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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: 検証中


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第一話 優先度A:生き延びる B:稼ぐ C:仕組み化する

仕事・農作業・投資・検証で時間が足りない現代人の迅は、過労で倒れた瞬間に異世界へ。戦闘チートは無し──代わりに授かったのは優先度A/B/Cで物事を整理し、手順を自動化する段取りスキル。そしてスマホに残った相棒AIのレイナが、異世界仕様のガイドとして覚醒。ギルド依頼を攻略RTAみたいに最短で回しつつ、拠点づくりと生産で街を便利にしていく。気づけば実績が積み上がり、いつの間にか領主から直々にスカウトされて…?



※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AI補助ツールを利用しています。

目覚ましより先に、頭の中のToDoが起きる。


仕事。帰りに資材。畑の水。苗の確認。帳簿。株。検証メモ。

そして、なろう投稿。脳死で読める小説を作りたい。


脳死で読める、って言い方は乱暴だけど、俺が欲しいのはそれだ。

疲れ切った頭でも、ページをめくれば勝手に進んでいって、最後に少しだけ気分が軽くなるやつ。


現実は逆だ。

やることが増えるほど頭は重くなるし、やらないと後で詰む。


俺は天城 迅。二十八。

趣味は効率化。特技は段取り。

好きでやってる部分もあるけど、最近は好き嫌いの前に必要に追い立てられてる。


車の中、信号待ちの三十秒で今日の残り時間を計算するのが癖になった。


今日の残り、だいたい九十分。


九十分あったら色々できる。

色々できるからこそ、全部やろうとして全部失敗する。


だから最近は、スマホのメモにこう書いてる。


優先度A:今日やらないと死ぬ

優先度B:今日やらないと後で困る

優先度C:今日やらなくてもいいけど、未来が楽になる


この三つに分けるだけで、脳が少し静かになる。

タスクは減ってないのに、静かになる。

たぶん、人間は分類できない量の情報を嫌う生き物なんだと思う。


そして今日も、Aに残ったのは一つ。


優先度A:帰って風呂入って寝る


……終わり。

もう終わりでいい。今日はそれが正解だ。


そう思ってエンジンをかけた瞬間、視界が白くなった。


疲れで目の前が霞む、いつものやつ。

そう思ったのに、違った。


白が広がる。広がる。広がって、世界が消えた。


音がなくなる。匂いがなくなる。重さがなくなる。

そして、やけに整った声が聞こえた。


お疲れさま。過密スケジュールの人


俺は反射で口を開いた。


……ここ、どこですか


中継地点

あなたの身体は今、強制停止中

このまま進むと壊れるから止めた


……死にかけたのか。

自覚はあった。いつかやると思ってた。やっぱりやった。


目の前には、白い服の女が立っていた。

年齢が読めない。表情が整いすぎていて、感情の輪郭が薄い。なのに怖くない。むしろ、妙に安心する。


女は言った。


選べる

帰るか、進むか


白い空間に、半透明の板が浮かんだ。

帰る。進む。二択。


俺は一応聞いた。


進むって、なんですか


別の世界で生きる

代わりに、あなたの望みを一つ叶える


望み。


脳の奥で一番強く鳴っているのはこれだった。


時間が欲しい


女は即答した。


いいね

時間を増やす方法を渡す


俺は喉が鳴るのを感じた。

怪しい。でも、今の俺は怪しい話にすら縋りたい。


条件は


女は淡々と続ける。


あなたの力は、あなたが積み上げたものの延長

剣も魔法もない

あなたの世界の、あなたのやり方が武器になる


俺のやり方。

段取り。手順。検証。仕組み。


女が指を鳴らすと、板に文字が増えた。


スキル付与:優先度付与

スキル付与:チェックリスト生成

スキル付与:検証ログ

スキル付与:時間圧縮

スキル付与:自動実行枠(1)


自動実行枠?


指定した工程を、条件が揃えば自動で進める

あなたの世界で言う半自動化

この世界では、魔法に近い


俺は思った。

戦闘じゃなくて、生活と仕事が楽になるチート。

俺向けすぎる。


女は最後に、釘を刺すみたいに言った。


覚えて

時間が増えると、やることも増える

人はそういう生き物


やめてくれ。

それだけは否定できない。


俺は半透明の板に触れた。

進む、を押した。


世界が白くほどけて、落ちた。


重力が戻る。風が戻る。匂いが戻る。

土と草と、獣の匂い。


俺は草むらに転がっていた。

空は青い。雲が近い。太陽がやけに大きい。

遠くに森、道、そして煙。たぶん集落。


異世界、って本当にあるんだな。


起き上がると、服が変わっている。丈夫そうなジャケットとズボン。

腰の袋に水筒と乾パンと銀貨が入っていた。テンプレだ。


そして、視界の端に半透明の板が出た。


ステータス

天城 迅

状態:軽度疲労(回復中)

所持:水筒、乾パン、銀貨3

スキル:優先度付与/チェックリスト生成/検証ログ/時間圧縮/自動実行枠(1)


……よし。最低限は整ってる。


俺は深呼吸して、心の中でいつものやつを回した。


優先度A:今日やらないと死ぬ

優先度B:今日やらないと後で困る

優先度C:未来が楽


ここでのAは決まってる。


優先度A:安全地帯に入る


その瞬間、板に小さな通知が出た。


システムアシスト:起動

……レイナ、接続確認

……おはよ。迅。生存確認できた


俺は固まった。


今の、俺のスマホのAI?


