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第1話

ピンピンピン、とぼやけた電子音が聞こえてくる。

声もすりガラスの向こうのものからだんだんと輪郭をはっきりとさせてきた。

「よし、目覚めたぞ」

「おはようございます。今の年月日を教えていただけますか」

男女の声が聞こえてきた。

「いmq、今は、2025年8月15日」

日付は間違いないはずだ。

「……計算通りだ。ようこそ、お待ちしておりました。あなたの名前を教えていただけますか」

何が計算通りなのかさっぱりだ。

「如月カズヤ、生まれは2001年7月18日、A型プラス」

「あ、大丈夫です。本人確認は取れましたので」

何が何だか。

「では目を開けていただけますか。如月さん」

ゆっくりと目を、細い線から面に、そして周囲は立体へと。

意識も周囲から流れ込んでくる。

病院、真っ先に思い浮かんだのはそれだ。

綺麗な白を基調とする部屋は一切薬品の匂いなんてしない。

それでもなお俺が熱中症か何かで倒れたんだと、そう思っていた。

ベッドは俺が半身を起こしたせいでシワが寄っているが、それすらも芸術のように感じられる。

「ここは?」

まずは疑問に思うことだろう。

「ここは手野病院です。あなたはここで目覚めたのを運命だと感じますか」

何の話だ。

「そうかもしれないですね。それで、どうして俺はここに。熱中症には気を付けていたんですが」

空咳をしながらも、彼らと話をする。

「魂というものを信じますか」

「はぁ?」

思わず声で否定してしまう。

「如月さんが来たという2025年。あなたがいた年代から見るとここは200年後の世界になります。あなたの体はまだ2025年にありますが、我々はあなたをここに招待することができました」

こいつらいかれている。

とち狂ったとしか思えない単語がどんどんと出てきていた。

「これからあなたの個人情報を、国際政府機構のデータベースと照らし合わせます。すぐに終わりますので」

俺から見ると男は医者で女は看護師だ。

ただ真っ白いスーツを着ているというだけで、それすらも彼らには合っていない。

男が空中を何か指でなぞったり叩いたりしている。

女はというと、物理的な行動で、俺の腕についていた何かを剥がしているところだった。

「おや、すごい人を連れてきたようだ」

国際政府機構なる組織のデータベースには俺のものもあったらしい。

だが、一般人、の枠ではなかったようだ。

「これはこれは、ちょっと想定外だな」

数秒考えて、男は自身の右耳をトントンと叩く。

「ええ、すいません、招待課です。ちょっとした問題が生じました。ええデータベースのランクはプラス8デルタです。分かりました」

「どうしたんですか」

俺が声をかけるが、医者は看護師と目配せして、一瞬で何かを通じ合ったようだ。

「少しばかり急用ができました。ちょっとの間、失礼をします」

言って、すぐに部屋から二人ともいなくなってしまう。

一体全体どういうことか、何もわからない俺だけは、部屋の天井のシミを数えるだけだった。

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