第145話 修理代は箱に載せない
朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。
返却棚に三箱。
一番。木部引っ掛かり0。
二番。持ち手緩み0。
三番。異常0。
運用箱3。
返却3。
朝値変更0。
フィン 三箱とも直った。
ゼフ 動作異常0。
ミナ 修理代は二回分。
フィン 持ち手と蓋。小さい額でも0じゃない。
レイナ 払った。
フィン 払った金は、どこで戻す?
レイナ 戻さない。
フィン 商売だぞ。減ったままでいいのか。
レイナ 箱を回す費用。
ミナ 朝値へ足すと?
レイナ 使う人が修理代を払う。
ゼフ 壊した人じゃなく、次に使った人が。
レイナ それは違う。
フィン 今日の進捗、見えたな。
レイナ 修理代は箱に載せない。
ミナが紙を一枚だけ置く。外から見えない位置。理由は書かない。
朝値固定 通常摩耗の補修費は内側 使用先追加負担0 破損者探し0 説明無し
フィン 通常摩耗って外へ出す言葉じゃないな。
レイナ 出さない。
ゼフ 故意に壊された時は?
レイナ その時に数を見る。
ミナ 今日は持ち手と蓋。使っていれば傷む範囲。
レイナ うん。
フィン 誰が傷めたかは調べない。
レイナ 調べる金の方が高い。
持ち手が緩んだのは、金具工房から戻った後。
蓋が引っ掛かったのは、補修班から戻った後。
だから金具工房と補修班に払わせる。
そう言うのは簡単だ。
だが本当に、その一回の使用で傷んだのか。
前の日から少しずつ緩んでいたかもしれない。
運んだ道で揺れたのかもしれない。
木が湿気を吸っただけかもしれない。
原因を決めるには、工房、運送人、子供便、天気まで席へ座らせることになる。
修理代より、原因を決める話の方が長い。
なら通常の摩耗は内側で払う。
箱を所有し、流れを回している側の費用。
使うたびに追加徴収はしない。
フィン 箱代に最初から少し乗せるのも駄目か?
レイナ 今は朝値で足りてる。
ブラント 昨日までの取引分を見ても、補修費を含めて赤字ではありません。
ミナ なら値上げ理由0。
ゼフ 補修が増え続けたら?
レイナ 数字が続いたら朝に見る。
フィン 一回、二回で動かさない。
レイナ うん。
昼前。ブラントが市場から戻る。
手には小さな木札が三枚。
一、二、三と書かれている。
ミナ 外札?
ブラント 補修負担札です。箱を使う工房から、一回ごとに小銭を一枚集める案が出ています。
フィン やっぱり来たか。
レイナ 誰が集める。
ブラント 市場管理の手伝いを名乗る者です。名前は出していません。
ゼフ 左肩の男。
ブラント 近くにはいました。札を配ったのは別の若者三人です。
ミナ 箱番号と同じ札を三枚。
レイナ 追加負担0。外札0。
ブラントが一枠へ木札を置く。
三枚まとめて0箱へ滑る。
壊さない。
削らない。
返さない。
寝かせる。
フィン 小銭一枚なら、払っても気にしない工房が多そうだな。
ブラント そこが狙いです。修理代の積立だと言えば、拒むほどの額ではありません。
ミナ 一回払うと、次も払う。
ゼフ 修理がなくても集める。
レイナ 先払い保守と同じ。
フィン 今度は契約じゃなく、一便ごとか。
レイナ 箱に載せただけ。
一便ごとの小銭。
金額は小さい。
紙もいらない。
契約もいらない。
だが三箱が毎日回れば、毎日三枚。
修理がなくても集まる。
誰が持つ。
いくら溜まった。
何に使った。
小銭を入れる箱が生える。
管理人が生える。
帳面が生える。
修理箱より先に、金箱が増える。
レイナ 集金箱0。
ブラント すでに一つ作っているようです。
フィン 早いな。
ブラント 市場の角です。修理の絵が描かれた小箱。
ミナ 外の箱。
レイナ 触らない。箱の受取先だけ守る。
こちらが集金箱を撤去すれば、修理費を踏み倒す側に見える。
だから触らない。
使う工房が払わなければいい。
朝値以外を受け取らない。
箱は使用先へ直接流す。
途中に集金人を挟まない。
昼。三箱が出る。
一番。補修班内。
二番。東通りの金具工房。
三番。革具工房。
一番は内側。
二番と三番は子供便。
子供たちが入口を出る。
一!
二!
三!
市場の最初の角で、若い男が一人待っていた。
首から修理の絵が描かれた小箱を下げている。
集金人 箱一つにつき、小銭一枚です。
一番目の子供 いち!
集金人 補修費だ。工房へ着いたら払ってもらえ。
二番目の子供 に!
集金人 札を持っていけ。
三番目の子供 さん!
集金人 止まれ!
