第17話 配り方テンプレRTA 木材を“揉めない順番”に落として、希少の匂いは枠に封印する
朝。
板を開く。
本日の稼働上限:6時間
現在:0時間00分
優先度A:仮住居 木材の配り方テンプレ(揉め止め)
優先度B:木材供給枠(3社)を実運用に落とす
優先度C:鉱山(日課点検+搬出1台)
※探索は今日は無し(枠が増えすぎる)
レイナが淡々と言う。
今日の勝利条件
木材が燃えない
配り方で揉めない
鉱山は死なない
希少の匂いが出ても飛びつかない
分かってる。
今日の敵は人の不満。
そして“いい匂い”の誘惑。
扉がノックされた。
入る!
フィン、ガイル、ミナ。
ミナは帳面を抱え、フィンは札束を抱え、ガイルはなぜか肩に縄をかけてる。
ミナが言う。
配り方テンプレ、案を作りました
優先順位を決めれば揉めません
決めないと、全員が最優先と言います
フィンが言う。
配給札、作れます
色と番号で
子ども向けとか…書いちゃだめ?
書き方は短く。
でも差別っぽく見えるのは避ける。
“用途”で分ける。
ガイルが言う。
現場は混む
列ができると喧嘩になる
時間枠で区切れ
よし。
配り方はテンプレ化できる。
俺は紙を机に置いた。
今日のテンプレ(仮住居 木材)
配り方=優先順位+上限+時間枠
受け取り=札+帳面+印
例外=板に1行で上書き
レイナが静かに釘を刺す。
人は“公平”で揉める
公平は同じにすることじゃない
順番が見えると黙る
見せろ
了解。
見せる。
町外れ 揉めの匂いは朝が一番濃い
仮住居の現場。
人がいる。
木材がない。
声が大きい。
そして、勝手に順番を作り始めている。
まずい。
“勝手な順番”は争いの種。
俺は中央に立って、短く言う。
木材は配る
順番を決める
決まったら早い
決まるまでは動かない
ざわっと止まる。
止まったら勝ち。
止まらないと、現場は燃える。
現場の責任者らしい男が出てくる。
領主の使いだ
仮住居を急げと言われてる
だが木材が足りない
どうする
どうするかは決めてある。
“配り方テンプレ”。
ミナが紙を広げ、俺が言う。
配り方は三段階
優先1:共同の機能(井戸・簡易便所・炊き場の屋根)
優先2:家族の屋根(骨組み+雨避け)
優先3:仕切り・棚・拡張
優先1が終わったら優先2
優先2が終わったら優先3
例外は板に1行で出す
これ以外は受け付けない
不満の声が上がる。
うちは子どもがいる!
俺の家が先だ!
寝る場所がない!
俺は短く返す。
だから優先2がある
でも先に優先1
便所と炊き場がないと病気が広がる
病気が広がったら全員が死ぬ
“全員が死ぬ”は効く。
脅しじゃない。現実。
レイナが低く言う。
理屈は短く
怖さは正しく
人は納得より先に黙る
黙らせたら次。
“見える仕組み”。
札と上限 木材は気持ちで配ると燃える
俺はフィンに合図する。
配給札を配る
フィンが札束を広げる。
札は三種類。
【1】共同機能札(番号)
【2】屋根札(番号)
【3】拡張札(番号)
番号は受け取り順じゃない。
“用途別の作業順”。
ミナが横で帳面を開く。
受け取りは必ず帳面に記録
札番号/受け取った材/用途/受け取り印
使い切れなかった材は“戻し”で記録
戻しがないと横流しになります
横流しって言葉が出ると、空気がさらに引き締まる。
嫌だけど効く。
俺は板を掲げる。
木材段階:黄
黄の上限:
共同機能=先行で必要量だけ
屋根=1家族あたり“骨組み分まで”
拡張=今日は無し
今日の拡張は無し。
ここは強く言う。
拡張は欲。欲は燃料。
現場責任者が頷く。
分かった
まず便所と炊き場だな
そう。
機能ができると、現場の不満が減る。
供給枠を“時間枠”に落とす 列を作らせない
次は商会3社の運用。
ブラント商会、ムルス商会、ハヤテ商会。
それぞれ荷車が来る。
ここで混ぜると終わる。
商会同士の張り合いも始まるし、受け取り側も混乱する。
俺は地面に縄で区画を作った。
搬入区画A:ブラント
搬入区画B:ムルス
搬入区画C:ハヤテ
そして板に貼る。
搬入時間枠(固定)
朝:A
昼:B
夕:C
