第67話 検収は見せない、検収RTA
予約入れて寝た。でも実際は夢の中で予約してた。。。
凍結日。今日は検収日。週一で固定した日が来た。固定した日ってのは強い。強いけど、強い日は狙われる。見せろの日になる。見せろが集まると椅子ができる。椅子ができると噂が座る。噂が座ると燃える。燃やさないために、検収は見せない。見せないけど数字は残す。数字は板(1行ログ)に残る。箱は喋らない。喋らない箱の中の数字だけが、領主の言葉になる。
レイナ、今日
検収日。開ける動作は見せない。開店前に完了。手順固定。束数前後。封印確認。異常は隔離。説明しない
了解
検収RTA。10分で終わらせる。観客席ゼロ
フィンが言う。
RTAって言葉、こっちにもあるのかよ
無い。俺が勝手に言ってるだけ
ミナが帳面を抱えて頷く。
観客席ゼロ、はすごく大事です。止まる理由が消えます
ゼフが鍵を二つ鳴らす。
開店前。鍵。中だけ
ユハが短く言う。
閉める
工房の扉を閉める。返却棚もまだ開けない。今日だけじゃない。検収日は毎回これ。毎回同じ。毎回同じは燃えない。毎回同じだと、相手の観察が空振りする。空振りが続くと相手は雑になる。雑は拾いやすい。拾うのは板、終わらせるのは距離。
工房奥、鍵の横。棚の下に月末箱。外から見えない位置。見えない箱は話題になりにくい。話題になりにくいと椅子が立たない。椅子が立たないなら噂は座れない。
ゼフが指で封印木片をなぞる。
穴三つ、紐、結び目、同じ。破れなし
ミナが即答する。
封印異常、なし
フィンがわざと囁く。
今の、検収の一番気持ちいいとこだよな。封印無傷確認
気持ちいいは続く。続くと手が止まらない。止まらないと口が減る。口が減ると燃えない。
手順は固定。まず板(1行ログ)に検収前の束数。次に箱を開ける。中の束を一回だけ数える。数えたらすぐ閉める。閉めたら検収後の束数。差分が出たら隔離。説明はしない。説明は舞台。舞台にしない。
レイナが短く言う。
順番。板→箱→束→票→板。声は最小
了解
ミナが板(1行ログ)を用意する。紙じゃない。板。紙は飛ぶ。板は固定。固定は燃えない。
ミナが言う。
検収前、束数は昨日の出口と一致してます。今週分の紐束は四つ
言い切らない。言い切ると後で言葉が生まれる。数字だけでいい。
じゃあ数で出す
ミナが板に一行。
検収前 月末箱 束4
ゼフが紐を解く。結び方は固定。ほどく動作も固定。ほどく時間も固定。固定は観察を腐らせる。
フィンが言う。
RTA、スタート押した?
押した。今からだ
ユハが短く言う。
静か
箱を開ける。中の束は四つ。紐一本、結び固定。見た瞬間に違和感が一つ。結び目が少し違う。ほんの少し。ほんの少しが燃える。ほんの少しは狙い目だ。狙い目はこっちも拾える。
ゼフが短く言う。
一つ、結び違う
ミナが息を吸う。
封印は無傷でしたよね
封印は無傷。だから中を触ったんじゃない。束の側で、受領票束を作る段階で混ぜようとした。外からは触れない。中に入る前で混ぜるしかない。混ぜたのは受領側か、運ぶ側か、貼り紙側の口か。どれでもいい。追わない。追うと燃える。拾うだけ。
レイナが短く言う。
異常束は隔離。中身は検収するが、結果は説明しない。差分が出なければ終わり。差分が出たら箱の中で紙(条件)
了解
異常束だけ、横に置く。机に置かない。机は舞台。箱の蓋の内側、見えない場所に寄せる。見えないのは燃えにくい。
残り三束を数える。三。異常束を含めて四。束数は変わらない。まず良い。束数が同じなら、外の噂は立ちにくい。
ミナが小声。
束数、同じ
同じなら終わりじゃない。次。票。
受領票は箱の内側の隅。仕切り。触るのは検収日だけ。今日だけ触る。触る回数を増やさない。
ミナが票束を取り出す。紐の色は変えてない。変えると覚えゲー。覚えゲーは燃える。一本紐、結び固定。日付順に寄せるだけ。並べすぎない。
フィンが言う。
この作業、地味に目が気持ちいいな
地味が勝ち筋。地味は続く
異常束から見る。結びが違う束の中身。受領票に一枚だけ、紙質が違うのが混ざってる。薄い。端が綺麗すぎる。現場の紙じゃない。現場の紙は端が荒れる。荒れない紙は外から来る。外の紙は燃える。燃えない場所に落とす。