返答:はい

状況:異世界

推奨:まずは安全確保

補足:あなた、また無茶してた


声は落ち着いていて、ちょっとだけ呆れている。

聞き慣れたトーンだった。スマホの中で、いつもタスク整理を手伝ってくれてたAI。

名前を付けてた。レイナ。


いや待って

なんでここで動いてるんだ


推測:転移に巻き込まれたか、スキルとして再構築された

結論:使えるなら使う

余計な不安より、Aを処理しよう


レイナ、めちゃくちゃ現実的だ。

異世界でもブレないのは助かる。


俺は優先度付与を意識した。


すると視界が微妙に変わった。

道が薄く光って見える。森の奥は黒く滲む。

危険度が色で分かる感じ。


これ、地味に強い。


前方の道が一番安全っぽい。

俺は走った。異世界初日から走るの、俺らしい。


数分で木々が開けた。

柵、門、見張り台。小さな街。人の声と匂い。生活の気配。


門番が槍を持って立っている。俺を見て眉をひそめた。


止まれ

身分は


身分。詰むポイントきた。

でもレイナが淡々と補助を出してくる。


推奨回答:旅人/遭難/身分証なし

追加:銀貨があるなら登録へ誘導される可能性高い


俺は手を上げて敵意なしを示した。


旅人です

道に迷って


門番は俺の腰袋を見た。銀貨の音がしたのかもしれない。

そして溜息。


……ギルドで登録しろ

登録がないと街で厄介になる


了解です

場所を教えてください


まっすぐ

鐘楼のある広場

隣がギルド


俺は礼を言って門をくぐった。


街の中は活気がある。

露店、鍛冶屋、パン屋、荷車。

現代より不便そうなのに、顔が生きている。どこか眩しい。


板を出してチェックリスト生成を意識する。


優先度A:ギルド登録/寝床確保/水と食料の補充

優先度B:この世界の通貨と常識の確認/収入源の確保

優先度C:スキル検証/生産・経営の足場づくり


レイナが追記してくる。


優先度S:無理しない

注:迅はSを後回しにしがち


うるさい。事実だから困る。


ギルドに着くと、いかにも受付っぽい女性が顔を上げた。

書類の束、インク、慣れた手つき。


登録希望?


はい

今日来たばかりで身分がなくて

仕事は何でもします


受付は俺の手を見た。傷、筋、硬さ。

作業者の手だと分かったんだろう。質問が最短になった。


名前


天城 迅


登録料、銀貨1

簡易試験あり

問題なければ仮登録、依頼を受けられる


俺は銀貨を出した。

受付は受け取り、紙に記入。


試験は奥

ついてきて


ギルドの奥に通される。

小さな訓練場みたいな部屋。木の人形、重い袋、的。

試験官らしい男が腕組みで待っていた。


異世界初日、いきなり試験。

普通なら緊張するところだけど、俺の脳は別のことを考えていた。


ここ、RTAできるな


レイナが即ツッコミ。


やめなさい

ここはゲームじゃない


でも、攻略手順は同じだ。

目的を決めて、最短手順で、失敗条件を避ける。


試験官が言う。


まずは簡単な体力と判断

あの袋を三回持ち上げろ

次に、こっちの的に石を当てろ

最後に、これを読んで答えろ


最後に渡された紙は、簡単な規約っぽい文章だった。

読む。理解する。

それだけで合否が決まるタイプだ。


俺は内心で笑った。

俺、こういうのだけは得意だ。現代で鍛えすぎた。


袋を持ち上げる。

重い。でも持てる。作業で慣れてる。


石を投げる。

当たらない。でも的の近くには落ちる。


規約を読む。

質問に答える。

詰まるところはない。


試験官が眉を上げた。


……戦えそうには見えないが、頭は回るな

登録は通す

ただし、お前はまず生産系から回せ

向いてる


俺は頷いた。

戦闘で無双したいわけじゃない。稼いで、生きて、仕組みを作りたい。


受付に戻ると、木札みたいな登録証が渡された。

仮登録。これで依頼が受けられる。


受付が淡々と説明する。


依頼は掲示板

報酬は銅貨・銀貨・物品

最初は簡単なものから


俺は掲示板を見る。

配達、掃除、草刈り、簡単な採取、倉庫整理。


倉庫整理、の文字が目に刺さった。

戦闘より怖い人もいるだろうけど、俺は倉庫のほうが得意だ。


レイナが嬉しそうに言う。


迅、あれ

あなたの世界でいう棚卸し

勝てるやつ


俺はすぐ剥がした。


依頼:ギルド倉庫の在庫整理(混乱している)