子供たちは止まらない。
レイナから追加された言葉はない。
いつも通り、番号と速歩きだけ。
集金人は三枚の木札を持ったまま取り残される。
左肩が擦れた男が、道の反対側から声を上げる。
左肩の男 修理代だ!箱を安全に使うための金だぞ!
フィン 安全を小銭箱に入れ始めた。
ミナ 座る人がいない。
レイナ 追わない。
男たちは子供便を追う。
東通りの金具工房。
二番が到着する。
金具工房主 二、受け取った。
子供 二! 終わり!
子供が離れた直後、集金人が工房前へ滑り込む。
集金人 補修負担、小銭一枚です。
金具工房主 何の金だ。
集金人 持ち手の修理代です。この箱は昨日直されています。
工房主 二番の持ち手か。
集金人 あなたの工房から戻った後に緩みが見つかりました。
工房主 俺が壊したと言いたいのか。
集金人 責任を問うわけではありません。皆で少しずつ負担します。
工房主 皆とは誰だ。
集金人 箱を利用する工房です。
工房主 補修班も払うのか。
集金人 当然です。
工房主 革具工房も?
集金人 はい。
工房主 この箱を使っていない工房も?
集金人 使った便だけです。
工房主 今日はまだ壊してないぞ。
集金人 今後の補修のためです。
工房主 それは先払いだろ。
集金人 小銭一枚だけです。
工房主 額の話じゃない。
金具工房主が箱の蓋を開ける。
中身を作業台へ落とす。
用途へ入った。
工房主 朝値は払った。これは使う。小銭は払わん。
集金人 払わない工房は、次回の補修で不利になります。
工房主 誰が不利にする。
集金人 管理側が、
レイナ 管理側0。
工房の横からレイナが出る。
金具工房主 また急に出てきたな。
レイナ 数を見に来た。
集金人 修理には金が掛かるでしょう。
レイナ 払った。
集金人 その費用を利用者で分担するだけです。
レイナ 追加負担0。
集金人 では、誰が払うのです。
レイナ 内側。
集金人 その金は、商品の売上から出ている。結局、利用者の金では?
レイナ 朝値に含まれた範囲。追加0。
集金人 修理が増えれば足りなくなります!
レイナ 増えた数字が続いたら朝に見る。
集金人 今すぐ積み立てる方が安全です!
レイナ 先払い0。
集金人 壊れてから集めるのですか!
レイナ 集めない。内側で払う。
集金人が言葉に詰まる。
金具工房主 朝値が上がるなら、その朝に考える。今日突然小銭を出せと言われても払わん。
レイナ 正解。
工房主 今日は素直に嬉しいな。
フィン 領主より扱いが上手い。
集金人は木札を渡せないまま離れる。
次は革具工房。
三番が着く前に、左肩の男が先回りしていた。
革具工房主は工房の前で留め具を外している。
今日使う動作はすでに始まっている。
子供 三!
工房主 三、受け取った。
子供 終わり!
箱が作業台へ入る。
左肩の男 その前に補修負担を払え。
革具工房主 何だ、それは。
男 持ち手と蓋を直した費用だ。一便につき小銭一枚。
工房主 どちらも俺の箱じゃない。
男 箱は共同で使っている!共同で守るのは当然だ!
工房主 修理代なら箱の持ち主が払うだろ。
男 その持ち主の負担を軽くすれば、朝値を上げずに済む!
工房主 払わなければ朝値を上げるのか。
男 そうなる可能性がある!
工房主 脅しか。
男 説明だ!
工房主 まだ上がってないんだな。
男 今後のためだ!
工房主 今後の金は今後払う。
工房主が三番を開ける。
左肩の男 払わない工房には箱を回さない!
レイナ 決めるのはそっちじゃない。
男 またお前か!
レイナ 追加負担0。
男 修理費はどこから出す!
レイナ 内側。
男 内側の金が無くなったら!
レイナ 朝に数字を見る。
男 値上げになるぞ!
レイナ 必要なら朝に変える。
男 それを防ぐための小銭だ!
レイナ 修理0の日も取る。
男 積立だ!
レイナ 保管者は。
男 市場管理の、
レイナ 誰。
男 これから決める!
ミナ 管理人0。
ゼフ 帳面0。
フィン 金だけ先に集めて、持つ人は後からか。
革具工房主 それでよく払えと言えたな。
左肩の男が首から下げた小箱を押さえる。
男 ここへ入れる!皆が見える場所で管理する!
レイナ 外箱。
男 透明性がある!
フィン 透明性って言った瞬間、大きい椅子。
ミナ 毎日残高を数える?
男 当然だ!
ゼフ 誰が。
男 交代で!
