犬猿の仲
闇カジノでヤクザと対峙し、ナノマシンで搭載されて『アバター』がAIを務めるロボットを倒してすぐの事だった。主犯であるヤクザを捕えるため、私と美生は正面口までマッハで向かったが、そこにはヤクザがボロボロになって倒れていた。
そして今、その向かいには3人目の『ブレイバー』が立っていた。
「ったく、遅いんだよ。やるならもっと効率的にやりやがれ!」
そういい、私達の前に立つ『ブレイバー』の少女は、ベーシックウェアの上に和装を着ていた。大振りの棒に、巨大なリングを背に添えたものは、まるで日本神話の神のようだった。
「あなたがやったの?」
「あぁ、お前らが遅いから、偶然こっちに来たそいつを私がやったって訳だ」
「なるほど。では、あなたも『ブレイバー』なの?」
「当然に決まってるだろ? そう言うお前は――――」
私を見て、彼女は話を止める。
「なんだ、お前美羽か?」
「なぜ私の名を? 私は『ブレイバー』になって日が浅いわ」
「ま、今はいいだろう。それで? 例のナノマシンの情報は?」
「それなら、私の連れが――――」
私が美生を紹介すると、美生はすかさず少女に向けて『ゲイボルグ』を投擲する。すると、少女は背のリングで防ぐ。
「久しいわね。その上から目線の素振り、7年ぶりだわ」
「は! お前こそ、7年も閉じこもってたくせして、今更現役気取りかよ!」
二人はお互いの『ウェポン』を持ち、互いに攻撃し合う。壮絶な攻撃が、辺りに火花を散らしまくる。
「ほんっと腹立つわね! 今日こそを私が一番だって証明してあげる!!」
「上等だ!! 今日こそケリをつけてやらぁ!!」
二人の『ウェポン』が、お互いに向けて攻撃する。私はそれを唖然としながら見守る。これってもしかして、あれか。
「ブリュンヒルデ、これってもしかして?」
『犬猿の仲ってやつね。犬と猿のように、決して交わることのない不仲な関係よ』
「このままほっといたら、殺し合いに発展するのかしら?」
『推測するに、そうね。止めるなら早いうちにしたほうがいいわよ』
ブリュンヒルデと共に、二人の喧嘩を見届ける。二人は互いに一歩も譲らず、攻撃を激化させる。
「なかなかやるじゃねぇか! だがこれで、終いだ!」
「望むところよ! これで決めるわ!」
二人が互いの全力をぶつけようとした。その時、私は『ヴァルハラ』を用いて二人の攻撃を止める。
「そこまで! これ以上やったらどっちも死ぬでしょうが」
私が二人に銃口を向けると、二人は一歩下がる。そして、互いに武器を下ろした。
「危うく殺し合いに発展したわ。ごめんなさい」
「私も、情報をもらうはずが、殺し合いになるとはな。申し訳ない」
「わかればいいのよ。それと、これが例の情報よ。これで満足かしら?」
「あぁ、悪くねぇ。それじゃ、私はここらで帰るぜ」
私がナノマシンに関する情報を提供すると、少女はその場を去る。
「さて、私達も帰りましょうか」
「そうね。やることはやったし、帰りましょうか」
私と美生は、闇カジノを後にする。そして、空から路地裏に入る。そして、路地裏で『リンク』を解き、人間に戻る。
「今日はお疲れ様。明日は休みだし、お互い休みましょ?」
「うん。それじゃ、また学校で」
私達はそれぞれの家に戻る。私が家に戻ると、寝巻き姿の彩葉が玄関に立っていた。
「遅いよ、お姉ちゃん! 美生さんと何をやってたの!?」
「た、ただいま。勉強が長引いてしまって」
私の帰りが遅く、心配したのか彩葉が寝巻き姿で怒っていた。彩葉を宥めさせ、私は自分の部屋に入り寝る準備をする。しかし、長くて短い夜だった。これで当分の間は、何事も無いだろう。でも、私はつくづく感じているのかもしれない。
もし、彩葉との日常が音を立てずに崩壊しているとなると、想像ができない。そんなことを考えるのをやめ、私は寝ることにした。
翌朝。インターホンの音と共に目が覚める。音が止んだので、色葉が対応しているのだろう。起きながら、誰かが私の部屋に入る。
「おはよう。ごめんね、朝早くに来ちゃって」
「美生?珍しいわね。私の家に来るなんて」
私服を着た美生が、私の部屋に訪れる。どうやら、即急な用事があるらしい。
「実はあれから、あの子から連絡があって。早速だけど、これから行かない?」
「行くって、どこに?」
私が質問すると、美生は少しため息をしながら、行き場所を言う。
「瀬戸内グループの本社だよ」
「……はぁ?」
「だから、瀬戸内グループの本社だよ?」
突然の行き場所に、私は驚く。
瀬戸内グループとは、今や日本を代表する大手グループ会社だ。その生産力と経済力は、日本を再びアメリカに次ぐ経済大国に這い上がらせたほどで、日本のトップシェアのほとんどが、瀬戸内グループのものになっているのだ。ちなみに本社はこの街にあり、カンナギ市は瀬戸内グループの城下町みたいになっているのだ。
その社長こそが、若干17歳にして社長の座について美少女社長、瀬戸内香里奈だ。香里奈とは幼馴染であるが、経営が忙しくて疎遠になったきりだ。
そんな彼女からの呼び出しで、私と美生はこれから瀬戸内グループの本社に向かうっと言う話だ。
「やれやれ。彼女とは長い付き合いだけど、あそこに行くには荷が重いわね。いきなりの呼び出しだなんて現実的じゃないわ」
「でも、何かあるんだと思う。私は彩葉ちゃんとお茶しながら待ってるから、着替えてね」
そういうと、美生はリビングに向かう。さて、どんな服を着ていこうか。
こうして、私はしばらく着替えに悩みつつ、美生と共に瀬戸内グループの本社に向かうのだった。
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多忙につき、次回も完成次第、22時頃に更新します!




