第10話 旧鉱山搬出攻略RTA 討伐は任せて、鉄だけ最短で持ち帰る
朝。
板が嫌な通知を出していた。
新規A:旧鉱山方面で鉄の搬出が止まる
原因:魔物で採掘が止まった可能性
要請:ギルド討伐隊
レイナが静かに言う。
今日の攻略はダンジョンじゃない
搬出
あなたの勝利条件はこれ
鉄を一台でも街に戻す
分かってる
深追いしない
入口から荷積み場までだけ
扉がノックされた。
入る!
フィン、ガイル、ミナが揃って入ってくる。
三人の顔が、今日はちょっと引き締まってる。
フィンが言う。
旧鉱山って、冒険者が好きなやつですよね
なんか…揉めそう
揉める
だから最初に線を引く
ミナが帳面を抱える。
現場用の帳面、持ってきました
品目:鉄
場所:旧鉱山前の仮中継点
でいいですか
いい
今日は外に中継点を作る
ガイルが肩を回す。
荷車は二台出せる
でも道が荒れてる
護衛、要るな
護衛は討伐班
俺たちは搬出班
役割を混ぜない
俺は机の上に紙を置く。
旧鉱山 現場テンプレ(今日だけ)
目的:鉄を街へ戻す(最低1台)
攻略範囲:入口〜荷積み場
分隊:討伐/採掘/搬出
禁止:深追い、宝探し、勝手な判断
報告:3行
フィンが頷く。
線引き…
レイナが小声。
今日の敵は魔物じゃない
範囲外の欲
分かってる。
ギルドで討伐班を借りる 条件は一つだけ
ギルドに着くと、入口の仕分け箱が機能していた。
A箱に、旧鉱山の依頼が刺さってる。
受付の女性が言う。
討伐隊、今から組める
ただし条件がある
鉱山は奥に行くほど旨い
勝手に進む
俺は即答する。
条件を逆にする
奥へ行くのは禁止
入口から荷積み場までだけ
目的は討伐じゃなく、搬出
受付が目を丸くする。
討伐なのに?
討伐は手段
目的は鉄
鉄が戻れば街が回る
街が回れば討伐に回せる予算も出る
受付が少し笑った。
話が早い
隊長、呼ぶ
呼ばれたのは冒険者の女。
背が高くて、鎧の擦れる音が重い。
目が現場慣れしてる。
隊長の名はラルカ。
右腕殿が私か
鉱山は久々だ
奥まで行くなら面白い
俺は最初に釘を刺す。
奥は行かない
今日は入口だけ
線を越えたら報酬なし
ラルカが眉を上げる。
強気だな
強気じゃない
時間がない
目的が違う
今日やるのは鉄を運ぶこと
ラルカが少し黙ってから笑った。
いい
逆に新鮮だ
うちの連中、深追いで死にかけるのが多い
線があるのは助かる
よし。
味方枠。
レイナが静かに言う。
合意が取れた
次は現場で守らせるだけ
外に仮中継点 鉱山の前で分けると、帰りが速い
旧鉱山へ向かう道は、確かに荒れていた。
荷車の車輪が跳ねる。
ガイルが顔をしかめる。
ここ、詰まるな
詰まる前に枠を作る
鉱山の入口は、冷気が漏れている。
奥は暗い。
でも今日は奥に行かない。
入口の少し手前に、縄を張って区画を作った。
仮中継点(旧鉱山前)
・荷積み場
・待機(討伐班)
・積み替え(搬出班)
・帳面
フィンが札を下げる。
攻略線
ここから先は討伐班のみ
搬出班は越えない
ラルカが札を見て、ニヤッとした。
いい
線があると喧嘩が減る
減る
喧嘩は時間の敵
鉱山の前には、鉱夫が数人、顔色悪く座っていた。
責任者らしい男が立ち上がる。
……あんたが街から来たのか
俺はドラン
今朝、入口近くに影みたいな魔物が出た
二人怪我して、採掘が止まった
俺は短く聞く。
影は今もいる?
