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ドラゴン登場

 ハウスでの一件以来、リュミレール家は騒がしくなっていた。やれ、息子を(はら)ませたやつを探せだの、相手は誰だのと、あり得ないことばかりが飛び交っている。

 その元凶とも言えるのが、俺の腕の中で眠っている不思議な生き物だ。ただこの生き物、俺の記憶が正しければ【ドラゴン】という種族だった気がする。


 そのことを皆に伝えようと、執務室へと向かった。


 □ □ □ ■ ■ ■


「ど、らごん? ……まさか、あのドラゴンだと!? そう、言いたいのですか!?」


 意気揚々とふんぞり返りながら扉を開けてみれば、 父さんが机をバンとたたいて叫んでいた。

 相手はおじいちゃんで、机の前で腕を組んで頷いている。


「うむ。間違いない。ワシの記憶が正しければ、あの卵から生まれたのは、ドラゴンに相違(そうい)ない」


 慌てふためく父さんに対して、おじいちゃんはかなり落ち着いていた。

 父さんは口をポカンと開ける。かと思えば、険しい顔で自身の頭をくしゃくしゃした。

 二人は俺が部屋に入ってきたことも気づいていないようで、あーでもないこうでもないと口論を続けていた。


 そして俺はと言うと、二人に声をかけることなく、部屋の中央にあるソファに座る。向かい側には弟のフリックがいた。だけど俺が隣に座らないことを不思議に思っているようで、小首をかしげていた。手でソファーをポンポンと軽くたたき、こっちにおいでと誘っている。


 俺は首を振って遠慮した。だって、フリックと顔を合わせるのも辛いのに。隣に座るなんてできるわけがない。俺のことが嫌いなくせに、興味なんてなくなったくせに、ああやって何事もなかったかのように接してくるんだ。

 ちょっとだけ腹が立つな。

 同時に悔しさと、兄離れした弟を許すことができなくなっていた。そんな自分に苛立ち、貧乏揺すりをしてしまう。


「ちょっ……兄さん、どうしたのさ!?」


「え? あ、えっと……」


 落ち着いてよと諭されてしまった。

 

 俺は深呼吸をし、未だに口論を続けている父さんたちを直視する。

 何か知らない間に二人は取っ組み合いを始めていて、筋肉と汗がぶつかっていた。暑苦しい。実に、暑苦しい。


「もう! 二人とも、いい加減にしなさい。話が進まないよ!?」


 腰を上げて、二人の間に割って入った。


 彼らは、バツが悪いと言わんばかりの表情になる。そして俺へと向き直り、わしゃわしゃと髪を(いじ)ってきた。


「うわっ!」


「ふっ。すまないなシェリス、そうだね。確かにお前の言うとおりだ。お義父(とう)さん、今はあの卵について話し合いましょう」 


 おじいちゃんと父さんはニヒルに微笑する。そして父さんはフリックの隣へ。おじいちゃんは俺の隣へと座った。

 そして俺たちは早速、あの卵……ドラゴンについて話をする。


「──まずは、あの卵。どう見てもあれは、普通の卵ではなかった。ワシらは、そこから疑問を持つべきじゃったと思う」


 おじいちゃんの言うとおりだ。真っ黒という時点で、普通ではないということはわかりきっていたことだろう。だけどあの卵には前例がなく、突然変異の何かとしか思われていなかった。

 まあ前例がないとなると、考察も何もあったものじゃないけどさ。


「そうですね。ただ……お義父(とう)さん、あれは本当に、ドラゴンなんでしょうか?」


「む? どういう意味か?」


 父さんは何か引っかかっているよう。ソファーに深く座り、卵の殻をテーブルの上に置いた。


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