第100話 欠番運用
読者の皆様のおかげで100話まで来ることが出来ました! 有難う御座います。
朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。
返却棚に落ちていた箱を数える。札穴、番号、向き。遅延なし。対象外なし。静かだ。静かな日は、相手がしつこい日でもある。重さで来て潰されたなら、次は重さを続けて言わせる。続けて言わせれば、どこかで口が生えると踏んでくる。
レイナ 進捗、一つ。欠番。
フィン 欠番?
レイナ 3番が0になったら、その日は3番を出さない。
ミナ 紙一枚で刺すね。
ゼフ 同形の差し替え、見せない代わりに、今日は出さない。
ユハは入口側に立ったまま、3番の通り道に寄って止まれる角度を先に潰した。止まれる距離が消える。
3番は持つ。持つ係はひとり。重いは0。ここまで来た。
ここから先は、相手が同じ刺し口を何度も突いて、誰かの口が緩む瞬間を待つ。
だから待たせない。0が出たら、その日は欠番。動かさない日を混ぜる。観察を腐らせる。追いかけても何も増えない日を作る。増えないなら燃えない。
ミナが紙を一枚だけ置いた。短い条件文。理由は書かない。
3番 0発生時は当日欠番 中身確認禁止 手渡し無し 質問無し
フィン 欠番って言葉、外が騒がないか?
レイナ 騒がせる材料を渡さない。条件だけ。
ブラント 外で聞かれたら?
レイナ 欠番。以上。
ミナ 理由は無し。
ゼフ 欠番は見せ場になりにくい。出てこないだけ。
レイナ そう。出さないだけ。
昼。動かさない日を混ぜる。棚の前で作業をしない。入口で喋らない。窓口は短く同文で終わらせる。
空箱便は今日も三つ。番号だけ。1、2、3。外は変えない。
違いは、3番が0になったら、そこで三連が二連になるだけ。戻す動作を見せない。差し替えも見せない。
子供たちが寄ってくる。
ミナ 三つ。番号だけ。
子供 いち!に!さん!
レイナ さんは持つ係ひとり。重いは0。0が出たら今日は欠番。
子供 けつばん!終わり!
フィン 覚えるの早すぎ。
ミナ 短いからね。
レイナ 速歩き。
3番の子が抱える。床に置かない。途中交代しない。止まらない。
午前の半ば、角の外に薄い足音が混じる。左肩が擦れた男。姿は出さず、声だけ先に出す。
男 おい!今日は重いぞ!ちゃんと確認しろ!
フィン 確認って言った瞬間、椅子。ここ椅子ない。
レイナ 重いは0。
男 また0か!じゃあ何回でも重くしてやる!
レイナ 欠番。
男 は?
レイナ 0が出たら今日は終わり。
男は笑って見せた。そこで止めさせられるなら、止めた理由を言わせれば勝ちだと思ってる。
だから理由を言わない。言う前に動作で終わらせる。
角を曲がる瞬間、3番の子の腕が沈んだ。昨日と同じ沈み方。見ない。探さない。確認しない。
子供 ちょっと重い。
ミナ 止まらない。
レイナ 0。落として離れる。
子供 ゼロ!終わり!
ゼフが流れの外側、既存の0箱の口を開けている。待たない顔で、開けているだけ。
子供は止まらず、そのまま3番を滑らせるように落とした。落としたら終わり。中身は見ない。覗かない。
ゼフ 0。
ミナ 数だけ。
レイナ 欠番。今日は3番無し。
ここが勝負だ。普通なら同形3番を出して続けるところを、今日は出さない。
続けると相手が続けて刺してくる。続けて刺せば、どこかで口が生える。
だから欠番。観察が腐る。刺しても成果が増えない。
男が駆け寄る。寄れば叫べると思ってる。
男 ほら見ろ!重いだろ!危険だ!開けて確認しろ!
フィン 確認って言った瞬間、椅子。ここ椅子ない。
男 じゃあ次の3番を出せ!
レイナ 出さない。欠番。
男 逃げるのか!