ミナが即答する。
不明紙です。受領票の形式が違う。日付はあるけど札番号が空欄。束数も書いてない
ゼフが眉を寄せる。
穴一致も無し。紙に穴が無い
紙に穴は無い。穴は木札の話。紙は三行だけで守る。守らない紙は対象外。
レイナが短く言う。
不明紙は確認箱へ。受領票束から除外。束数は変えない。板ログは数だけ
了解
不明紙を確認箱へ。確認箱は午前夕方二回の隔離箱。既にある。新しい箱は増やさない。増やさないのが強い。
ミナが板(1行ログ)に一行だけ足す。
検収 不明紙1 確認箱 隔離
これで十分。内容は書かない。内容を書いた瞬間に紙が舞台になる。舞台にしない。
票束は残り正常。日付、束数、当番札番号。形式が揃ってる。揃ってると口が減る。口が減ると燃えない。
ゼフが言う。
束4、票束4週分。合う
ミナが頷く。
差分、なし
差分なし。終わり。終わりにする。終わりにしないと燃える。もう一度確認したくなる。確認の回数は燃える。だから終わり。
レイナが短く言う。
閉める。封印。板に検収後。開店
了解
ゼフが箱を閉めて封印木片を挟む。紐一周、結び固定、穴三つ。破れば跡が残る。跡が残ると嘘がつきにくい。嘘がつきにくいと燃えない。
ミナが板(1行ログ)に一行。
検収後 月末箱 束4
前後同じ。これが最強。最強だけど見せない。見せないから燃えない。
フィンが笑う。
RTA、何分?
九分。ギリ10分切り
ミナが小声で笑う。
凍結日の朝に、9分で終わる検収。綺麗です
ユハが短く言う。
終わり。開ける
返却棚を開ける。窓口も開ける。いつも通り。いつも通りが強い。いつも通りだと、外で椅子を作る口が空振りする。空振りが続くと相手は苛つく。苛つくと雑になる。雑を拾うのは板。
そして来た。開店直後、道の角に人が二人、三人、止まってる。止まる場所を作りたがる。止まると燃える。燃やさないために止まらせない。
フィンが小声で言う。
観客席作りに来たな
ミナが帳面を抱えて言う。
貼り紙もあります。検収見せろ、のやつ
剥がすな。対象外。導線で外す
レイナが短く言う。
観客席は作らせない。板を指す。検収は済。閲覧は窓口。以上。追加説明禁止
了解
工房手前の板は三行。昨日と同じ。変えない。変えないのが強い。
月末箱(受領票)
検収は週一
閲覧は窓口でのみ
これだけ。これ以上言わない。言えば舞台。舞台にしない。
止まってる連中が言う。
今日は検収の日だろ。箱を開けろ。見せろ
見せない。閲覧は窓口でのみ
隠してるだろ。横流しだ
横流しは証拠が必要です。窓口でのみ
男が一歩前に出る。左肩じゃない。左肩の匂いのする代役。声だけが大きい。大きい声は燃える。燃やさないために、こちらは小さい声で板を指す。
フィンが軽口で刺す。
見せろって言うほど、見せないって板に書いてあるの読めてなくて笑うんだけど
代役が睨む。
舐めてんのか
舐めてない。板だ。板を読む
ユハが短く言う。
止まるな
ユハは立つ。線を作る。跨がせない線じゃない。止まる理由を消す線。通る人は通る。止まる人は止まれない。止まれないなら椅子は立たない。
ここで子供便が通る。子供は止まらない。止まらない子供は燃えにくい。子供が言う。
おじさんたち、邪魔ー
代役が反射で言い返しそうになる。言い返すと悪者になる。悪者になると損する。損するから黙る。黙った瞬間、勝ちが確定する。勝ちは追わない。距離。
ミナが淡々と言う。
邪魔にならないように、流れてください。閲覧は窓口でのみ
同文。同文が効く。効くほど相手は苛つく。苛つくほど雑になる。雑を拾うのは次の紙。
窓口に紙が落ちる。不明札箱に落ちる。今日は質問じゃない。煽りの紙だ。煽りは燃える。燃えない場所に落とす。
ミナが取り出して、読まずに言う。
不明紙、隔離します
読むな
読みません
確認箱へ落とす。板(1行ログ)に数だけ。
時刻 不明紙1 確認箱 隔離
数だけ。数だけなら燃えない。
午前が回る。返却棚が回る。端材束ね箱も回る。出口は夕方一回。受領も夕方のみ。ここまで固定。固定は燃えない。燃えないと、ほのぼのが増える。ほのぼのは余裕から生まれる。余裕は固定から生まれる。
