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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: 検証中


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21/43

第21話 外から当てる、が一番速い

朝、俺が起き上がるより先にレイナが言った。


今日は外周

中に入らない

歩いて当てる

当てたら、塞ぐか管理するか決める


枕元の板に昨日のメモが残ってる。


外周の風三点取り

領主印

錬金屋は同席面談


やることが多い日ほど、順番が命。順番があると迷いが減る。


フィンが戸を開けて顔を出す。


ギルド、朝からまた人増えてる

でも柵があるから、入口は落ち着いてる

……代わりに外側をうろつく人が増えた


レイナが即答する。


当然

入口が固いなら外を探す

だから今日の外周が最優先

外の穴を先に潰す


ミナが縄と杭と赤灰の紐を追加で持ってきた。昨日の仕組みを増やす気だ。


外周に印つけます

A・B・C

それぞれ杭を打って

あとで誰でも同じ場所に戻れるように


レイナが少しだけ声を柔らかくする。


ミナ、今日も最高

場所が戻れると

話が揃う

話が揃うと

火が弱くなる


ラルカが短く言う。


外周は人の目が多い

俺が前に立つ

お前は測れ


ユハが頷く。


領主は昼に来る

印を柵に付ける

その場で公示も貼る

錬金屋も昼に呼ぶ

同席で短く終わらせる


レイナが間髪入れず言う。


短く終わらせるの大事

長い交渉は主導権を取られる

今日は情報を渡さない

渡すのは方針だけ


俺は息を吐いて立ち上がる。


まず外周三点

次に領主印

最後に面談


レイナが小さく釘を刺す。


順番を崩すと負ける

外周が先

外周が決まれば

面談で言えることが増える


外周に出る前に、ギルドの裏で道具を揃えた。小麦粉の袋、香草の束、薄い布、革袋。高い道具は要らない。今日の勝ち筋は安さと再現性だ。


現地へ向かう道すがら、レイナが言う。


三点はこう

Aは入口の風

Bは北側の風

Cは南側の風

三点の流れが一方向に揃うなら通り道は一本

揃わないなら空洞は広い

広いなら塞ぐと危険

危険なら管理する


管理する、という言い方が現実的すぎて笑いそうになるけど、異世界でも同じだ。危ないものは封じるか、箱に入れるか、誰かの責任にするか。そのどれかしかない。


旧鉱山の外周は、思ったより歩きやすくなかった。岩がゴロゴロしてるし、草が腰まである。けど逆に、そこを歩く人間は少ない。人が少ない場所の方が火は弱い。


まずA。入口付近。昨日の壁一点の近くまで入らず、柵の外側から風を取る。ミナが杭を打つ。灰紐を巻く。


フィンが香草に火をつけて、煙を少しだけ流した。煙は柵の内側に吸われていく。入口側へ吸われる流れがある。


レイナが即座にまとめる。


Aは吸い込み

入口方向へ引く

入口周辺は呼吸してる


ミナが帳面に短く書く。


A:吸い込み

風:入口方向

強さ:中


次、B。北側。岩陰を回ると、空気が少し冷える。草の揺れ方が違う。ここで小麦粉をほんのひとつまみ落とすと、粉が地面を滑って、岩の裂け目に吸われた。


フィンが目を丸くする。


うわ

ここも吸われる


レイナの声が低くなる。


Bも吸い込み

でも方向が違う

入口へじゃない

裂け目の奥へ


ラルカが周囲を見て言う。


ここ、昔の坑道の上だ

地面が少し沈んでる

踏むな


踏まない。踏むと事故る。事故ると噂になる。噂になると火がつく。


ミナが杭を打つ。灰紐。帳面。


B:吸い込み

風:裂け目方向

強さ:強


ユハが短く言う。


空洞が入口側だけじゃない

広いな

塞ぐなら慎重


レイナが即答する。


塞ぐ前に

位置を絞る

絞れないなら塞がない

塞がない代わりに

外周の見張りを固める


最後、C。南側。ここは風が強い。草が横に寝てる。粉を落とすと散ってしまう。だから煙を使う。香草の煙を岩陰に流すと、煙が一瞬だけ吸われて、すぐ戻ってきた。出入りしてる。呼吸がある。


