ブレイバーについて
100年に及ぶ人類の戦争の歴史を語り終え、香里奈は『ブレイバー』について語り出す。そういえば、『ブレイバー』について話を聞くのは初めてかも知れない。そう思いながら、無機質な部屋はプロジェクションマッピングが再び映り始める。
「現代において、人と『アバター』は切っても切れないものになっている。それは知ってるわね? 人間が生まれた瞬間に自身と瓜二つのAI、『アバター』が生まれる。これはただ単に人を助言するものではなく。『現実世界』とは別の世界でも自分が生まれたとされるわ」
「『現実世界』とは別の世界? そんなものがあるというの?」
「正確には今のネットワークね。かつてのインターネットよりも、膨大な情報量を有する今のネットワークは、いわゆるもっとも間近に存在する異世界ね。SNS以上に人間同士の交流が盛んと言えるわ。でも、そんな人類でも、特殊な人間もいる。それが私達、『ブレイバー』よ。『ブレイバー』は生まれつき『アバター』を持たない。何かの拍子に交わることで、初めて『アバター』を持つ。それが『ブレイバー』よ」
プロジェクションマッピングには、人と『アバター』の映像が再生される。しかし、『ブレイバー』については別の映像が写っているようだ。
「『ブレイバーのアバター』には、それぞれ固有の呼称がある。それも大半が神話の英雄、神々の名を冠するとされているわ。私の『アバター』、アマテラスもそう。それが第一の共通点よ。」
香里奈の言葉に、美生は話始める。
「『ブレイバー』になる条件としては、1に人間の平均よりも脳が発達していること。2に高度で自立したAIを持つ『アバター』であること。3に『ギリシア・コード』を有すること。これらが満たしていることで、『ブレイバー』は初めて『リンク』することができるってお父さんの論文で見たよ」
「お父さん? 井崎博士のこと?」
「そう。10年前に、私達の父親がそれを提唱するために、この街で実験をしたの。草薙教授は研究のための場所を、井崎博士はそれを立証すること、瀬戸内社長はそのための資金の提供をしたの。でも、その研究によって、あんな悲惨の事故が起きるなんてね」
香里奈は膝上に置いている手で、ワンピースの裾を握る。美生も悲しい目をしながら、下を向く。二人の様子を見ていた私は、ノイズのような身に覚えのない風景を見る。
「どうかしたの?」
「いえ、大丈夫よ。香里奈、続けて」
私がそういうと、香里奈は話を続ける。
「『ブレイバー』は人と『アバター』が『リンク』することで、真の力を発揮する。人の体をデータとして認識し、『アバター』は自らの情報を人の肉体に適合させる。こうすることで、『ブレイバー』は『リンク』した姿となるわ。私達がああ出来るのも、脳が『アバター』のバフによって、擬似的に脳を100パーセント機能させていることになるわ」
「あのウィンドウもそういうことなのね。脳に情報が埋め込められていることになるのかしら?」
「そうね。『リンク』している状態なら、『アバター』のAIが人の脳裏に情報を送り込まれているってことになるわね。見ているものはゲームとしても、それは紛れもない現実なのよ」
香里奈の言葉に、私は少し納得する。見えてる風景はフィクションでも、それは紛れもない現実なので。そう、たとえこの手で不利益な殺しやったとしても、それはもう現実なのだから。
『ブレイバー』について話していると、翼が何かを検知し、私達に伝える。
「香里奈様! 大変です! フロントで騒ぎが起きてます!」
翼の言葉に、私達は急ぎエレベーターに向かう。
「翼は!?」
「彼女はここに居させるわ。それより、早くフロントに行きましょう」
エレベーターで25階から、1階に降りる。降りると、謎の集団が抗議をしているようだった。
「瀬戸内香里奈を出せ!」
「早く出せ! 奴のせいで、俺たちの土地が買われてしまう!」
警備員が必死に集団を止めてる。しかし、目を見るとどうやら正気ではないらしい。
「あの目って?」
「うん。ナノマシンを注入されたんだと思う。でも、ナノマシンって、昨日私と美羽でどうにかしたんじゃ?」
私と美生は、正気じゃない集団を見てそれがナノマシンによるものと判断する。どうやら、ヤクザに脅されて『アバター』を人質にされたのだろう。
「ここの地下に行きましょう。この暴動には、誰か黒幕がいる」
「地下まであるの?」
「えぇ、父が生きていた頃に大型の事業を展開すると言って、作ったのよ。でも、父が死んだことで、その事業は白紙撤回されたようだけど」
私達は、急いで地下へ降りる。香里奈の案内で、エレベーターで地下へと降りると、不自然に明かりが灯っていた。
「ここは瀬戸内グループの兵器開発部門。政府に法的に黙認されてはいるけど、自衛隊への最新鋭の装備と平和目的での世界格好への兵器の開発、供給を行っているわ。まぁ、そもそも地下の存在なんて、幹部クラスしか知らないわ」
地下を淡々と降り、格納庫らしき場所へと着く。
「この兵器も、あなたが?」
大型のロボットを見て、私は香里奈に質問する。しかし、香里奈はこれを知らないみたいだ。
「いや、知らないわ。一体誰がこれを?」
香里奈が唖然としながら巨大ロボットを見上げる。悪魔の様な巨体と、発達した2本の腕を見て、怪物を彷彿させる。
そして格納庫の奥から、黒スーツの男が現れ、私達は身構えをするのだった。
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多忙につき次回も完成次第22時頃に更新します!




