ありふれた日常と電子の世界
『……めな……い』
誰かの声が聞こえる。深い眠りについていた私を、起こす誰かの声が。
『……きて。……ちゃん』
目覚めつつある意識と共に、聞き馴染みのある声が聞こえる。そして、目が覚める。日光の日差しと共に、私の目を照らしていく。
「お姉ちゃん! 起きて! 遅刻するよ?」
誰かの声と共に、目覚める。ぼやけている目が冴えつつある状況で、身に覚えのある顔が徐々に見えてくる。
「ん……。おはよう、彩葉」
「もう、昨日も夜中まで映画見てたの? DVDなんて、もう古いでしょう?」
「それがいいのよ。今のサブスクでは見れないものも多いわけだし」
制服を着ていた彩葉は、呆れながら散らばっているDVDを眺めている。私は寝起きの体を起こしながら、DVDをしまう。そして、寝巻きのままリビングへと降りていく。
彩葉がスマホでトースターを操作しつつ、コーヒーメーカーも操作する。私はタブレットでニュースを眺めながら、朝食を食べる。
「また物騒な事件ね。サイバーテロなんて、今時やるかしら?」
「日本じゃ難しいよね? というか、食事中にする話じゃないでしょ?」
トーストを食べながら、スマホを見る彩葉。トーストにジャムをつけながら、スマホでもう一枚パンをトースターで焼き始める。私はコーヒーを飲み終えると、自室に戻り制服に着替える。髪を整え、制服を身の纏う。玄関では彩葉が待っており、二人で一緒に家を出る。
ここはカンナギ市。日本の国土発展に特化したいわば経済特区だ。多くの店や学校、国の行政が集う。新たに発展したネットワークを多く取り入れ、街だけではなく、国の経済も豊かにしているのだ。
バス停に着くと、モニターがバスの時間を示している。どうやら次のバスまで後10分くらいだそうだ。
時は2045年、4月。15年前に突如として旧時代のネットワークが停止し、新たなネットワークが、突如として普及し始めた。それにより、人々の生活環境は一気に向上し、人類の文明はより発展していった。それに伴い、人々には生まれつきあるものが付く。それは『アバター』と呼ばれるAIだ。『アバター』は人類にとって、いわばもう一人に自分。私たち人類には、常に『アバター』と共に日々の生活を過ごしている。
それを可能にしてるのが、新時代のネットワーク。通称『電脳世界』だ。膨大な情報量を誇る『電脳世界』は、それまでの検索エンジンとは一線を超え、ありとあらゆる情報を最大1秒で検索結果を表示でき、今では世界中の人々が、『電脳世界』を多用している。それだけに、今ではあってはならないツールとなっているのだ。
「『アバター』っか。私のは生まれつきないからな」
「珍しいよね? 私はちゃんといるのに」
生まれつき自分の『アバター』を持たない私は、常に空のスマホ画面を眺めている。空というのは、『アバター』がそこにいないことを指している。
だが、別に減るものではない。『アバター』がなくたって、それなりの生活はできる。だが、見せられるものがないという女子高生あるあるができないのは、なんだか寂しいものだ。
バスを降りると、彩葉とはここで別れる。イヤホンを耳につけ、学校へ向かう。古い音楽を聴きながら、通学路を歩く。
『気をつけなさい。その辺りにテロリストが潜んでるわ』
「!?」
誰かの声が聞こえ、振り向く。しかし、誰もいなかった。私は首を傾げながら、そのまま学校へ向かう。クラスに着くと、自分の席に座る。隣に席を見ると、空席の席を見つめる。やはり彼女は来なかったみたいだ。どうやら、仕事で来れないらしい。寂しさも覚えつつ、私は窓を見つめていた。
タブレットを用意し、授業を受ける。教科書がデジタル化した今では紙の教科書は古の遺物と化してしまった。その為、どの学校もタブレットを採用をしているのが今の現状だ。
授業が終わり、昼食に入る。イヤホンを耳につけると、さっきの声が聞こえてくる。
『やられたわ。もう侵入されている』
「え?」
私が疑問を感じていると、グラウンドから爆発音が聞こえる。窓から眺めると、どうやら武装した集団が突入してきたようだ。何人かの生徒は、連絡を取ろうとする。しかし、電波が通じていないらしく、応答がないようだ。
タブレットから、教師に緊急連絡を入れる。やはりダメだ。どうもジャミングがされてしまったみたいだ。
『今は外部とも連絡が取れないわ。どうも何かでジャミングされているみたい』
「ジャミング? それじゃ、学校はもう、占拠されたってこと?」
『そうなるわ。これを打開するには、ジャミングをしている大元をどうにかするしかないわ』
脳裏で聞こえる声に、私は事態を把握する。
「状況はわかった。だけど、あなたは誰? なぜ、私に?」
『私? 私は『あなた』よ? それより、早く隠れなさい。そこのロッカーがいいわね』
声に導かれるように、私は掃除道具の入っているロッカーに身を潜める。しばらく息を潜めていると、例のテロリスト達が、クラスメイト達を拘束しては連れ去っていったようだ。そして、彼らが去るのを見計らい、私はロッカーから出る。
「危なかった〜。でも、事態は厄介なことになってるわね」
『えぇ。ここを出でサーバールームに行きましょう。でも、見張りには気をつけて』
声と共に、私はクラスを後にする。隠れながら進んでいると、警備している傭兵が、クラスを見回っているようだ。
こうして、私は声に導かれるように、サーバールームへと向かうのだった。
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