第24話 囮は二つ、守りは一つ
朝、目が開いた瞬間にレイナが言った
今日は確認
匂いの移動チェック
赤木札の運用開始
囮点の設置
やることは多い
でも軽い
軽く回せば燃えない
板に書いた一行を見た
外周点を再確認
匂いの移動チェック
赤木札運用開始
囮点設置
フィンが戸を開けて顔を出す
ギルド前、もう“赤紐”探してる奴がいる
昨日の話、早い
レイナが即答する
早いのが人
だから赤紐は終わり
今日から赤木札
番号で縛る
縛ると偽造が面倒
面倒は抑止
ゼフが木札の束を机に置いた
焼き印で番号が入ってる
上に小さな穴が開いていて、紐を通せる
十枚
番号は一から十
毎朝配る
夕方回収
紛失はその場で減点
これならどうだ
レイナが迷いなく言う
最高
管理は少ないほど強い
十は強い
十なら目が届く
目が届くと燃えない
ミナが帳面を開いた
配布記録も短くします
番号
受取人
返却
これだけ
レイナ
それでいい
書く量を増やすな
増やすと続かない
続かないと負け
ギルド前へ行くと、確かに“赤”を探してる視線があった
目が落ち着かない
でも今日は見せない
見せた瞬間、武器になる
レイナが言う
見せない
調査班は裏で集める
配布は裏
返却も裏
表は灰の仕事だけ
ユハがすでに裏口に立っていた
調査班に選んだのは六人
俺たちの固定メンバーに、信用できる見張りを二人追加した
無理に増やさない
増やすと管理が崩れる
ユハが短く言う
赤木札、ここで配る
受け取ったら腕に下げろ
見せびらかすな
見せたら外す
レイナがすぐ足す
見せびらかしたら即交代
交代があると
赤木札が権威になる
権威は燃えにくい
六人に番号を渡す
一、二、三、四、五、六
七から十は予備
予備があると落ち着く
落ち着くと余計なことをしない
フィンが小声で言う
番号、覚えられるかな
レイナ
覚えなくていい
帳面が覚える
人は忘れる
紙は忘れない
紙があると燃えない
旧鉱山へ向かう
入口柵は静か
領主印が効いてる
見張り小屋にはすでに誰かが座って、板に文字を書いていた
時間
誰が来た
何を言った
たった三つでも、空気が変わる
見張りが“暇”じゃなくなる
ガイルが小屋の横で腕を組む
昨日、夜に来た奴ら
今日はまだ見ない
でも来る
レイナが淡々と言う
来る前提でいい
前提にすると焦らない
焦らないと勝つ
まずは確認
外周の三点A・B・Cと中心点
昨日の工事で中心点の匂いは減った
でも匂いはゼロになってない
匂いが減った分、別が強くなる可能性がある
それが“移動”だ
レイナが言う
今日は掘らない
触らない
嗅いで記録
粉で記録
煙で記録
記録したら終わり
A、入口側
粉を落とす
吸い込みは変わらない
匂いも変わらない
中
ミナが帳面に書く
A:粉 吸い込み中
匂い:変化なし
B、北側裂け目
粉を落とす
吸い込みが少し強い
昨日より一段だけ速い
嫌な変化
フィンが眉をひそめる
ここ、昨日より吸ってる
レイナが低く言う
移動
中心点を絞った
だから別が吸う
想定内
でもここを触らない
今日は位置を取るだけ
ミナ
B:粉 吸い込み強(増)
C、南側出入り点
煙を流す
出入りは変わらない
強
ミナ
C:煙 出入り強(変化なし)
最後、中心点
粘土筒+網
粉を落とす
吸い込みは弱いまま
匂いも弱いまま
工事は効いてる
フィンが小さく息を吐く
中心、勝ってるな
レイナ
勝ってる
でも勝ちが続くと
人が試す
だから囮
ここからが今日の本題
囮点の設置
昨日言った通り、囮は二つ
目立たせる
看板を付ける
工事中っぽくする
人は看板のある方を“本命”と思う
レイナが整理する
囮の条件
目立つ
近づきやすい
でも掘っても無意味
匂いは弱い
呼吸は弱い
ここを守らせて
本命を守る
本命は中心点
でも本命はもう絞った
今守りたいのは、Bの裂け目
ここが強くなった
ここが次の口になりやすい
だから本命は“地味に”見張る
俺は少し離れた場所、外周の歩きやすい草地に囮点を二つ選んだ
一つは入口寄り
もう一つは南寄り
どちらも風の弱い場所
粉を落としても吸われない
煙も流れない
意味がない
意味がないのが囮には必要だ
ゼフが太い杭を打つ
ミナが看板を付ける
工事中
立入禁止
調査班以外立入禁止
領主印の札も、ここには“薄く”付ける
薄いけど目立つ
レイナが言う
よし
目立つ
目立つと寄ってくる
寄ってくると見張りが仕事になる
仕事になると記録が増える
記録が増えると処分が楽になる
処分が楽になる
つまり、抑止が強くなる
いい循環だ
ユハが確認する
囮点は二つ
中心点は地味
Bは地味
見張りはどう割る
レイナ
昼は囮に一人ずつ
夜は囮にゼロ
夜は中心点とBに全力
夜に来る
昼は見られたくない
だから昼は囮が効く
夜は本命が効く
ガイルが頷く
夜の交代も決める
眠いと事故る
事故ると燃える
レイナ
交代表を作る
でも細かくしない
二交代で十分
細かいと崩れる
見張り小屋の板に、交代の目安を書いた
昼班
夜班
それだけ
細かい時間は砂時計で回す
砂時計が落ちたら交代
単純な方が続く
昼過ぎ、案の定人が来た
囮点の看板を覗き込む
工事中の文字に目が止まる
止まって、うろうろする
見張りが板に書く
時間
男二人
看板を見て立ち止まる
何か話して帰る
この記録が残ると、次に来た時に同じ顔が分かる
顔が分かると、相手はやりづらい
やりづらいと燃えにくい
フィンが小声で言う
囮、効いてる
あいつら、Bじゃなくてこっち見てる
レイナが淡々と言う
効いてる
でも油断しない
人は学習する
学習したら囮を変える
囮は動かす
固定しない
固定すると武器になる
夕方、最後にBの裂け目をもう一度粉で取った
吸い込みは強いまま
でも増えてはいない
今日はそれでいい
今日の勝ちは“増やさない”だ
レイナが言う
明日はBをどうするか決める
絞るか
見張りを厚くするか
それとも
Bを囮に変えるか
決めるには材料が必要
材料は今日取れた
だから今日は終わり
帰り道、赤木札を回収する
六人、全員返した
紛失なし
それだけで空気が良い
管理が回ってる匂いがする
レイナが静かに言った
今日の勝利
赤が武器にならなかった
囮が働いた
中心点は静か
Bは強いまま
でも増えなかった
明日は決める日
決めるのは速い
迷いがないから
俺は板に一行だけ書いた
明日:B裂け目の対策決定 囮点の位置微調整 夜警の実測
灯りを落とす前、レイナが言う
任せて
あなたの時間は守る
燃えない順番で
最速で回す
異世界二十四日目、終了