レイナ 逃げない。終わり。
ミナ 理由なし。
レイナ 質問無し。
男は足を止めた。止めた瞬間、周りの流れが男だけを浮かせる。止まった方が負ける。
ユハが一歩だけ位置を変える。男が寄って話す幅が死ぬ。寄れば邪魔者に見える。邪魔者に見えた瞬間、声は薄くなる。薄い声は燃えない。
男 欠番の理由を言え!
レイナ 理由なし。
フィン 質問禁止。終わり。
男 ふざけるな!
ふざけるな、の次に来るのは紙だ。帳面役の息が、息のまま寄ってくる。紙束。署名。公開。安全。重い箱。子供。危険。全部を椅子にしたい日。
相手 子供に危険な荷を!公開点検を、
フィン 公開って言った瞬間、椅子。ここ椅子ない。
相手 皆のために!
レイナ 皆のためは椅子。却下。
ミナ 紙は凍結送り。
紙束は受け取られて読まれず、既存の凍結送りへ落ちる。箱は増やさない。口も増やさない。
相手は叫ぶが、叫ぶ場所がない。ユハの幅がそれを許さない。流れが止まらない。
3番が欠番になったことで、止める理由を語る席が消える。語る物が出てこない。出てこないなら議論が立たない。
相手 欠番の根拠を、
ミナ 理由なし。
レイナ 質問無し。
フィン はい終了。次の角行け。
ほのぼのは、欠番の軽さで出た。
1と2を持っていた子が、3番の子を見て肩をすくめる。苦労を羨ましがらない。今日の3番はもう無いからだ。取り合いが起きない。交代も起きない。口が増えない。
子供 さん、ないの?
ミナ 今日は欠番。
子供 けつばん!終わり!
フィン 終わり便利すぎ。
レイナ 便利にする。
3番が無いと、相手は次の刺し口を探すためにウロつく。ウロつくほど雑になる。雑は距離で死ぬ。
こちらは追わない。捕まえない。燃やさない。距離だけ残して、今日を短く終わらせる。
午後、補修班工房へ一度だけ行く。外は変えない。向こうの明るさも変えない。完成感も増やさない。
持ち込むのは形だけ。0が出たら欠番。まとめ返却はそのまま。置いて離れるもそのまま。3番は持つ係ひとりもそのまま。
補修班頭 3番は?
レイナ 欠番。
補修班頭 理由は。
レイナ 理由なし。
補修班の若いの 止まると面倒なんで。欠番の方が楽です。
フィン お前、もう口癖が同じだな。
若いの 終わりが早い方がいいんで。
レイナ 正解。
補修班の若いのは、三連の代わりに二連で回した。3番が無いだけ。動線は同じ。まとめ返却も同じ。止まりがない。
止まりがないと外は挟めない。挟めないと噂が育たない。育たないと燃えない。
夕方、ブラントが市場から戻る。噂の内容は持ち帰らない。形だけ。
今日は重い箱を隠した、欠番は逃げだ、子供に危険だ、と三つの形が膨らみかけていた。
だが形は短い条件で折れる。欠番。理由なし。質問無し。座れない。
ブラント 欠番が逃げだって回りかけました。
レイナ 欠番。以上。
ミナ 紙一枚。理由なし。
フィン 重いの方は?
ゼフ 0。
レイナ 0凍結。説明なし。
ブラント 説明が取れないので外は雑になります。雑は続きません。
領主へは数字だけ。短く。噂が嫌いな人間は数字で切る。
領主 欠番が逃げだと聞いた。
ブラント 3番0が出たら当日欠番です。
領主 良い。続ければ口が増える。噂は嫌いだ。
レイナ 口を増やさない。
領主 重さは?
ゼフ 0。
領主 説明するな。数字だけ残せ。
ミナ はい。
夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。
覗きが薄い時間だけ、ゼフが0箱を奥へ寄せる。開けない。出さない。戻さない。
小石が入っていようが、砂が入っていようが、言葉にはならない。0に溶ける。溶けたら燃えない。
翌朝、外は何も変わっていない。変わったのは、重さで続けて刺す手口が“増えない”こと。増えない刺し口は腐る。
俺は板に一行だけ残した。
3番重さ違和感1を0凍結し、その日は欠番運用1で再攻勢を空振りにした。
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