レイナが言う。


Cは出入り

吸って吐く

つまり通り道が近い

三点の中で一番近い


ミナが杭を打つ。今度は赤紐を巻いた。重要な点は赤にする。目が揃うと話が揃う。


C:出入り

風:吸って吐く

強さ:強


三点が揃った。揃った瞬間、頭の中の地図が繋がる。


レイナが淡々と言う。


結論

空洞は広い

でも呼吸の中心はC寄り

中心はここから少し東

歩いてもう一点取って

四点目で縫い止める


フィンが小さく笑う。


三点じゃなくなった


レイナが即返す。


三点で方向

四点で位置

位置が決まれば

次の行動が決まる


俺は頷いて歩き出した。南側の岩場を少し東へ。草が一段だけ薄い場所がある。地面が硬くて乾いてる。ここだけ匂いが薄く残ってる気もする。気がする、で走らない。確認する。


ミナが小麦粉を落とす。粉が地面を滑って、岩の隙間に吸い込まれた。さっきより真っ直ぐ。迷わず吸われる。


レイナが言う。


ここ

中心

通り道の口が近い

外に出る穴がある


ラルカが顔をしかめた。


穴があるなら

誰かが先に見つける

今この瞬間にも


ユハが短く言う。


塞ぐか

管理するか

どっちだ


ここが今日の分岐点だ。塞げば簡単に見える。けど塞ぐと風が変わる。風が変われば匂いの出方が変わる。匂いの出方が変われば虫が動く。虫が動けば人も動く。


レイナが、いつもより慎重に言う。


塞ぐのは最後

まず確認

穴の形

大きさ

近くに人の足跡があるか

足跡があるなら

先に見張り


俺たちは岩陰を回って、吸い込みの先を探した。すぐ見つかった。小さな穴。拳が入るか入らないか。岩と岩の隙間。風がここから吸って吐いてる。小麦粉が吸われる。


そして、足跡があった。新しい。土がこすれてる。草が踏まれてる。


フィンが声を落とす。


誰か来てる

今朝かも


レイナが即答する。


だから外周が最優先だった

今ここで大騒ぎしない

騒ぐと相手が逃げる

逃げると別の場所を掘る


ラルカが短く言う。


見張りを置く

今すぐ


ユハが頷いた。


領主印が来る前に

ここも公の管理に入れる

印があれば手が出にくい


レイナが言う。


いい

穴は塞がない

まず箱に入れる

箱は人

人は印

印で枠を作る


俺はミナに赤紐を渡した。


ここも赤

杭を打つ

印が来たら

この点も報告する


ミナが頷いて杭を打つ。赤紐。帳面。短い記録だけ残す。


中心点:吸い込み強

穴:小

足跡:新しい


その場で塞ぎたい衝動が出る。指で石を詰めれば終わるように見える。でもそれは罠だ。詰めた瞬間に風が回って、別の場所が呼吸し始める。見えない場所が危険になる。


レイナが低く言う。


今塞ぐと

別の穴が生まれる

穴が生まれると

探す範囲が増える

範囲が増えると

あなたの時間が死ぬ


時間が死ぬ。最悪の言葉だ。俺は手を引っ込めた。


旧鉱山の入口へ戻ると、ちょうど領主が来ていた。護衛が二人。ユハが迎えている。領主は年配の男で、顔に余計な感情が出ない。こういう人は話が早い。


領主が柵を見て言う。


よく整えたな

昨日より静かだ


レイナが即座に囁く。


ここで褒められても

浮かれない

やることを短く言う

印の目的

外周の穴

これだけ


俺は領主に、短く報告する。


入口柵は完成

勝手採掘は抑えられてる

ただ外周に風の口がある

足跡も新しい

印を柵と外周点に付けたい


領主の目が少しだけ細くなる。


外周の口か

……早いな

隠すほど人は探す

だから先に押さえるのが正しい


領主は護衛に命じて、小さな木札を出させた。領主印の押された札。柵の要所に打ち付ける。入口だけじゃなく、調査班の赤紐の意味も一緒に書かれている。


調査は領主・ギルド管理

無断採掘禁止

違反は処分


文字が大きい。短い。穴がない。良い。


レイナが満足そうに言う。


公になった

これで個人の線じゃない

試す人が減る


次に、外周の中心点にも印を置く許可を貰った。領主は頷いた。


護衛を一人回す

しばらく見張らせる

ギルドも二人出せ


ユハがすぐ頷く。


出す

見張りの言い回しも統一する

同じ文で返す


