広大なサイバースペース
目を瞑り、睡眠に入る。目を瞑れば、夢を見るのは当然の話だろう。本来なら、体を休められて安堵の休息となるのが節だろう。
だが、今の私は夢を見る暇がないだろう。
『もう開けてもいいわよ』
瞼を開けると、広大な電子の波が視界いっぱいに広がっている。服装を見ると、『ブレイバー』になった時のと同じものになっていたようだ。
電子の回路が無数に流れて行く。しばらくすると、真っ白な光が私の視界に広がる。
そして、再びを目を閉じる。しばらくしてまた開くと、広大な世界が広がっていた。
「ここは?」
『ここは、私たち『アバター』が生活する世界、『電脳世界』よ。インターネット上に展開されているあらゆる情報がデータ化され、あなた達の世界と遜色ない風景が広がるわ』
「こんな世界があったなんて、知らなかったわ。まるで異世界ね」
目の前の道路を散策する。ゲームのような空間が視界に広がっていることに、不思議と高揚感を感じる。
多くの『アバター』が、私の世界の人間達を変わらずに生活をしている。そういえば、ここは江戸時代と現代が混ざり合ったような光景のようだ。
「現代と江戸時代が混ざっているようだわ。これもインターネット上の情報をもとに出来ているの?」
『私たちがいるのは、『JPサーバー』と言われるIPよ。あなた達が普段使うネットワークは、地域ごとに入れるサーバーが限られている。この国では、日本に適したIPしかサイトしかアクセスできないのよ』
「なるほど。では、他のサーバーもこう言う風景が広がっているってわけね」
『そう言うことね。だけどそれは、あくまで表面的な話よ』
ブリュンヒルデが、透明なウィンドウを展開する。長いウィンドウを眺めると、『電脳世界』の階層についての表示がされていた。
『今私たちがいる世界は『表面階層』と呼ばれているものよ。一般的には、私たちは常にここでしか検索したり、チャットで話し合ったするわ。次に『深層階層』について、ここは限られたユーザーでしか入ることができない階層よ。サブスクリプションなどの課金制のあるコンテンツはこの階層に入るわね。そして、『暗黒階層』。ウィルスや違法性の高いコンテンツが多く入っている禁忌の領域ね。ここに入るのは、クソッタレな連中しかいないわ。特別なIPを使わない限り、ここへは入ることはないわね』
「やっぱり、異世界みたいね。身近に使ってものが、まさかこんなに広大なものとはね」
ウィンドウが閉じられると、散策を再び開始する。チャットのやり取りをしているようなウィンドウが広がっている風景が、非日常感を感じさせる。
この時間でも、仕事をしているとは日本人らしい。まるでMMDのオンラインゲームのようだ。ここではいろんな情報が錯綜しているのだ。
「ん? あれは?」
身に覚えのある人物を見つける。
「あら? 美羽じゃない。ここで会うなんて奇遇ね」
「美生? あなたも来ていたの」
美生が『ライド』した姿で、この街を歩いていたようだ。目的は後で聞くとして、どうやら彼女もここへ来たらしい。
「えぇ、ここへはいつも偵察に来てるの。この中に潜む『悪性アバター』を蹴散らしにね」
「『悪性アバター』? あの時の?」
「ホワイトハッカーをやっていると、気が付かないのよ。だからこうして、クーフーリンと『ライド』して倒してるの」
美生が言うに、『悪性アバター』の判別はPCでは難しいらしい。『悪性アバター』は、見た目は普通の『アバター』と変わらないらしい。だが、それを悪用して他者の『アバター』を乗っ取り、確実にサイバー攻撃を行うのだ。
最近はこれを用いた方法が横行しているらしく、ホワイトハッカーも手を焼いている。美生は鍛錬の傍ら、それらを『電脳世界』で駆逐しているらしい。
目に見えない努力というの、この事を言うのだろう。
「向こうが大通りだわ。行きましょう」
美生に手を取られるように、大通りに向かう。すると、その風景はまるで、現実の街と変わらないのだった。
「さっきの場所よりもすごいわね。『アバター』がこんなに溢れかえっているなんて」
「ゲームで言うところの集会所みたいなものね。みんなVRゴーグルで『アバター』に憑依しているのよ」
「なるほど、それなら寝る暇はないみたいね」
「どうかしら? うっかり寝てしまってるのもいるみたいね。ほら、あそこ」
立ち止まったまま動かない『アバター』がその場にいる。どうやら本人は寝てしまっているみたいだ。
「でも、私たち『ブレイバー』は別よ。今は意識と『アバター』がリンクしているから、あぁなることはないわ」
「そうね。自分でもおかしいとは思うわ」
こうしていると、私は普通の人間じゃないんだと感じる。皆がわいわいと話している横で、自分が変わっている事を身をもって感じる。
あの光景が当たり前で、その制約のない私たちが変わっているのだと。
そうしていると、通信が入る。
『よう。お前らもこっちに来てるんだな』
「この声は香里奈? あなたもここに?」
声の主は香里奈だった。彼女も『電脳世界』に来ているらしい。
『あぁ、久々にな。なんだったら合流しようぜ? どうせあいつといるんだろう?』
「はぁ!? あんたこそ今どこにいるのよ!」
『ちょうどそこから見えるタワーの上だ。なんだったら飛んできていいんだぜ?』
通信が切れると、美生は早速飛び始める。
「ちょっと! 挑発に乗ってどうする――――。行ってしまったか」
呆れながら、私も『ウィングユニット』を展開しタワーへと向かう。すると、後ろから気配を感じ振り向く。
「気のせいかしらね」っと空へと飛んでいく。空から見た風景は、『現実世界』とはまた違った美しいものだった。
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