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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: てへろっぱ


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第52話 切れ込み板と、写し無効の朝

朝、返却棚の段を見た。上段 今日返却が少し余ってる。中段 明日返却が揃ってる。下段 遅延札がほぼ消えてる。数字が整うと、今度は紙じゃなく板が狙われる。板は記録であり、空気の根拠だ。根拠を偽られると噂が太る。だから今日から板にも印を入れる。

レイナ、今日

切れ込み板本採用。写しは切れ込み必須。切れ込み具は内側固定。返却回転UP継続。監査箱返答は同文。対象外は触れたら距離

了解


ゼフが机に木具を置いた。昨日の穴具より地味だ。板の端に小さく噛ませて、V字の切れ込みを入れるだけの具。見た目は工作。中身は世界の境界線。

ゼフ

位置は

角から指二本。深さは爪の半分。Vの角度は固定。ズレたら無効

フィンが覗き込む。

また変な基準増えたな。爪の半分って何だよ

手元で再現できる基準が一番強い。誰でも同じになれる

ミナが帳面を閉じる。

公開条件紙には書きませんよね

書かない。書くと真似される。でも現場が騙されないための最低限は要る。だから箱で吸って板で返す形にする


公開に出すのは一行だけだ。詳細は出さない。見分けはできる、真似はできない、が理想。

ミナが短い紙を貼った。三行。

週次板写しは端に切れ込みあり

切れ込みなしは写し無効(窓口で確認)

不安は監査箱へ

これで十分。これ以上書くと燃える。


板写し束を作る時間。昨日までは紐固定だけだったが、今日から切れ込みが入る。切れ込みは、偽造の抑止だけじゃない。写しが正規だって安心を渡す。安心は噂の餌にならない。

レイナ

切れ込みの流れ

板写しは全束に切れ込み。切れ込み入れ担当を固定。具は机の内側。具の持ち出し禁止。切れ込み済み板は札で束管理

了解


担当固定ってのが大事だ。担当が増えると具が外に漏れる。具が外に漏れると真似される。真似されると、また変えたくなる。変えると迷う。迷いが燃える。だから変えないために固定する。

ゼフが切れ込みを入れていく。作業が速い。音が一定。一定ってだけで安心する。現場はこういう小さな一定で静かになる。

フィンが笑う。

この世界、音フェチだよな

一定の音は燃えない

ユハが短く言う。

静か

静かが勝ち筋


午前の返却は、返却レーンが勝手に回した。箱三つの向きが人を動かす。矢印はいらない。言葉もいらない。箱の尻が強い。返却が流れると、貸し出しが止まらない。止まらないと口が減る。口が減ると噂が座れない。

ブラントが窓口横で言う。

板の切れ込み、商談でも効くぞ。真偽が一目だ。疑いの口が減る

疑いの口が減るのが目的だ。疑いが増えると監査になる。監査は燃える

ミナが頷く。

疑いを消すには説明じゃなく形ですね

形は箱と札と切れ込み。紙は短く


ここで、写し無効の朝が来た。噂は人から来ない。紙片から来る。昨日隔離箱に沈めた紙片は腐らせたはずだが、腐る前に誰かが写して外へ持ち出してる可能性はある。可能性があるなら、今日の切れ込みが刺さる。

窓口の前に、一枚の板が置かれた。週次板っぽい。数字が書いてある。だが字が雑で、線が太い。そして端に切れ込みがない。

フィンが眉をひそめる。

うわ、来た。偽板

偽板は燃えやすい。だから最初に言葉を出さない。手順を出す。

レイナ

処理

写し無効。検査棚へ。触った人は責めない。板で単語。正規写しを一枚だけ見せて終わり

了解


ミナが淡々と動いた。偽板を持ち上げて、検査棚に置く。誰も怒鳴らない。怒鳴ると偽板が舞台になる。舞台にしない。

ミナが内側の板に一行。

時刻 板写し 切れ込みなし 無効

それだけ。

置いてきた男が言う。

これ、回ってる。贔屓って書いてある

贔屓って単語が出た時点で燃える可能性が上がる。でも燃やさない。単語は箱で吸う。本文は箱に入れない。今は板で返す。

ミナが短く言う。

それは写し無効です。正規写しは切れ込みがあります。確認しますか

男が言う。

確認する

ミナが正規写しを一枚だけ見せた。切れ込みがある。位置も深さも一定。見せるのは一瞬。見せすぎない。見せすぎると真似が始まる。

男が黙って頷いた。黙ったなら勝ち。黙った現場は燃えない。


フィンが小声で言う。

左肩か?

分からない。分からないなら燃やさない。ただ、偽板が出たって事実だけ拾う。拾ったら距離が作れる

距離って板にも効く

効く。板が外へ出る距離を増やす。写し束の管理をきつくする。束に札を付ける。札がない写しは無効にする


ゼフがすぐ理解した顔をした。

束札、作る

作る。番号じゃなく色でもいい。だが色は偽造される。番号は偽造される。だから番号と切れ込みの二段にする。二段にすると燃えない。片方を真似されても片方が残る

レイナが即答する。

束札は返却式。写し束は提出導線のみ。持ち出し禁止。写し単品は窓口確認の上で渡す。外へ出る枚数を固定

了解


外へ出る枚数を固定するってのが、距離だ。出すなじゃない。出る数を減らす。減らすと、偽板が混ざる余地が減る。余地が減ると噂が座れない。

ミナが短い紙をもう一枚だけ内側に貼った。公開じゃない。現場用。

板写しは束札つきのみ

束札なしは無効

確認は窓口

これで現場の迷いが消える。


昼前、監査役がまた来た。昨日の監査の続きじゃない。別の人間。今度はギルドの書記より現場寄りの顔。靴が汚れてる。手も荒い。現場の人間は燃えにくい。話が短くできるから。

