5 できないことができるようになる喜び
闇属性最強召喚獣ルシファー召喚のため結婚すると決めたのはいいが、肝心な結婚相手を見つける方法とやらがまるでわからないことに朝起きて気がついた。
俺には両親がいない。
正確にはこうして人として生まれている以上いるのだろうが、俺は知らないし、今更知ろうとも思わないし、必要性も感じていない。
俺は孤児院で育てられ、三歳の時に師匠に魔法の才を見出され引き取られた。
それからは師匠の家で奥さんに毎日三食美味しいご飯を食べさせてもらい、個人の部屋まで与えられ、毎日ふかふかのベッドと暖かい風呂が用意される家で大きくなった。
師匠と奥さんには感謝してもしきれない。
俺の生涯をかけて恩を返していくつもりだ。
俺は九歳で王立警備隊に配属され、十歳で隊長になり現在十七歳なわけだが、ふと気づけば、友人と呼べるような人間もいないし、昔から同僚も皆年上で、最近になって同年代も増えてきたが、今のところほとんどが部下だし、さらに気づいたが、そういえば俺は師匠の奥さんと師匠の五人の娘さんと警備隊の女性くらいしか話したことがない。
こんなんで結婚できるだろうか。
嫌、諦めちゃいけない。
最初は誰だって何もできないものだ。
できないことができるようになる喜びを俺は知っているじゃないか。
頑張ろう。
そう決意を固めて昼休憩に食堂に入ると丁度おあつらえ向きな男がいたので捕まえた。
「ナック」
年は離れているが同期なのでそれなりに話したことがあるし、ナックはおしゃべりで顔の広い男だ。
相談相手に丁度いい。
きっといい知恵を授けてくれるだろう。
そう、わからないことは聞けばいいんだ、人に。
「お、カノン。どうした?」
「相談がある。話を聞いて欲しい」
「カノンが?そっか、まあ、何でもお兄さんに言ってみなさい」
「実は結婚しようと思っているんだが、どうやったら相手が見つかる?」
「は?結婚?お前が?」
「ああ」
「って、何でだよ。まだ十七になったとこだろ。まだ身を固めるには早いんじゃないのか?」
「どうしても結婚しなければならないんだ。魔法使いとして高みを目指すために」
「はぁ、まあ。よくわかんねぇけど、結婚したいんだな?」
「ああ」
「ああ、まあうん。じゃあちょっと、まあ聞かせてもらおうか」