第27話 枠を売って、時間を買う
朝、掲示板の前に立った瞬間にレイナが言った
今日はここが戦場
戦うけど殴らない
依頼に落として回す
回ったら勝ち
ギルド前はもう人が集まっていた
昨日までの外周騒ぎで、旧鉱山の名前だけが走っている
走る噂は燃える
燃える噂は仕事にもなる
だから先に箱に入れる
ユハが新しい依頼紙を板に貼った
旧鉱山 管理作業
柵補修
外周巡回
見張り記録
条件は短い
灰腕章で可
赤木札は調査班のみ
違反は依頼停止
紙が貼られた瞬間、空気が変わった
見物が、応募の目になる
応募の目は扱いやすい
レイナが淡々と言う
走りたい人を仕事に吸い込む
吸い込んだら燃えない
燃えるのは暇
暇を消す
フィンが小声で言う
応募、思ったより多い
昨日まで掘りたがってた奴も混ざってる
レイナ
混ざるのが普通
だから条件
灰は作業だけ
赤は触らせない
触らせないと勝つ
ミナが机を出して、受領簿を置いた
名前
担当
受け取った灰腕章の番号
返却
書くのは最小
ゼフが腕章を箱から出す
灰の布に、小さな焼印
偽造しづらい
でも高くない
ちょうどいい
レイナが言う
高い仕組みは折れる
安い仕組みは続く
続く仕組みが勝つ
灰腕章を配ると、皆急に真面目になる
役割を与えられると、人は落ち着く
落ち着くと、余計な穴を掘らない
ガイルが腕を組んで見ていた
今まで喧嘩腰だった連中も、紙の前では口が小さい
レイナ
口が小さいのは良い兆候
言い訳が減る
言い訳が減ると燃えない
作業班は三つに分けた
柵補修班
外周巡回班
見張り記録班
班は多くしない
多くすると管理が死ぬ
死ぬと主人公の時間が死ぬ
レイナが釘を刺す
班は増やさない
増やすなら日をずらす
今日の目的は開始
開始できたら勝ち
開始の合図として、見張り小屋の板を新しくした
時間
担当
異常
三つだけ
昨日よりさらに短い
短いほど続く
その流れのまま、次の仕事に移る
優先枠の錬金屋面談
ここが稼ぎの入口だ
錬金屋は早かった
店主と職人と、帳面を持った若い弟子
目が速い
値段を嗅ぐ目
ブラントが一緒に来ている
彼がいると話が進む
話が進むと時間が守れる
店主が言った
優先枠
条件を飲むなら話を聞く
だが利益は欲しい
レイナが耳元で言う
利益は渡していい
主導権は渡さない
渡すのは枠
枠は箱
箱はあなたの勝ち
俺は紙を置いた
短く、三つだけ
加工はギルド監督下
工程と歩留まりを記録して提出
加工品の販売は領主許可制
違反したら枠は即剥奪
店主が笑う
縛りが多いな
レイナ
縛りじゃない
安心
安心は売れる
安心があると取引が続く
俺はそのまま返す
縛りじゃない
これがあるから優先枠が成立する
枠があるからお前は先に加工できる
先に加工できるから利益が取れる
それで十分だ
店主は帳面係を見た
帳面係が小さく頷く
算盤が弾けた顔だ
職人が口を挟む
香鉄石は扱いが荒いと匂いが暴れる
炉を選ぶ
袋も選ぶ
記録があるなら改善できる
改善できるなら面白い
レイナがすぐ言う
職人は味方にする
味方にすると勝つ
店主より職人
俺は職人に言った
加工の試験ロットを一回だけ
拳サイズ一つ分を三欠片に割って
三通りで試す
炉と袋と冷まし方
結果は全部記録に残す
職人の目が光る
弟子がすぐ紙を出す
好きなタイプの仕事だ
店主が渋い顔で言う
試験ロットは金にならん
レイナ
金はあと
まず価値
価値が上がると金が増える
増えた金で守りが回る
ブラントが口を挟む
試験で価値が証明できれば
