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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: 検証中


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65/69

第65話 受け取り口は一つ、受け取り言葉も一つ

朝、凍結日でいい。昨日、端材の出口を作った日だ。出口を作った翌日は、運用を固める日になる。固める日は静かで、静かな日は観察が空振りする。空振りした観察は、最後に無茶をする。無茶を拾うのは板で、終わらせるのは距離。

レイナ、今日

凍結日。補修班側の受け取り板を同文化。受領の紙は最小。束数だけ。番号と穴で一致。外の対象外板も短文化。新しい箱は増やさない。確認箱は午前夕方二回

了解


フィンが欠伸しながら言う。

凍結日なのにやること多くね

多く見えるだけ。板二枚。紙一枚。箱は増えない

ミナが帳面を抱えて頷く。

板二枚なら燃えません。言葉が増えないからです

ゼフが当番札箱を指で弾く。

札は増やさない

ユハが短く言う。

増やさない。固定


補修班の工房は、街の端の方にある。うちの拠点ほど整ってないけど、道具が多い。道具が多い場所は口が増えやすい。口が増えると、端材の出口が勝手に増える。出口が増えると欲しいが増える。欲しいが増えると燃える。燃やさないために、受け取り口を一つに固定し、受け取り言葉も一つにする。


歩きながらレイナが短く言う。

敵は受け取り口で燃やす。受け取り側は弱い。弱いから口が出る。口が出る前に板

了解


補修班の工房に着くと、親方が腕組みして待ってた。ブラント経由で話が回ってるんだろう。親方が言う。

昨日の端材、助かった。でもな、うちの連中が言うんだよ。端材ってことは余りだろ。余りが毎日来たら、勝手に持って帰るやつが出るって

出る。出るのが普通。普通を燃やさない形にする

親方が眉を上げる。

燃やさないって、何の話だ

揉めないって意味だ。揉めないなら仕事が回る

親方が笑った。

現場の言葉に直してくれ。揉めない。いいな


ミナがすぐ板を出す。板は口を減らす。口が減れば揉めない。

受け取り口はここだけ

端材は束数のみ受領

持ち帰りは窓口相談

三行。三行が短い。短いと読んで終わる。読んで終わると止まらない。止まらなければ噂が座れない。


親方が板を見て言う。

束数だけってのは分かる。だが窓口相談ってどこだ

窓口はうち。補修班側に窓口は作らない。作ると列ができる

フィンが軽口を入れる。

列ができると、だいたい揉めるんだよ。人間は列で強くなるからな

親方が鼻で笑う。

強くなるってか、口が悪くなる

そう。口が悪くなる前に箱に落とす


ゼフが受け取り口の位置を決める。工房奥、出入口から見えにくい場所。見えにくいと欲しい口が寄らない。寄らないなら勝ち。

ゼフが短く言う。

奥。鍵横。外から見えない

親方が言う。

奥に置くと運ぶの面倒だろ

面倒が燃えない。楽は燃える

フィンが笑う。

楽は燃える、は名言だな。便利箱の時もそうだったし

ミナが真面目に言う。

楽は説明が増えます。説明は燃えます

親方が肩をすくめた。

分かった。奥だ


受け取り口に箱を一つ置く。新しい箱じゃない。補修班の中で使ってない木箱を流用。外に大きく字は書かない。印は内側の穴だけ。うちと同じ。穴の数で役が分かる。口で説明しなくて済む。

レイナが短く言う。

穴は共通化。束ね箱二穴。出口箱一穴。受け取り箱一穴。混ぜない

了解


次は紙(条件)だ。紙は増やしたくない。でも受領の証拠が無いと、後で口が増える。口が増えると燃える。だから紙は最小で一枚だけ。束数だけ。誰が持ってきたかは当番札の番号で十分。番号と穴で一致させる。