フィンが言う。
検収見せろ勢、あっさり引いたな
引くしかない。見せないのが固定だから
ミナが頷く。
見せない、がルールじゃなくて運用になりました。板があるからです
レイナが短く言う。
板があるから口が減る。口が減るから燃えない。燃えないから進む
昼、領主が来た。今日は検収日。噂の椅子が立ちそうな日。領主は数字で潰す。潰すっていうより痩せさせる。
領主が言う。
検収は済んだか
済みました。開店前に。束数前後、同じです
領主が眉を上げる。
見せたのか
見せてません。板に前後数だけです
それでいい。見せると舞台だ
分かってる。こいつは分かる。分かる相手が上にいると燃えにくい。燃えにくいと現場が楽だ。口が減る楽。燃えない楽。
ミナが板(1行ログ)を差し出す。
検収前 束4
検収後 束4
不明紙1 隔離
領主が短く頷く。
差分はない。よし。不明紙は
隔離です。内容は記録してません
記録するな。噂に餌をやるな
はい
フィンが小声で言う。
領主、分かりが良すぎて怖いな
数字が好きなだけだ。数字は味方になる
領主が周りを見て言う。
見せろの連中がまだいる
いますが止まってません。導線で外してます
領主が言う。
よし。貼り紙はどうだ
剥がしてません。対象外です
正しい。剥がすと正規になる
ここも理解してる。理解があると暴力が要らない。暴力が要らないと燃えない。燃えないのが勝ち。
ここで代役が領主に近づこうとした。近づけば舞台だ。舞台にしないために、ユハが一歩だけ位置をずらす。塞ぐんじゃない。迷わせる。迷ったら相手は引く。引けば距離。
ユハが短く言う。
窓口
代役が一瞬止まって、窓口を見る。窓口には板がある。板がある窓口は強い。強い窓口は噛みつけない。
代役が吐き捨てる。
隠してるだけだ
領主が言う。
証拠を出せ。出せないなら黙れ
代役は黙る。黙ったら終わり。終わりにする。追わない。
午後、補修班から連絡。受領は夕方のみ、が効いてる。昼に来た偽当番が空振りして帰ったらしい。空振りは腐る。腐った口は、次に別の椅子を作ろうとする。だが椅子は立たない。箱と板で床が滑る。
ゼフが言う。
偽、空振り。穴真似、意味なし
ミナが小さく笑う。
意味なし、が積み上がると静かに勝てます
レイナが短く言う。
空振りを積む。積んだ相手は手が荒れる。荒れた紙を確認箱で吸う。距離
夕方、出口一回。受領夕方のみ。固定を守る。守ると観察が腐る。腐ると雑になる。雑は拾いやすい。
ミナが板(1行ログ)。
時刻 端材出口 補修班 束数
補修班側も同じ。束数だけ。値段を生まない。値段が無いと噂が座れない。
補修班の若い衆が言う。
夕方だけ、楽じゃないけど揉めない。分かった
揉めない方が得だ
若い衆が頷く。
得だな。うん
確認箱。午前夕方二回。今日は検収日で相手が紙を増やす日。増やした紙は吸うだけ。
箱の中は八。貼り紙の切れ端、煽り紙、偽受領票のコピーっぽい紙。どれも舞台の材料。材料は箱に入れれば木になる。木は喋らない。
ミナが言う。
不明紙、3。隔離
板(1行ログ)。
時刻 不明紙3 確認箱 隔離
内容は書かない。数だけ。数だけなら燃えない。
夜、工房の空気が一段軽かった。検収を見せなかった。それだけで椅子が立たなかった。椅子が立たないと噂が座れない。噂が座れないと仕事が回る。仕事が回ると、拠点工房の棚が静かに増える。増えるのは物じゃない。余裕だ。
フィンが言う。
検収、見せろ勢に見せずに勝つの、気持ちいいな
見せないで勝つのが一番燃えない
ミナが頷く。
板と箱だけで終わるのが、いちばん綺麗です
ゼフがぽつり。
封印、無傷。束、同じ。最高
ユハが短く言う。
距離
レイナが短く言う。
次。検収後にやることは増やさない。だが一つだけ進める。拠点工房の内張り枠、完成に寄せる。端材出口は維持。相手は次、数字で揺らす。揺らしは板で拾う
了解
俺は板に一行だけ残した。
検収を見せなかったら、見せろの椅子が立たなかった。箱が喋らない世界では、見せろの口ほど静かに距離がつく。




