ミナが淡々と言う。

地味は説明が減ります。説明が減ると紙も減ります

紙が減ると燃えない


枠が寄った。隙間が消えた。消えた瞬間、空気が締まる。締まると落ち着く。落ち着くとほのぼのが増える。ほのぼのは、この程度の小さな勝ちの積み重ねだ。


ここで、外から足音。覗きじゃない。今までの覗きより重い。数字の匂い。帳面を持ってくる足音。扉の前でブラントが声を落として言った。

領主のところ、変な帳面が回り始めた。端材の束数が合わないって

来た。数字で揺らす。揺らしは強いけど、強いほど拾いやすい。拾うのは板。終わらせるのは距離。

どんな帳面

補修班が横流ししてる、って形にしてる。束数が週でズレてるって書いてる

ミナが即答する。

束数は板(1行ログ)で残してます。検収前後も同じです

そう。板は燃えない。帳面は燃える。帳面は書ける口が強い。強い口は燃える。燃やさないために、帳面の土俵に乗らない。板の土俵に引き戻す。

レイナが短く言う。

帳面は舞台。板に戻せ。束数前後一致を出せ。中身は見せない。見せろは窓口でのみ

了解


ブラントが言う。

領主は数字好きだ。だから帳面を見せられると顔をしかめる。だが怒ると燃える

怒らせない。数だけ渡す。板の数だけ

ミナ、検収板と端材出口板、束数の行だけ抜いて持つ

ミナが頷く。

了解。束数だけです


俺は枠の最後の釘を打つ。打つ音は一回だけ。これで枠は閉じる。閉じたら外へ行く。進捗は一つ。枠が閉じた。ここで止める。止めないと欲が出る。欲は燃える。


領主の屋敷は遠くない。道中、フィンが言う。

帳面で揺らすのって、一番いやらしいな

いやらしいけど、燃えやすい。間違いを指摘されると人は口が増える

ミナが言う。

口が増えると説明が増えます。説明が増えると矛盾が増えます

矛盾は燃える

ユハが短く言う。

燃やさない

ゼフがぽつり。

板、短い。勝つ


領主の前。相手もいた。左肩じゃない。左肩の匂いだけする男。代役じゃない。今度は帳面役だ。帳面役は丁寧に喋る。丁寧は燃える。燃やさないために、こちらは短く。

領主が言う。

端材の束数が合わないという話が来た

来ましたか

領主が頷く。

帳面だ。補修班が横流ししている、という筋だ

俺は帳面を見ない。見たら土俵に乗る。土俵に乗ると燃える。燃やさないために、板だけ出す。

ミナが板(1行ログ)を差し出す。検収前束4、検収後束4。端材出口の束数。受領夕方のみ。数だけ。

領主が板を見て言う。

束数は一致している。検収も前後同じ

はい。封印も無傷でした。不明紙は隔離です

領主が視線を帳面役に向ける。

この板の束数に反証はあるか

帳面役が丁寧に言う。

板はあなた方が書く。帳面は第三者が書く。第三者の方が信用できる

第三者、という言葉で椅子を作りに来た。椅子を作ると噂が座る。燃える。燃やさないために、第三者の入口を塞ぐ。塞ぐのは箱(導線)。検収は開店前、観客席ゼロ。第三者が入れない時間に終わっている。第三者は見れない。見れないなら、証拠は板の数だけになる。