ミナが小さな紙片を出して言う。

受領票、これでいいですか

日付

束数

当番札番号

以上。三行だけ。署名も不要。署名があると偽名が生まれる。偽名が生まれると燃える。

親方が言う。

署名いらんのか

署名が無い方が揉めない。番号は嘘をつきにくい

親方が紙を見て頷く。

番号ね。分かった。番号なら俺も好きだ


ユハが短く言う。

受領票は箱へ

そう。紙は箱に入れる。机に置くと口が寄る。箱に入れると喋れない。喋れないと燃えない。

受領票箱も新しくは作らない。受け取り箱の内側に小さい仕切りを入れて、紙だけ入る隅を作る。それで十分。


作業は終わった。板一枚、箱一つ、紙一つ。凍結日でもちゃんと進んだ。進みすぎないのが大事。進みすぎると欲が出る。欲は燃える。


帰り道でフィンが言う。

これで端材の受け取り、揉めにくくなったな

揉めにくい、じゃ足りない。揉めない形にする

ミナが頷く。

揉めない形は、同じ文が並ぶことです

同文。そう。工房側と補修班側で板の文が違うと、そこが口になる。口は燃える。燃やさないために同文。


拠点に戻ると、返却棚は回っていた。表示板も動いてない。穴と釘は強い。強い仕組みは静かだ。

ゼフが棚を見て言う。

差し替え、無理

無理だと分かると、相手は外で舞台を作る。外の箱。外の板。外の声。外は弱い。弱いから燃えやすい。でも燃やさない。


その兆しはすぐ来た。子供便が走ってきた。今日は息が荒い。息が荒い日は外に椅子がある。

子供が言う。

工房の前に板がある。端材は無料って。持ち帰り自由って。人が止まってる

無料。持ち帰り自由。椅子の脚が太い言葉だ。止まる。止まると燃える。燃やさないために、怒らない。責めない。対象外にして導線を外す。


レイナが短く言う。

外板。次は板で燃やす。燃えない返し。短文化。対象外。欲しいは箱へ

了解


工房前に行く。走らない。走ると舞台が立つ。舞台にしない。

工房の道の角に板が立っていた。大きい字で。

端材無料

持ち帰り自由

早い者勝ち

早い者勝ち。これが一番燃える。争いの合図だ。争いが始まると止めるために声が増える。声が増えると噂が座る。座った噂は長い。長い噂は損。損は嫌だ。


俺は板を見ない。見て言い返すと会話になる。会話は燃える。燃やさないために、こちらの板だけ出す。

ミナ、窓口横板に一行、工房手前板に一行

ミナが即答する。

書きます


窓口横板は短く。

端材は工房内のみ(外の無料板は対象外)

工房手前板も短く。

外の板に止まらない

端材は束ね箱へ

欲しいは不明札箱へ

三行。これ以上増やさない。増やすと読む時間が増える。読む時間が増えると止まる。止まると燃える。燃えないために短い。


ユハが無言で立つ。線を作る。跨がせない線じゃない。止まる理由を消す線。

フィンが軽口で人を動かす。

早い者勝ちって書いてあると、急に遅くなるんだよな。みんな止まって読むから

婆さんが言う。

無料なら欲しいけどねえ

欲しいは悪くない。でも欲しいを外でやると燃える。中に落とす

ミナが淡々と言う。

端材は束ね箱へ。必要なら窓口で相談です。外の板は対象外

婆さんが頷く。

じゃあ相談ね

それでいい。相談は窓口で板が受ける。口が受けない。口が受けると燃える。


問題は、外板が立ってること自体じゃない。立ってても誰も止まらなければ木だ。木は喋らない。喋らないなら舞台は育たない。

止まってる人を減らす。減らすのは子供便。

子供、お願い

子供が言う。

なに

板見てねって言って回って。怒らない。案内だけ

子供が頷く。

わかった。板見てねーって言う


子供の声は軽い。軽い声は燃えにくい。燃えにくい声で導線が戻る。戻れば外板はただの木になる。


外板の周りが静かに痩せた。痩せた瞬間、左肩が見えた。遠い位置。わざと見える。見て欲しい。会話を始めたい。会話は燃える。燃やさないために見ない。

フィンが小声で言う。

いるな

いる。いるだけ。触れない。触れないなら距離

レイナが短く言う。

次は受領で割る。無料で釣れないなら、補修班の受領で揉ませる。受領票を狙う。紙は箱に入れろ

了解


戻る。戻る時に外板は触らない。触ると舞台。舞台にしない。導線から外せば勝ちだ。


午後、補修班から使者が来た。親方じゃない。若い衆。顔が固い。固い顔は燃える前兆だ。

若い衆が言う。

親方が言ってた受領口のことなんだけどよ、さっき変なやつが来た。端材を受け取りに来たって。うちの札を持ってるって

札を持ってる?

ゼフが眉を寄せた。

札は増やしてない

若い衆が言う。

札っていうか、木札みたいなのを見せた。番号もあるって

番号。番号があるなら偽りやすい。だから穴も使う。穴は真似しにくい。真似しにくいなら燃えない。

レイナが即答する。

偽当番。番号だけの札は偽れる。穴位置で切れ。補修班側の板に追加一行。穴が合わない札は対象外。受領しない

了解


ミナがすぐ板を作る。補修班側の受け取り板に一行追加だ。三行を四行にしたくない。でもここは追加が一番燃えない。燃えないように一行を差し替える。文を増やすんじゃなく、文を置き換える。

受け取り口はここだけ

束数のみ受領(番号+穴一致)

穴が合わない札は対象外

持ち帰りは窓口相談

四行。でも一行あたりは短い。短いなら止まらない。止まらないなら燃えない。


フィンが言う。

穴が合わない札ってなんだよ、って聞かれそうだな

聞かれたら同文で返す。説明しない。実物を見せない

ユハが短く言う。

見せない

見せない。見せると真似が始まる。真似が始まると追いかけっこ。追いかけっこは燃える。


若い衆が頷く。

分かった。穴だな。穴見せろって言われたらどうする

見せない。板を指す。以上

若い衆が笑った。

強いな、それ


補修班側の板差し替えは、今日の進捗一つを超える。でもこれは火消しじゃない。火を作らせないための最小だ。最小なら燃えない。欲は出さない。


ここで、ブラントが顔を出す。顔が真面目だ。商談じゃない。情報だ。

領主が動いた。今日の外板、耳に入ったらしい

領主が?