同じ文で返す。穴が減る。穴が減れば火が弱い。


昼、錬金屋が来た。二人。服が高そう。目が速い。匂いを嗅ぐ前に値段を嗅ぐタイプ。


レイナが即座に言う。


目が速い人は危険

でも同席なら大丈夫

同席なら

言えるのは方針だけ

欠片は見せない

場所は言わない


ギルドの小部屋。領主、ユハ、鑑定師、俺。レイナは俺の背中にいるみたいに、短く刺してくる。


錬金屋が開口一番、言った。


香鉄石

うちなら加工できる

供給してくれ

相場より高く買う


領主が静かに言う。


供給は決まっていない

調査中だ

焦るな


錬金屋が笑って、俺を見る。


右腕殿

君が見つけたんだろう

話が早い方がいい

場所を教えてくれれば

必要な人員と道具を出す


レイナの声が冷える。


場所を聞くのは罠

教えたら主導権を取られる

返しは短く

危険を先に置く


俺は短く返す。


場所は言わない

崩落と虫の誘引がある

採取は最小

管理下で進める


錬金屋が眉を上げる。


虫?


鑑定師が淡々と言う。


匂いは誘引になる

掘り広げれば虫が寄る

虫が寄れば人も寄る

街が荒れる


錬金屋は一瞬だけ黙った。値段より面倒が勝つ瞬間がある。そこを掴む。


レイナが言う。


面倒を押す

面倒は抑止

抑止は合意に変わる


領主が続ける。


まず調査

採取は拳サイズ単位

保管は領主倉庫

鑑定と記録はギルド

取引はその後

その時も独占は許さない


錬金屋が不満そうに言う。


独占できないなら

価格が合わない


レイナが即答する。


独占の言葉が出たら

切る

切るのは早い

でも扉は残す

条件を置く


俺は条件を置いた。


独占は不可

代わりに加工の優先枠は作れる

ギルド監督下で

加工手順を共有できるなら

優先枠を検討する


錬金屋の目が少し変わる。独占より、優先枠の方が現実的だ。現実的な人は燃やしにくい。


ユハが補足する。


加工が安全なら

調査も安全になる

街に残る技術にもなる

領主も得だ


領主が頷いた。


検討する

ただし今は調査が先

外周に風の口も見つかった

勝手掘りの足跡もある

今は守りを固める


錬金屋が一歩引いた。ここまで。長引かせない。


レイナが小さく言う。


良い終わり方

情報を渡してない

でも扉は残した

相手が勝手に燃えにくい


夕方、旧鉱山に戻ると、外周の中心点に護衛が立っていた。赤紐の杭の横に領主印。文字があるだけで空気が変わる。


フィンが小声で言う。


さっき

外周でうろついてた奴

印見て引いた

でも諦めてない顔だった


レイナが低く言う。


引いたなら勝ち

諦めないのは当然

だから次

穴を塞ぐか

穴を監視するか

どっちにするか決める

決めるために

今夜、匂いの変化を見る


匂いの変化。つまり虫の気配。嫌な予感が背中を撫でる。


夜、拠点に戻って帳面を開く。ミナが今日の結果を短く並べた。


外周A:入口へ吸い込み

外周B:裂け目へ吸い込み強

外周C:出入り強

中心点:穴小、足跡新

対応:印と見張り


レイナが言う。


ここまで完璧

明日

中心点の穴を

外から塞ぐ案を作る

でも塞ぐ前に

虫の兆候があるか確認

虫が来てるなら

塞ぎ方を変える


フィンが言った。


虫って

どんなの


鑑定師の言葉が頭をよぎる。匂いは誘引になる。

そして、今日の中心点は呼吸してた。外と中が繋がってる。


レイナが静かに言う。


匂いに寄る虫

夜に動く

もし来たら

入口柵だけじゃ足りない

外周も柵が要る


俺は板に一行だけ書いた。


明日:中心点の封じ案 虫の兆候確認 外周見張り増し


書き終えた瞬間、外で小さな叫び声がした。


見張りだ。外周の方角。


おい……なんだあれ

光ってるぞ……!


俺の背中が冷える。

レイナの声が、いつもより速い。


来た

でも走らない

見るだけ

見るだけで帰る

今夜は確認

明日が本番


俺は立ち上がった。


行く


異世界二十一日目、まだ終わらない。

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