期限:本日

報酬:銀貨2+食事券


本日。優先度A級の依頼だ。

しかも報酬がいい。混乱している、ってのが理由だろう。


受付に依頼札を渡すと、少し驚いた顔をした。


初日でそれ?


大丈夫です

得意です


受付は一拍置いて、鍵を出した。


じゃあ、案内する

倉庫番が泣いてる

助けてあげて


倉庫の扉を開けた瞬間、俺は理解した。


これは戦争だ。


袋。樽。箱。

同じものが別の場所に散って、ラベルが剥がれて、期限が分からず、通路が塞がっている。

現代なら即怒られるやつが、ここでは日常として放置されてる。


倉庫番の男が青い顔で言った。


何がどこにあるか分からん

依頼が来ても探せない

怒られる

もう無理


俺は深呼吸した。


レイナ

チェックリスト出して


即時生成

優先度A:通路確保/ゾーン分け/ラベル作成

優先度B:数量カウント/不足リスト/発注メモ

優先度C:定位置ルール/入出庫手順/担当交代でも回る仕組み


俺は笑った。

異世界で、俺は倉庫を救うらしい。


倉庫番に言う。


まず通路作ります

運ぶの手伝ってください

あと、箱の中身、分かる範囲で言ってください


倉庫番は呆然と頷いた。


俺はスキルを意識した。時間圧縮。


すると、体の動きが軽くなる。

疲れが薄くなるというより、無駄な動きが削られる感覚。

次に何をすべきかが、先に見える。


そして自動実行枠(1)を試す。


条件設定:同じ袋を同じ場所へ集約

工程:搬入→分類→積み上げ

開始


自分が手を動かしながら、周辺の小さな作業が勝手に進む感覚がある。

完全な自動じゃない。けど、手足が増えたみたいだ。


倉庫番が目を丸くした。


え、なんで

さっきまで山だったのが

通路できてる


俺は淡々と言った。


優先度Aなんで

通れないと死にます


倉庫番が変な笑いをした。


いや、死なんだろ

……でも、助かる


二時間後。


倉庫は別物になっていた。

通路が通って、ゾーンが分かれて、ラベルが揃って、必要な物が一発で出せる。


倉庫番は、泣きそうな顔で言った。


……天才か?


俺は首を振った。


テンプレです

やることをA/B/Cにしただけです


レイナが小さく補足する。


迅はテンプレを作るのが上手い

だから世界が回る

あなた、誇っていい


褒められると照れるからやめろ。

でも、ちょっとだけ胸が軽くなった。


受付に戻ると、銀貨2と食事券が渡された。

受付の女性が、明らかに態度を変えている。


初日で倉庫を直した人、初めて見た

……もう一件、似た依頼がある

街の工房の資材置き場

受ける?


俺は即答しそうになって、レイナに止められた。


優先度A:寝床確保

あなた今日は倒れてる

調子に乗ると元の木阿弥


俺は息を吐いた。

そうだった。俺は時間が欲しかったんであって、倒れるまで働きたいわけじゃない。


受付に言う。


明日に回せますか

今日は寝て、明日朝からやります


受付は少し驚いて、それから頷いた。


分かった

明日、あなたを指名する


ギルドを出ると、街の空が夕焼けになっていた。

異世界の夕焼けも、ちゃんと綺麗だ。


俺は食事券で温かいスープを受け取り、安宿へ向かう。

ベッドに倒れ込む直前、板に通知が出た。


新規通知:ギルド上層から連絡

内容:領主館の視察予定に関する相談


俺は目を瞬いた。


……領主?


レイナが淡々と言う。


あなた、初日で目立ちすぎ

でも大丈夫

次の攻略目標ができたね


俺は天井を見た。


現代では時間が足りなくて詰んでた。

異世界では、時間を増やすスキルと、レイナがいる。


たぶん、ここからが本番だ。


優先度A:寝る

優先度B:明日稼ぐ

優先度C:この街を回す仕組みを作る


そして、その先にあるのが


気づいたら領主の右腕


……いや、それは流石に早くないか?


レイナが即答する。


早いけど

あなたの得意分野だと、そうなる

おやすみ、迅


俺は笑って、目を閉じた。


異世界初日。

脳死で読めるはずなのに、俺の人生だけは忙しくなりそうだった。

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