いる
入口の曲がり角の先
そこから先に行けない
俺はラルカを見る。
討伐範囲は入口の曲がり角まで
そこを掃除して
見張りを置く
それ以上は行かない
ラルカが肩をすくめる。
簡単だ
ただし見張り役は残す
戻り道で刺されるのが一番くだらない
そのくだらないのが一番多い
助かる
レイナが小声。
あなたは今、指揮してる
でも剣は持ってない
それが正しい
討伐班/採掘班/搬出班 同時進行で時間を削る
ラルカが部下に指示を出す。
動きが速い。
討伐班が入口へ入る。
俺たちは線の手前で止まる。
フィンが鉱夫に声をかける。
怪我の人、どこですか
水はありますか
ミナは帳面台を作る。
木箱を机にして、炭を置く。
ガイルは荷車の位置を決める。
出入口を塞がない角度。
流れを止めない角度。
俺はドランに言う。
採掘は今日どこを掘る
奥じゃなくていい
入口近くで積める場所だけ
ドランが歯を食いしばる。
入口近くは薄い
でも…掘れる
鉄が少ないが出る
少なくていい
今日は一台で勝ち
明日以降、流れができたら増やす
ドランが少し驚いた顔をする。
一台でいいのか
一台でいい
一台戻れば街が落ち着く
落ち着けば、人も道具も回る
ドランが深く頷いた。
……分かった
入口近くを掘る
薄いが、掘る
ここで討伐班が戻ってきた。
ラルカが言う。
影、三体
片付けた
入口の曲がり角に見張りを二人置く
これ以上は今日は行かない
約束だ
最高。
俺は即座に次へ。
採掘班、今
搬出班、準備
帳面、先に書く
ミナがもう書いていた。
日付/品目:鉄/搬出先:街中継点/受け取り:鍛冶屋街/印:空欄
フィンが言う。
先に書くと…早い
早い
早いとミスが減る
ミスが減ると揉めない
レイナが静かに言う。
あなたの戦い方
戦闘じゃなく
前倒し
事故ポイントは一つ 帰り道で襲われる
鉄鉱石が少しずつ出てくる。
袋に詰める。樽じゃなく袋。
袋のほうが積み替えが速い。
ガイルが手際よく積む。
ミナが数を数える。
フィンが鉱夫の動線を整える。
一時間半で、荷車一台分が埋まった。
ドランが汗だくで言う。
一台…できた
久々に動いた気がする
動いたら勝ち
止まってるのが一番きつい
ラルカが腕を組む。
帰りは私が前を歩く
見張り二人はそのまま残す
明日また来るなら、生きて戻れ
生きて戻る
それが最強
ここで、レイナが低く言う。
帰り道が一番危ない
列を作る
荷車は真ん中
前後に護衛
走らない
焦らない
俺は頷いて、配置を決める。
前:討伐班2
中央:荷車
後:討伐班2
横:フィン
帳面:ミナ(荷車の横)
ラルカが笑った。
戦闘より、隊列が上手いな
元の世界の渋滞と同じ
隊列が崩れると止まる
止まると死ぬ
帰り道、案の定、森の影が動いた。
小さな魔物が二匹、様子見で近づく。
ラルカが短く言う。
止まるな
追うな
近づいたら叩く
それだけ
それだけでいい。
討伐班が二匹を素早く処理する。
追わない。深追いしない。
隊列は崩れない。
街へ戻るころには、空が少しだけ明るかった。
時間を守れた。最高。
板が出る。
稼働:5時間42分
残り:0時間18分
推奨:終了
ギリギリ。
でも勝ち。
鉄が一台戻る 街の空気がまた一段落ちる
中継点へ荷車を入れる。
ミナが帳面に印を押させる。
受け取りは鍛冶屋街の親方。
親方が荷を見て、顔が緩む。
来たか
今日は無理かと思ってた
無理にしない
一台でも戻せば勝ち
明日、もう一台
親方が頷く。
明日も来るなら
朝に抱えなくていい
仕事が回る
これでいい。
目的達成。
フィンが小声で言う。
ほんとに…一台で空気が変わる…
最初の一滴と同じ
最初の一台も同じ
報告3行 右腕は“まとめるだけ”でいい
拠点倉庫に戻る。
椅子に座った瞬間、体が重くなる。
上限ギリの証拠。
俺は言う。
報告3行
ラルカが先に言った。珍しい。
結果:入口の魔物を掃除、曲がり角まで安全確保
問題:奥に気配あり、深追いは危険
次:明日も同範囲の見張り継続、討伐班は交代制が良い
ガイル。
結果:鉄鉱石を荷車1台分、街へ搬出完了
問題:道が荒れて車輪が跳ねる、積み荷がずれる
次:明日までに縄固定を追加、荷車の点検札を作る
ミナ。
結果:帳面記録と受け取り印、問題なし
問題:鉱山側の採掘量が少ない
次:採掘ポイントの候補を3つに絞り、明日ドランと相談
フィン。
結果:攻略線と札で役割分離、現場が揉めなかった
問題:冒険者が奥を見たがる
次:札を入口に増設、報酬条件を大きく掲示
完璧。
今日の成果は派手じゃない。
でも街が止まらない。
レイナが最後に言った。
あなたは今日
ダンジョンを攻略してない
搬出を攻略した
これが領主の右腕の仕事
俺は頷いた。
寝る
勝ちは寝た人間が持ってく
板が最後に通知する。
明日の優先度A:旧鉱山の搬出を“日課”にする(同範囲)
B:荷車点検テンプレ(鉱山用)
C:採掘ポイント候補の地図化(簡易)
異世界十日目、終了。