レイナ 交代表。
ミナ 署名。
フィン 不足したら責任者。
ゼフ 鍵。
レイナ 鍵の管理人。
革具工房主 小銭一枚のために何人座るんだ。
フィン もう五人くらい。
左肩の男は反論しようとして、口を閉じた。
集金箱を守る仕組みの方が、修理より大きくなっている。
革具工房主 俺は払わん。朝値が上がったら、その日に必要か考える。
レイナ 正解。
工房主 今日は二回目だ。
フィン みんな数え始めた。
男は集金箱を抱えて離れる。
中身の音はしない。
徴収0。
午後。
一番が補修班内から返却。
二番が金具工房から返却。
三番が革具工房から返却。
返却3。
異常0。
補修0。
今日は修理が一件もない。
だが集金要求は三件。
フィン 修理0の日に、補修代3を集めようとした。
ミナ 積立だから、向こうは矛盾しないと言う。
ゼフ でも管理費が増える。
レイナ 金を守る金が要る。
フィン 小銭箱の修理代も必要になったりしてな。
ミナ その小箱にも補修負担を載せる?
レイナ 箱が増えるとそうなる。
女商人が返却巡回から戻る。
二番と三番を別の時間に一箱ずつ運んできた。
満載待ち0。途中保管0。
女商人 市場で補修負担を集めていましたね。
レイナ 徴収0。
女商人 私にも、運送一回につき小銭を上乗せして工房から取れと言われました。
フィン 運賃にも載せる気か。
女商人 断りました。
ミナ 理由は?
女商人 私が集めれば、返却箱を持つ時間が長いほど金になります。箱をすぐ返す理由が減る。
レイナ 正解。
女商人 四回目。
レイナ それは数えなくていい。
女商人 もう数えています。
女商人は荷車の持ち手へ肘を置く。
女商人 それに、修理費を理由に運賃を上げれば、工房から箱を傷めたのは私だと言われます。
ゼフ 運送人へ責任が移る。
女商人 私は運んだ分だけ運賃をもらいます。箱を直した分は職人へ払えばいい。
ミナ 別の仕事を混ぜない。
女商人 その方が交渉も短いです。
フィン 完全にこっちの運用を商売へ使ってるな。
女商人 役に立つ物は使います。
夕方。ブラントが市場から戻る。
ブラント 補修負担の徴収は、すべて断られました。
レイナ 数字は。
ブラント 徴収要求3。徴収0。集金箱1。管理人0。
ミナ 札は?
ブラント 配布3、受取0。最初の三枚は0箱で寝ています。
ゼフ 朝値は。
ブラント 変更0。今日の補修も0です。
フィン 昨日までに払った補修費は?
ブラント 持ち手1、木部1。内側支払い2。現在の取引分で吸収可能です。
レイナ 追加負担理由0。
ブラント 市場では、直していない日に修理代を取るな、という話になっています。
ミナ 極端になると、壊れた日に利用者へ払わせろへ戻る。
レイナ どの日も追加0。
ブラント 数字だけ伝えます。
領主へ数字を持っていく。
ブラント 運用箱3。使用3。返却3。補修0。徴収要求3、徴収0。集金箱1は外です。
領主 修理費は。
レイナ 内側支払い累計2。朝値で吸収。
領主 誰が壊した。
レイナ 探してない。
領主 補修班と金具工房ではないのか。
ゼフ 戻った後に異常を見つけただけです。原因確定0。
領主 なら請求するな。箱を持つ者が払え。
フィン 利用者全員から少しずつ集める案も0です。
領主 金箱を一つ増やせば、その金箱を守る者が必要になる。金を集めるために人を雇うな。
ミナ 朝値は変更しません。
領主 補修費が続いて足りなくなった時だけ、朝に数字を見せろ。
レイナ 正解。
領主 今日は私も数えている。
フィン 何回目です?
領主 言うものか。
レイナ 1。
領主 なぜ分かる。
レイナ 今日初めて言った。
ミナ 効率がいい。
領主 余計な所だけよく見ているな。
領主は集金箱を撤去しろとは言わなかった。
払う者がいなければ、外箱は空のまま。
空の金箱は、誰にも守られない。
やがて置いた者が持ち帰る。
こちらが触る必要はない。
夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。
三箱は返却済み。
一番。異常0。
二番。異常0。
三番。異常0。
補修0。
追加徴収0。
集金札受取0。
朝値変更0。
保守積立箱なし。
補修負担帳なし。
破損者一覧なし。
運送上乗せなし。
穴札12は腰袋のまま。
補修班の許可段+1もそのまま。
箱を使えば、少しずつ傷む。
傷めた一人を探して席へ座らせるより、直した時に内側で払う。
補修費が数字として続き、朝値で吸収できなくなった時だけ、朝に値を見る。
それまでは載せない。
修理代を箱へ載せれば、箱が動くたびに小銭箱が付いてくる。
俺は板に一行だけ残した。
補修0の日の徴収要求3と集金箱1を徴収0で空振りさせ、内側補修費2を朝値変更0のまま吸収した。
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