レイナが短く言う。

第三者を名乗るなら、手順に入れろ。入れないなら黙れ。検収は開店前。観客席ゼロ

俺が言う。

第三者が信用なら、検収手順に入る提案をしてください。ですが検収は開店前に終わっています。毎回同じ。観客席ゼロです

帳面役が言う。

では検収を見せろ

見せない。見せると舞台になる。舞台にしないための開店前だ

領主が短く言う。

見せろは却下だ。舞台は嫌いだ。証拠を出せ

帳面役が言う。

証拠なら帳面に

領主が遮る。

帳面は書ける。板も書ける。だが封印は書けない。封印はどうだ

ゼフが一歩前に出て、封印木片の穴の話だけを短く言う。

穴三つ。紐一周。結び固定。破れ跡なし

領主が頷く。

形の証拠だ。よし。帳面の話はここまで

帳面役の顔が一瞬だけ崩れる。丁寧が雑に変わる。その変化が最後の無茶の入口だ。


帳面役が言う。

なら、補修班の受領票を見せろ。横流ししてないなら見せられるはずだ

受領票は月末箱。月末箱は見せない。閲覧は窓口でのみ。しかも今日は検収日が終わった後。見せろの舞台を作るな。作らせない。

ミナが淡々と言う。

閲覧は窓口でのみ、です

帳面役が言う。

窓口で見せろ

窓口でのみ、は見せる確約じゃない。窓口で吸うだけ。吸って終わらせるだけ。見せたい口は止まる。止まると燃える。

レイナが短く言う。

窓口でのみは、窓口で終わるという意味。見せるとは言ってない。紙は箱へ

領主が言う。

窓口で相談は認める。だが強制閲覧は認めない。証拠が出たら私が見る。それだけだ

帳面役は言い返せない。言い返すと悪者になる。悪者になると損する。損すると引く。引いたら距離。


領主がこちらを見て言う。

一つだけ進めろ。だが増やすな。増やすと燃える

増やしません。進捗は一つだけです。今日は内張り枠を閉じました

領主が頷く。

覗きが死ぬな。良い


帰り道、フィンが言う。

領主、最後の一言で全部分かってたな

数字で判断する人は、形も見る

ミナが言う。

形が揃うと、紙が減ります。紙が減ると噂の餌も減ります

ユハが短く言う。

痩せる

ゼフが言う。

穴、勝ち

レイナが短く言う。

相手は次、現場で差分を作りに来る。束を減らすか増やすか。だが出口は夕方一回。受領も夕方のみ。差分を作れない。作るなら束ね箱を狙う。束ね箱の位置、導線上に。子供便も維持

了解


戻ると、工房前に人が止まりかけていた。さっきの帳面役じゃない。周辺の口だ。口は帳面の噂を持ってくる。持ってきても、座る椅子がなければ痩せる。

婆さんが言う。

横流ししてるって聞いたけど

窓口でのみ、で終わる

ミナが板を指す。

端材は束ね箱へ。出口は夕方一回。閲覧は窓口でのみ

婆さんが頷く。

じゃあいいわ

いいわ、で終わる。これが勝ちだ。勝ちは目立たない。目立たない勝ちは続く。


そして来た。最後の無茶。帳面役が現場で差分を作れないと分かったから、別の場所で差分を作る。返却棚だ。返却棚は人が必ず通る。通る場所は舞台になりやすい。舞台を作るならここ。

子供便が走ってくる。

返却棚の横に箱がある。返却札が入ってるって。早い者勝ちって

早い者勝ち。燃える言葉。端材の無料箱と同じ椅子だ。椅子を立てさせない。壊さない。責めない。対象外で距離。

レイナが短く言う。

返却棚は拠点の心臓。舞台を作らせるな。箱は触るな。導線で外せ。板で返す

了解


返却棚の横、確かに小箱。札が数枚入ってる。返却札を持っていけば早く返却できる、みたいな嘘。嘘は燃える。燃えないために、嘘を暴かない。嘘の箱を木に戻す。木に戻すには、止まらせない。

フィンが軽口で言う。

返却札の早い者勝ちって、何のゲームだよ

ゲームにすると燃える。燃やさない

ミナが淡々と言う。

外箱は対象外です。返却札は棚の札箱から出ます。以上

俺は棚の前板を一行だけ差し替える。増やさない。差し替える。

返却札は棚の札箱のみ(外箱は対象外)

一行。これで終わる。説明しない。説明すると舞台。


ユハが静かに立つ。止まる理由を消す線。線があると人は流れる。流れれば外箱はただの木だ。

子供便が言う。

これ、触っていいの

触らない。触らない方が早い

早い方がいい

なら触らない

子供が頷いて、周りに言う。

触らない方が早いってー

子供の声は軽い。軽い声で導線が戻る。戻れば椅子が立たない。椅子が立たなければ噂が座れない。


外箱の前が痩せた。痩せた瞬間、遠くに左肩が見えた。見せる位置。悔しさの位置。悔しさは燃料だが、燃やさなければ腐る。腐らせる。追わない。距離。

フィンが小声で言う。

最後の無茶、これで終わりか

終わりにする。終わりにしたら勝ち

ミナが小さく笑う。

燃えませんでしたね。箱が木に戻りました

ユハが短く言う。

距離

ゼフがぽつり。

板、一行。強い

レイナが短く言う。

無茶は終わり。次は拠点を育てろ。返却回転UPは維持。内張り枠が閉じたなら、次は内張り板のはめ込みを一段だけ。だが進捗は一つ。明日

了解


夕方、出口一回。受領夕方のみ。固定を守る。守ると相手の観察が空振りする。空振りは腐る。腐るといなくなる。いなくなる間に拠点は育つ。育つ拠点はほのぼのの芯になる。

ミナが板(1行ログ)。

時刻 端材出口 補修班 束数

確認箱。午前夕方二回。今日は不明紙が多い日だった。数字で揺らす日は紙が増える。増えた紙は吸うだけ。

ミナが言う。

不明紙2、隔離

板に数だけ。

時刻 不明紙2 確認箱 隔離


夜、工房に戻って枠を見る。閉じてる。隙間がない。覗きが死んでる。覗きが死ぬと、工房の中はただの作業場になる。作業場は喋らない。喋らない場所が増えると、街は静かに強くなる。

フィンが言う。

枠が閉じたら、なんか秘密基地っぽい

秘密にしない。見えないだけ。見えないのは燃えない

ミナが頷く。

見えないと、条件は板に集約できます

ゼフが言う。

鍵、回る

ユハが短く言う。

進む

レイナが短く言う。

今日の勝ちは二つに見えるが、進捗は一つ。枠。揺らしは板で拾っただけ。明日は内張り板を一段。返却は固定。燃やさない

了解


俺は板に一行だけ残した。

枠を閉じたら覗きが死んだ。見せろの口は帳面も箱も持ってきたが、板の数だけで痩せて、最後の無茶は返却棚の横で木に戻った。

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