第35話 返却は仕組み、数字は武器
朝、レイナが言った
今日はルールを固める日
固めたら燃えない
燃えないなら速い
速いなら次が取れる
板を見る
袋の運用で返却ルールを固める
内張り板セットの炉差分を数字化
雑便ルートを回して動きを埋める
対象外にした男の次の動きは板で拾う
板セットの許可範囲を決める
フィンが腕を組む
返却ルールって
もう紙あるじゃん
レイナが即答する
紙は条件
運用は癖
癖に落ちたら勝ち
今日は癖にする
ギルドの小部屋に三者の担当だけ呼ぶ
領主倉庫の担当
ギルド運搬係の代表
錬金屋の弟子
店主本人は呼ばない
呼ぶと火が増える
ミナが紙を机に置く
許可販売条件
返却の手順
預り金の取り扱い
短い
でも逃げ道がない
レイナが言う
返却は三つだけにする
期限
場所
確認
増やすと忘れる
忘れると燃える
俺が指で三つを叩く
期限は七日
返却場所はギルド受付
確認は番号と焼印の照合だけ
中身確認しない
中身確認すると揉める
揉めると燃える
ギルド運搬係の代表が頷く
七日はちょうどいい
長いと管理が緩む
短いと仕事が詰まる
レイナ
その感覚が正解
長いは緩む
緩むと盗まれる
盗まれると火
錬金屋の弟子が手を挙げる
袋、工房で使うと煤が付く
返却のたびに揉めないですか
レイナが淡々と言う
揉めない
汚れは許容
破れは不可
破れだけ弁償
汚れで揉めると返らない
返らないと回らない
領主倉庫の担当が言う
番号照合って
偽造されたらどうする
ここでレイナが一段声を冷やす
偽造される前提で作る
焼印だけじゃ足りない
だから微差
木札の穴の位置
端の切り欠き
触って分かる
紙には書かない
書くと増える
ゼフが机に木札を置いた
同じに見える
でも角の一つだけ、ほんの僅かに落としてある
番号は見える
でも“正しい角”は覚えてないと作れない
レイナ
覚えてるのはギルドと倉庫と店だけ
だから偽造は割に合わない
割に合わないと人はやらない
ミナが帳面の欄を一つ増やそうとして手を止めた
レイナがすぐ言う
増やすな
帳面は一枚
例外は別紙
別紙はギルド保管
手元に残すな
残すと燃える
ミナが頷いて、欄は増やさなかった
代わりに、ギルド保管の封筒を一つ作った
例外記録封筒
開けるのはユハと鑑定師だけ
こういう重さは必要な所にだけ置く
レイナ
重要物は重く
消耗品は軽く
区別できたら勝ち
返却ルールはこれで癖になる
期限七日
受付返却
番号照合
破れのみ弁償
汚れは許容
偽造対策は微差で
紙に書かない
次は数字
錬金屋へ行く
炉の内張り板の差分を数字化する
数字化すると、議論が終わる
議論が終わると燃えない
職人がもう準備していた
紙が二枚
内張り無しの週
内張り有りの週
比較が並んでる
項目は四つだけ
失敗回数
作業時間
匂いの刺さり(自己申告)
弟子の休憩回数
レイナが言う
四つで十分
足すと誤魔化せる
誤魔化せると燃える
職人が指で示す
失敗回数
無し:七
有り:二
作業時間
無し:一日平均が少し長い
有り:短い
匂いの刺さり
無し:頭が熱くなる
有り:熱くならない
弟子の休憩
無し:多い
有り:少ない
店主が横で黙って見ている
黙ってるのが一番いい
黙って数字を見る商人は、燃えない
レイナ
数字は武器
武器は振り回さない
置くだけで相手が倒れる
俺は店主に言う
炉用内張り板セットは許可範囲を広げる
ただし条件は同じ
記録提出
番号管理
返却
紛失は次回不可
店主が言う
どこまで広げる
レイナが即答する
三段階
第一段階:優先枠の工房だけ