時間枠の外は受け付けない
早く来ても待機
遅れたら翌枠へ
ガイルが笑う。
時間枠、効くぞ
列が伸びない
喧嘩も起きない
ブラントが肩をすくめる。
待機は嫌いだが
揉めるよりマシだ
流れが止まるのが一番損だしな
商会にとっての正義は利益。
利益が枠と一致すれば味方になる。
ムルス商会の代表が言う。
上限価格は守る
ただ黄のままだと儲けが薄い
黄のままでいい
赤になると、もっと薄い
赤は配給制になる
あなたも嫌だろ
ハヤテ商会が頷く。
赤は面倒だ
帳面が増える
運びが遅くなる
だから黄で止める。
黄で止めるのが勝ち。
配り方テンプレ 現場の手を止めない最小ルール
配り方は現場に落とさないと意味がない。
長い説明は読まれない。
短く、強く、繰り返す。
俺は現場の板に、たった4行だけ書いた。
仮住居 木材の配り方(固定)
1:共同機能(便所・炊き場・井戸屋根)
2:屋根(骨組みまで)
3:拡張(今日は無し)
札+帳面+印 これ以外は渡さない
これで十分。
ルールじゃなく、現場の合意として貼る。
貼った瞬間、勝手な声が弱くなる。
フィンが小声で言う。
短いの、強いね
誰も文句言いづらい
言いづらい=揉めない。
揉めない=早い。
早い=助かる人が増える。
鉱山へ “いい匂い”が漂っても、今日は嗅ぐだけ
午後。
板を見る。
稼働:3時間55分
残り:2時間05分
鉱山は死なせない。
点検+搬出1台だけ。
旧鉱山前。
支柱①②③の点検。
昨日と同じ。
異常なし、支柱③だけ要注意(湿り)。
煙は弱く。
石灰線は細く。
そこでラルカが、入口の外で待っていた。
顔が真剣。
右腕
奥の話だ
昨日、風が変わったって言ってただろ
今日、鉄臭じゃない匂いが混ざってる
甘い金属みたいな
嫌な匂いじゃない
…良い匂いだ
良い匂い。
それが一番危ない。
レイナが低く言う。
希少の兆候
でも今日は触るな
触ると日課と市場が崩れる
情報枠に封印
俺は頷いて言う。
触らない
今日は匂いだけ記録
探索は無し
“希少匂い枠”を作るだけ
ラルカが一瞬、拍子抜けした顔をしてから頷いた。
分かった
お前は飛びつかないんだな
だから強いのか
飛びつくと死ぬ。
死ぬと全部終わる。
ミナが帳面に書く。
希少兆候:甘い金属臭(混在)
場所:入口から先、鉄臭側の風
対応:情報枠に封印、次回検証
“封印”って単語があると、現場が落ち着く。
触ってはいけない理由になる。
搬出1台 日課を細く繋ぐだけでいい
採掘は入口近く。
今日は量じゃない。
細く繋ぐ。
一台分だけ袋を積む。
隊列はテンプレ。
止まらない。追わない。深追いしない。
街へ。
鍛冶屋街に鉄が入る。
空気が少し落ちる。
市場段階:普寄り維持
鉱山便:継続(1台)
よし。
細くても繋がった。
最後のまとめ 今日の勝ちは“燃えなかった”こと
拠点。
板。
稼働:5時間57分
残り:0時間03分
推奨:終了
最後に報告3行。
現場責任者(仮住居)。
結果:配り方テンプレで混乱減、共同機能の作業が進んだ
問題:拡張が禁止で不満が出る可能性
次:明日“拡張は各自の自力調達”を明記、揉めない逃げ道を作る
ブラント商会。
結果:時間枠運用で搬入が詰まらない、帳面も軽い
問題:黄の上限で利幅が薄い
次:供給量を安定させて量で回収、赤にしない
ミナ。
結果:札+帳面+印が定着、横流しの余地が減った
問題:帳面が増える
次:印を簡略化(記号化)して速度を上げる
フィン。
結果:札が見えるから順番が見える、喧嘩が減った
問題:札を失くす人が出る
次:再発行は“本人確認+1回だけ”、乱発はしない
ラルカ。
結果:鉱山入口は安定、日課は死んでない
問題:鉄臭以外の匂いが混ざってる、欲が出る
次:匂いの場所を固定記録、検証枠を作って飛びつかない
レイナが最後に言う。
今日の勝利
木材は燃えなかった
配り方が見えた
鉱山は繋がった
そして希少は封印できた
次は“封印を検証枠にする”
検証は短く
日課を壊さない
俺は頷いた。
明日は検証枠
匂いを測るだけ
掘らない
宝も見ない
情報だけ
異世界十七日目、終了。