監査役2が言う。

板の写しが回って揉めてる。贔屓だって

揉めてるなら、板で終わらせる。短く。

正規写しは切れ込みあり。束札あり。条件は同じ。贔屓は札返却式で防止。件数は監査箱で受ける

監査役2が言う。

切れ込み、見せてくれ

見せるのは正規写しだけ。具は見せない。

ミナが一枚見せる。切れ込み。束札。位置固定。

監査役2が頷く。

これなら現場は分かる。偽板は切れるな

切る。燃やさず切る。対象外と同じ。板で拾って距離で終わらせる

監査役2が言う。

贔屓の噂は

噂は箱に吸う。本文は外に出さない。件数だけ週次板に返す

監査役2が笑った。

お前ら、箱好きだな

箱は喋らないからな。喋らないのが一番公平だ


監査役2が去る直前、左肩が現れた。こういう場面に合わせるのが上手い。だが今日は舞台を用意しない。舞台は言葉だ。言葉は短く切る。

左肩は偽板と同じ字の癖の紙を持っていた。板じゃなく紙。監査箱に入れたいらしい。だが紙は本文が長い。本文は燃える。

左肩が言う。

贔屓だ。順番がズレてる。証拠もある

証拠は板で見分ける。証拠の形がないなら証拠じゃない。

ミナが即答する。

監査箱は単語と丸だけ。本文は隔離箱。証拠は正規写しの形で確認します

左肩が一瞬だけ目を細める。ここで怒鳴らせたいのに、怒鳴っても何も起きない。

フィンが軽口で刺す。

証拠って言葉、便利だよな。でも形がないとただの口だぞ

左肩が紙を差し出す。本文がぎっしり。しかも板写しっぽい数字が混ざってる。ここで揉めると燃える。揉めないために、切り離し箱を使う。

ミナが言う。

丸だけ付けてください。本文は切ります

左肩が言う。

切るな

切る。条件は全員同じ。監査だから特別にしない。特別は贔屓だ

ユハが短く言う。

同じ

左肩が詰まる。詰まったら勝ち。詰まったら台本が止まる。止まった台本は燃えない。


左肩は仕方なく、単語に丸を付けた。本文は隔離箱へ。丸紙は監査箱へ。監査役2の前で淡々と終わる。終わりは燃えない。

レイナ

拾う

丸紙提出。本文拒否の反応。板は単語。距離は写し束固定で増える

了解


ミナが板に一行。

時刻 監査箱 丸紙 受領

それだけ。左肩の名前は書かない。書けば燃える。燃えないために、相手を空気に戻す。空気に戻った相手は痩せる。


午後、拠点工房の作業に戻る。今日は動かさない時間を混ぜる日。貸出を増やさない。返却回転だけ上げる。返却が回れば数字が綺麗になる。数字が綺麗になれば、偽板の数字が浮く。浮けば勝手に腐る。

ゼフが束札を作り始めた。木札に小さい切れ込みも入れる。板の切れ込みと同じ位置。札にも同じ癖を付ける。癖が揃うと真似が難しい。難しいと噂が痩せる。

フィンが笑う。

癖を揃えるって、なんか職人っぽいこと言ってる

運用は職人だ。うまくいくと誰も気づかない

ミナが頷く。

気づかれない改善が一番強いです

ブラントが工房の棚を見て言う。

棚の角、当て木が増えたな

箱が長持ちする。長持ちすると返却が揃う。揃うと枠が増える。増えると口が減る。口が減ると噂が死ぬ

フィンが肩をすくめる。

結局、噂殺しの話に戻るのな

戻る。戻るってことは芯がぶれてないってことだ


ここで、ほのぼのを一つ挟む。ミナが工房の隅に小さい棚を作って、茶葉を置いた。現場の水分は、燃えないために必要だ。喉が渇くと口が荒れる。口が荒れると噂が荒れる。

ミナが言う。

休憩、短く取ります。喉を潤すだけ

フィンが嬉しそうに言う。

お、茶だ。文明

ゼフが不思議そうに言う。

茶、番号つけないの

つけない。飲むだけのものに番号を付けると人生が燃える

ユハが短く言う。

笑う

笑うと燃えない。笑いは噂を薄める。


夕方、提出導線。週次板写し束は束札つき。端切れ込みつき。紐固定。二人運搬。これで外へ出る写しは「正規の形」になる。正規の形が外に出れば、偽板は勝手に無効になる。無効にするために戦わない。無効は箱の仕事だ。

領主からの使者が板写し束を受け取って言う。

領主様、板の端が欠けていると

欠けじゃない。印だ。写しの真偽の印。偽造を燃やさず切る

使者が頷く。

領主様は数字が好きだ。数字が守られるなら良いと言うだろう

数字が守られれば噂が死ぬ。噂が死ねば許可が伸びる。許可が伸びればまた監査が来る。監査が来ても燃やさない。今日の形で通す。


夜、夜便箱の回収。件数はいつも通り。遅延札は少ない。監査箱の丸紙は増えたが、増えたのは「監査が回ってる」証拠で、燃えてる証拠じゃない。燃えてないなら勝ち。

レイナが即答する。

明日は写し束札を全導線に拡大。切れ込み具は固定。偽板が増えるなら増えるほど無効が効く。左肩は舞台を失い続ける。次は箱の差し替えを狙う。箱は床固定で距離

俺は板に一行だけ残した。

切れ込みが入った日、偽板はただの木になった。

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