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混迷する事態

 アリスの案内で、私たちは米軍基地からようやく脱出をした。今回の一件で、上層部の調査が入るらしく、アリスとはここで別れることになる。

 停めてあった車で瀬戸内グループ本社に戻った私たちは、アリスから得た情報と、これまで私たちが得ている情報を合わせる。


「さて、これまでに得た情報と今回得た情報を合わせましょう。これまでは、佐々木の独断で『機兵』の量産型を世界各国に売り捌いて利益を得ようとした。だけど、アリスの情報だと、アメリカは秘密裏に『機兵』本体を製造しているみたいね。でも、今はそこへの潜入方法がないから、確かな情報とは言い難いわ」

「アメリカのセキュリティだと、さすがの美生でもできないんじゃない?」

「あの国の機密情報となると難しいね。テロリストのやつよりも厳重になっているから」


 コーラを飲みながら、『機兵』について話し合う。さすがの美生でも、あの国の機密情報には安易にハッキングはできないようだ。

 となると、ここから先はアリスの協力なしでは動けられない。でも、年齢は近いとはいえ彼女は軍人。安易に接触をすると、彼女がスパイと疑われるのは時間の問題になるだろう。

 そうならないためにも、まずはアリスを私たちと自由に行動できるようにするのがいいだろう。


「それで、アリスを事業の顧問にしたのは本当なの?」

「えぇ。後日ここに来るようには手配するわ。だけど、問題はアメリカ軍の方ね。日本で民間軍事企業なんて、法律上アウトですもの」


 香里奈は頭を抱えながら、車椅子の背にもたれる。憲法9条が、民間軍事企業にとって大きな足枷になっているようだ。


「とにかく、状況としてはまだ動いていないと言うべきね。でも、ことは急げとも言うわけだしね」

「そうね。まだ焦る場面ではないわ」

「あくまで今はってことだけどね。いきなり動くことだってありえるしね」

「そうなったら、全力で止めるだけよ。相手が誰であろうと、私たちが食い止めるわ」


 笑いながら、3人で話し合う。それぞれが飲んでいたコーラを飲み終えると、私と美生は立ち上がる。

 時刻は18時。そろそろ夕ご飯の時間になる。

 私と美生は、それぞれの家に帰る。私が家に帰ると、彩葉が夕ご飯に支度をしていた。


「おかえり、お姉ちゃん。帰るのが遅いから、ご飯作っちゃった」

「ただいま。悪いわね、夜も作ってもらって。明日の朝は私が作るわ」

「もう、遅くなるなら連絡してよね。お姉ちゃん、いつも連絡しないんだから」


 彩葉が夕食を作ってくれたようだ。どうやら私は、うっかり連絡するのを忘れたらしい。

 私は席に着くと、彩葉が作った食事を食べる。今日の夕食は彩葉の得意な洋食みたいだ。


「今日もまた香里奈さんのところ?」

「えぇ、最近よく呼ばれるのよ」

「ふーん。私も香里奈さんに会いたいな。もう結構会ってないし」

「最後にあったのは、まだ7歳くらいだっけ?」

「うん。元気だったの?」

「そうね。でも、今は会えそうにないわ。彼女、社長だし」

「えー。お姉ちゃんだけずるい!」


 彩葉は羨ましそうに、私が香里奈と会っていることを聞く。そんな彩葉の顔を見て、私は顔に笑みが出た。

 風呂に入り、自室に戻って寝る準備をする。ふとPCを起動すると、ブリュンヒルデが現れた。


『ここ最近、色々とありすぎたわね』

「えぇ。もう一月経った気がしたわ」


 ベッドで睡眠の準備をする私をよそに、ブリュンヒルデはある提案をする。


『そろそろ、私たちの住む世界へ案内してもいいかしら?』

「私たちの世界? 一体何を?」

『えぇ。私たち『アバター』が住み世界、『電脳世界(サイバーワールド)』へあなたを案内するわ。大丈夫、あなたの仲間たちも招待してるわ』


 ブリュンヒルデがそう言うと、私は呆れながらブリュンヒルデに質問する。


「全く、脳が休まらないわね」

『人間の脳は、睡眠中でも機能してるわ。レム睡眠に移行している間に、あなたに意識と私が『リンク』すれば、『現実世界(こっち)』と同様に『ライド』できるだわ』

「理屈が滅茶苦茶だわ。まぁ、もう驚くことないわ」


 ブリュンヒルデに言われるがままに、私はベッドに入る。

 しばらくしてから目を閉じ、眠るのだった。


 ――――――――――――――――――――――




 同時刻 アメリカ軍基地【アリス視点】


「以上が今回の報告書です」


 上官に報告書を提出し、私は基地内の寮に戻る。今回の件は、特定部隊の不祥事とはいえ、思わぬ収穫があった。

 まさか、自分以外にも『ブレイバー』がいたなんて、思ってもいなかった。それも、自分よりも強い『ブレイバー』に。

『草薙美羽』。武装組織でも、テロリストでも軍人でもない彼女が、私は直感的に最強だと感じた。他国のサイバー部隊を束にしても、彼女に勝てることはないだろう。

 それに、彼女の仲間達もそれ相応の手練れと見る。特にあの2人のコンビネーションは、彼女に引けを取らないものだった。

 軍の中でも一部の人間しか知らない『ブレイバー』が、3人いた事は私にとって大きな収穫だった。


「また、美羽ちゃんに会えるかな?」


 彼女とまた会えることが、今から待ち遠しく感じる。彼女と行動すれば、私はもっと強くなれるかもしれない。

 そんな淡い期待をしていると、スマホから『アバター』の声が聞こえた。


『そのうち会えるでしょう。おそらく明日にも』

「あぁ、あの件? アテナはどう思う?」

『おそらくは同胞を集めるための建前でしょう。戦力を整えたいものかと』

「鋭いね。まぁ、私はそれでもいいけど」


 アテナの言葉に、何かしらの確信を得る。睡眠時間も近くなってるので、そろそろ睡眠に入る。

 目を閉じて睡眠に入ると、私の視界には電子の羅列が、無数に広がって来たのだった。

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次回は日曜日の22時頃に更新します!

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