噂が嫌いだからな。噂の椅子が立つと潰しに来る。だが潰し方を間違えると燃える

燃やさない。壊さない。対象外で距離

ブラントが頷く。

それを領主にも分からせろ。数字で


数字。領主は数字が好きだ。数字で示すなら、こちらの強みは板(1行ログ)だ。板は燃えない証拠になる。証拠があると、力を使う必要がない。力を使うと燃える。燃やさない。


夕方前、領主が来た。護衛は少ない。現場を見に来る。現場が動いてるかを見に来る。動いてる現場は噂に勝つ。

領主が言う。

端材無料の板が立ったと聞いた

立ちました。対象外。触ってません。導線で外しました

領主が眉を上げる。

触ってないのか。なぜ

触ると正規になります。正規にしない。止まらせない方が早い

ミナが帳面を開いて、短く数字だけ出す。

端材束ね箱稼働。出口は夕方一回。補修班受領は束数のみ。受領票は日付・束数・当番番号だけ。確認箱は午前夕方二回、同文

領主が頷く。

良い。だが偽当番が出たと聞いた

出ました。穴一致で切ります。穴が合わない札は対象外

領主が短く笑う。

穴。お前、穴が好きだな

穴は喋らないから好きです

レイナが短く言う。

穴は形の条件。紙より燃えない

領主が板を見て言う。

板が短いのは良い。だが四行になったぞ

必要最小です。これ以上は増やしません。増やすと止まります

領主が頷いた。

止まらせるな。それが一番だ


領主は外板を見に行く素振りを見せたが、行かなかった。行くと舞台になるのを理解した顔だ。理解してくれると現場は楽だ。楽は燃えると言ったけど、ここで言う楽は違う。口が減る楽だ。口が減る楽は燃えない。


夕方、補修班への端材出口を回す。今日は凍結日だから、出口は同じ一回。昨日と同じ。変えない。変えると観察される。観察されると相手が賢くなる。賢くなると燃える。燃やさないために、相手を賢くしない。

ゼフが当番札を持って出口箱を開ける。束数を数える。数えるだけ。説明しない。値段を生まない。

ミナが板(1行ログ)に一行だけ。

時刻 端材出口 補修班 束数

これだけ。これで領主にも示せる。燃えない。


補修班の若い衆が受け取りに来る。今日は板の四行を指して、何も言わない。言わないのが強い。言わないと口が育たない。育たない口は燃えない。

若い衆が言う。

穴、一致。受領票、書いた。箱に入れた

それでいい。以上


確認箱を開ける。午前夕方二回。ここだけは守る。守ると相手の観察が空振りする。空振りが続くと相手は紙で喋らせようとする。喋らない。

確認箱の中は六。偽紙が二、偽札が一、紙切れが二、木片が一。紙切れの片方にはこう書いてあった。

補修班が横流ししてる

もう片方にはこう書いてある。

無料にしないと街は回らない

燃える言葉を二つ並べた。横流しと無料。どっちも口を増やす。口が増えると燃える。燃やさない。

ミナが淡々と言う。

内容は記録しません。隔離です

フィンが言う。

横流しって言葉、強いな。燃やしに来てる

燃えない。数字がある。束数と受領票が箱にある。穴一致もある

レイナが短く言う。

返答しない。横流しは証拠が必要。証拠は箱の中。箱の外の紙は対象外。距離

領主が一瞬だけ紙を見て、すぐ視線を外した。

噂は嫌いだ。証拠で言え

証拠は箱の中です。受領票は束数だけ。穴一致。板(1行ログ)もあります

領主が頷く。

良い。噂は潰すな。痩せさせろ。お前はそれが得意だ


ミナが板に数だけ書く。

確認箱 受領6

一行ログも短く。

時刻 不明紙2 確認箱 隔離

内容は書かない。書くと紙が舞台になる。舞台にしないために、数だけ。


夜、工房の床は昨日よりさらに綺麗だった。束ね箱に入れる動作が手に馴染んでる。馴染むと迷いが減る。迷いが減ると声が減る。声が減ると、ほのぼのが増える。

フィンが帰り際に言う。

横流しとか無料とか、燃えそうな紙が増えてきたな

増えるほど効いてる。効いてるから焦ってる

ユハが短く言う。

焦り、拾う

ゼフがぽつりと言う。

穴で切った。気持ちいい

ミナが小さく笑う。

気持ちいいのが続くと、読み手も安心します

レイナが短く言う。

次は補修班側の受領票を一枚束ねて月末箱へ。だが進捗は一つ。明日は凍結で良い。外板は触らない。触らせない。距離

了解


俺は板に一行だけ残した。

無料と横流しの紙は来たが、受け取り口が一つなら燃えない。箱が喋らない限り、噂は座れない。

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