7年ぶりの再会
美生に急かされるように、カンナギ市の中心である瀬戸内グループ本社の前に着く。時刻は九時。休日出勤する会社員たちが、徐々にビルへと入っていく。学生である私達では、次元の違う場所ではあるが、ここへ来たには理由がある。
幼馴染で、現社長の瀬戸内香里奈に会うためだ。学生である私と美生がここへ来るには少し億劫になる。特に美生は政府に雇われているハッカーでもあるが、同時に『ブレイバー』でもある。だとしたら、香里奈もまたそうなのかと疑問に思うところだ。
「相変わらず大きいね。政府の官僚と来た時以来だよ」
「こんなに大きいとはね。さぁ、行きましょう」
私達は、ビルの中に入る。中に入ると、受付の人に香里奈に会いたいよう伝える。
「すいません。かり……瀬戸内社長と御面会したいのですが」
「申し訳ございません。社長は現在予定が御座いまして、今の時間面会はご遠慮させていただいておりますので」
丁寧に断られてしまい、落胆とする。しかし、その直後に受付の人に電話がかかる。しばらく待っていると、どうやら案内されるみたいだ。
「失礼致しました。社長のご友人様でしたので、今係のものがこちらに向かいますので」
案内の人は申し訳なさそうに私達に深々とお辞儀をする。しばらくして、メイド服を来た少女が、私たちの元に現れた。
「お待ちしておりました。瀬戸内香里奈の使いのものです。では、ご案内しますね」
「あ、はぁ……」
メイド服を着た少女は、私たちを香里奈のいる場所へと案内する。
「すごいわね。こんな高層階に住んでいるとはね」
「あれ? 昔からここだったけど?」
「そうだっけ? 昔は、住宅街の豪邸じゃなかったかな?」
「あれからそこを引き払って、ここに居住を移したんだよ? 忘れてた?」
「そういえばそうだったわね。しかし、30階ともなれば、街を一望できるわね」
エレベーター越しに映る街に圧巻されながら、香里奈のいる階に到着する。
「香里奈様。ご友人様がご到着致しました!」
マイク越しに香里奈に話かける。すると、スピーカーから、聞き覚えのある声が聞こえた。
『わかったわ。早く入れて』
声と共に自動ドアが開く。メイドの少女の案内に、香里奈の部屋に到着する。
「今読書中。会社のことなら専務に言って」
「もう! こんなに本を散らかして。お客様たちがいらしたのに、だらしないですよ!」
「客なんて呼んで……」
ベットを起こしながら、本を呼んでいた香里奈は、私たちの顔を見て驚く。
「久しぶりだね、香里奈。最近変わったことは?」
「美生、待っていたわ。急に呼び出し悪いわね」
「そんなことないよ。私達の仲じゃない?」
美生は香里奈と再会の挨拶をする。そして、香里奈は私の顔を見る。
「美羽。あなたも久しぶりね。7年ぶりかしら?」
「そうね。相変わらず無愛想なのは変わらないわね」
「失礼ね。これでも、昔よりは顔に出るようになったわ」
香里奈は私と挨拶しながら、体を捩りながら車椅子に座る。
「……それも治んないのね」
「これとも長い付き合いよ。もう慣れたから別にいいわ」
瀬戸内香里奈には、体に障害がある。それは、下半身不随なのだ。彼女は昔大きな事故に遭い、一命は取り留めたものの、二度と下半身を自由に動かすことができなくなった。そのため、彼女は車椅子での生活を余儀なくされ、動く時は常に車椅子で必要とする。それでもあえてリハビリをしないのは、自分の宿命ゆえのことなのだ。
「それより、二人はご飯は食べたの」
香里奈の言葉に、私と美生は見つめ合う。
「そういえば、食べてないよね?」
「えぇ、急ぎできたから、何も食べてないわね」
私達の言葉に、香里奈は微笑む。
「なら、一緒に食事にしましょう。翼、彼女たちにも朝食を」
先ほどのメイド服の少女、翼に指示をし、私達の分の朝食も用意する。用意された朝食を見ると、なんとも高級食材を使ったような食事だった。
「これは中々すごいわね」
「そうだね。こう言う機会じゃないと食べれないよね」
遠慮しつつ、朝食を食べる。朝食を食べ終えると、食後のコーヒーを用意され、コーヒータイムに入る。
「そろそろ本題に入ろうかしら?」
「本題?」
「えぇ、これから25階の部屋に向かうわ。それの方が話しやすいでしょう?」
話を終えると、香里奈は車椅子を動かす。私達は案内されるように、エレベーターで25階まで降りる。エレベーターを降りるとそこは、何もない無機質な空間だった。
「ここは?」
「特注で作らせた部屋よ。ここには一切の物を置いてないし、窓も無いから外から様子を見ることはできない。私と翼しか入ることを許さないここは、『ブレイバー』専用の空間よ」
「それにしては、随分と殺風景ね。それで、ここへ降りたには何が理由があるの?」
私の言葉に、香里奈と翼は頷く。
「翼。『ライド』していいわよ」
「はい。お嬢様」
翼がスマホを持つと、私達と同じことを行う。まさかと思い、翼の方を振り向く。
「タイコウボウ、『ライド・トゥ・ブレイバー』!」
翼の体を電子の数式が包み込む。いきなりことに、私は驚いてしまう。
「ふぅ。やはりと言うべきでしたね! この私、『T・タイコウボウ』の全知全能足る頭脳を用いれば、このことが起きることも予想できたでしょう!」
「まさか、翼も『ブレイバー』なの!?」
「そう、彼女も『ブレイバー』。でも、私達とは違い、彼女は補助に特化したタイプよ」
「当然です! 私は頭脳労働専門ですので!」
どうやら翼も『ブレイバー』だったみたいだ。性格は天真爛漫だが、どこか自意識過剰な部分が目立つ。やはり『ブレイバー』が『リンク』した姿は、『アバター』に影響されるのだろうか
そして、部屋の明かりが暗くなり、薄暗くなった一帯に光が灯る。そして、その後にあたり一帯はプロジェクションマッピングのように、100年前の映像が再生されるのだった。
「いい二人とも。これから映るのは、人類史にとって壮絶な100年の歴史よ」
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次回も多忙につき、完成次第22時頃に更新します!




