第2話
コンコンコンと3回ノックの音が部屋中に響く。
どうぞ、というまもなく、ドアの方に俺が注意を向けていると、先ほどとは別の男性と女性が並んで入ってくる。
さっきの人たちは彼らの後ろからついてきた。
「彼がそうなのか、思ったのとは違うな」
「今はモデリングされた非実態状受肉体ですので。写真や映像と比べたら雲泥の差があります。一方で中の意識や魂は完全にオリジナルです。そもそも魂魄体理論によって明らかになった通り、魂に記憶された事柄と体で記憶された事柄が違いますが、相互に理解しあえる状態にありますので」
チンプンカンプンというのはこの状態のことを指すのだろう。
「一体全体、何がどうなってやがるんだ」
「ああ、これは失礼をしました。当プロジェクトの主任技術者を務めております中井一正と申します。如月カズヤさんで間違いないですね」
「そうだが……」
寝ていたらこんなところに来ていた、と言っても信じてもらえはないだろう。
でもその通りなのだから何と言っていいものやら。
「魂魄体理論というものをご存じでしょうか」
「魂魄……なんだって?」
それぞれの単語は知っているものの、それが一緒になったときの理論なんて聞いたことがない。
「では、あなたは小説家だったということは覚えておられますね」
「もちろんだ」
とはいってもまだまだ駆け出しのネット小説家だが。
それでも知ってくれているのはうれしい。
「いろいろな作品を書かれていましたが、何か一つでも詳しくお教えいただけますでしょうか」
「そうだな……」
と言いつつ、俺はほとんど最初のころに書いた作品について、彼に説明を始めた。