第二段階:領主が許可した工房
第三段階:ギルド監督下の共同工房
今は第一段階
第二段階は街が静かになってから
第三段階は噂が死んでから
店主がため息をつく
遠いな
レイナ
遠い方が儲かる
近い儲けは燃えて消える
遠い儲けは残る
残った儲けは加速に変わる
職人が頷いた
順番でいい
工房が安定したら
俺が他所にも教えられる
教えるのは最後でいい
数字を持ち帰る
これで領主に説明ができる
説明が短くなる
短い説明は燃えない
昼、雑便ルートを回す
市場から倉庫へ普通の荷物
工具箱
布束
縄
何でもいい
匂いも価値もない
でも回数が多い
ギルド運搬係の代表が笑う
こんなに運ぶのか
レイナ
運ぶほど埋もれる
埋もれるほど守れる
守れたら特別を一回だけ混ぜられる
一回が生きる
雑便は三回回した
同じ時間
同じ道
同じ顔
それだけで“動き”が日常になる
日常は噂にならない
その間に板を見る
宿通りの板
倉庫裏の板
ギルド前の板
短い一行を拾う
そして出た
ギルド前
左肩が擦れた男
朝に一度現れる
紙を見る
すぐ消える
昼にもう一度現れる
運搬係を目で追う
近づかない
話しかけない
フィンが言う
まだ嗅いでるな
こっちの動きを
レイナ
嗅いでるなら
嗅げない量で潰す
雑便を増やす
本命を一回にまとめる
まとめた本命は袋で隠す
隠せば相手の嗅覚は飢える
飢えた嗅覚は失敗する
俺はユハに短く伝える
男は今日も様子見
触ってこない
でも目が速い
倉庫には近づけないままでいい
近づけない仕事だけ回す
ユハが頷いた
無理に捕まえるな
捕まえると騒ぎになる
騒ぎは損だ
レイナ
その判断が最強
捕まえるより
仕事に吸い込んで
干からびさせる
午後、袋の返却を一度だけ試す
ギルド運搬係の代表が、わざと袋を一枚返しに来る
期限前
受付で返却
番号照合
焼印確認
微差確認
預り金の返却
割引の記録
流れは一分で終わった
速い
速いのが勝ち
レイナ
一分が偉い
五分になると面倒
面倒は返却を殺す
返却が死ぬと燃える
ミナが言う
返却済みの袋は
どこに置きますか
レイナ
返却棚
用途色ごとに箱
箱の蓋は閉める
開けっぱなしは触られる
触られると混ざる
混ざると事故る
ゼフがすぐ返却棚用の箱を持ってきた
灰箱
茶箱
黒箱
白箱
箱にも番号の範囲だけ書く
中身は見えない
見えない方が燃えない
最後に、板セットの許可範囲を確定させる
今日は第一段階だけ
優先枠の工房
具体的には錬金屋と、領主が指定した倉庫補修班の工房だけ
数は少ない
少ないから管理できる
管理できるから燃えない
レイナが言う
広げたい時ほど絞る
絞ると勝つ
勝つと自然に広がる
燃えずに広がるのが理想
夕方、旧鉱山の板も確認
異常ゼロ
増枠も崩れてない
倉庫周辺整備は今日も静か
例の男は依頼を取ってない
つまり、働く気は薄い
欲だけで動いてる
そういうのは、次に無理をする
フィンが言う
明日
何かやるかもな
レイナ
やらせない
やる前に
箱を置く
明日は本命の運搬を“普通”に混ぜる
そして板で拾う
拾ったら切る
切り方は停止じゃない
距離
距離が最強
寝る前、板に一行だけ書いた
明日:雑便に本命一回を混ぜる(見られても困らない形) 男が近づくなら距離で切る 板セットの第一段階運用開始 領主へ数字報告 次の拠点設備の見積もりを取りに行く
灯りを落とす直前、レイナが言った
今日は癖に落とした
今日は数字を取った
この二つが揃うと
燃えない速度が上がる
上がった速度で
次の稼ぎも拠点も取れる
異世界三十五日目、終了