領主も許可しやすい
許可が出れば量が回る
量が回れば店も得だ
店主は鼻で笑って、最後に言った
いい
枠を飲む
だが一つ追加だ
加工の優先はうちだけにしろ
レイナが冷たく言う
来た
独占の匂い
ここで切る
でも扉は残す
優先は一つだけに変える
俺は即答した
独占は不可
その代わり、最初の一か月だけ優先
一か月の結果が良ければ延長を検討
結果が悪ければ枠は広げる
数字で決める
店主が一瞬黙る
数字は逃げ道を塞ぐ
でも同時に、期待も作る
職人が頷いた
数字でいい
仕事がやりやすい
これで面談は終わり
長引かせない
余韻を残して終わる
終わらせた時点で勝ち
レイナが小さく言う
勝った
枠を売った
時間を買った
最後に、採取週次ルールの決定
ここをミスると全部燃える
燃えると守りが崩れる
崩れると話が守りに戻る
戻ったら稼げない
領主の執務室
ユハ
鑑定師
護衛
俺
そしてレイナの声
鑑定師が淡々と言う
採取は週一
拳サイズ
記録必須
これが最低
領主が言う
誰が掘る
誰が運ぶ
誰が保管する
誰が数える
レイナが即答する
分ける
分けると不正が減る
不正が減ると燃えない
燃えないと続く
俺は短く決めた
掘るのは調査班
赤木札の二名だけ
運ぶのは護衛とギルドの一名
保管は領主倉庫
数えるのは鑑定師
記録はミナ
箱はゼフ
領主が眉を上げる
箱?
レイナ
箱がないと燃える
箱があると燃えない
物は箱
情報も箱
人も箱
ゼフが出したのは、簡単な木箱の図
蓋に焼印
番号
封蝋
開けたら跡が残る
高くない
でも面倒
面倒が抑止
領主が頷いた
良い
箱は倉庫に置け
鍵は二つ
護衛と鑑定師が持つ
ユハも頷く
ギルドでも帳面を持つ
同じ数字を二つに残す
違ったら止める
レイナが言う
止める条件があると安心
安心があると早い
早いと勝つ
週次採取の時間も決めた
朝一
人が集まる前
集まる前に終わらせる
終わらせたら噂が追いつけない
追いつけない噂は弱い
その場で、最初の試験ロットの日を決める
三日後の朝
短い
短いほど良い
長いと期待が膨らむ
膨らむと燃える
外に出ると、ギルド前の空気が昨日より軽い
守りが依頼になって動いてる
板に書かれた記録が増えてる
増えてるのに揉めてない
揉めてないのが一番の勝ちだ
フィンが笑って言う
なんかさ
戦ってないのに勝ってる感じがする
レイナが淡々と言う
それが経営
経営は戦闘より速い
速いのがあなたの好み
ミナが帳面を抱えて言う
今日、全部決まりました
決まったので
明日はやるだけです
レイナ
やるだけの日が増えると
人生が軽くなる
軽いのが正義
夕方、赤木札を回収する
紛失なし
灰腕章も返却できている
依頼停止はまだ出してない
出さずに済んでるのも勝ち
見張り小屋の板には、囮点2の記録だけが増えていた
中心点もBも鳴子は鳴ってない
鳴らない夜は、最高の夜だ
拠点へ戻る前に、旧鉱山の入口を一度だけ見た
柵
印
板
小屋
人
全部が箱になってる
箱になってるから燃えない
燃えないから稼げる
レイナが静かに言った
次の山は三日後
試験ロット
そこで価値が見える
価値が見えたら
ギルド攻略RTAの速度が上がる
上がった速度で
次の稼ぎを取る
俺は板に一行だけ書いた
明日:管理依頼の初日運用確認 錬金屋の試験準備 箱と封蝋の最終チェック 三日後採取の段取り
灯りを落とす直前、レイナが言う
任せて
守りは仕組みが回す
あなたは稼ぎの方だけ見て
最速で前に進む
異世界二十七日目、終了




