表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/106

世界の秘密

 わたあめのようにふわふわとした雲の中を突っ切って、今度は真っ白な山々が連なる場所へと到着した。山の上で翼をはためかせながら、ドラゴンは上空で立ち止まる。

 

『──我らドラゴンの役目は、人が発展し、力をつける。そして増えることを阻止するために、造られた存在だ』


 ドラゴンたちの住む空の彼方に、神と呼ばれし存在がいた。その者は地上の人々の発展を願う反面、増えすぎた悪を減らそうとしているらしい。

 彼らドラゴンはその神の使いであり、代弁者でもあった。


『ただ、神は気まぐれでな。我らドラゴンには、自由な心を与えてくれた。人間の味方をしたければ、すればいい。神の側についたままでもよし。その心は自由であり、縛られてはならないのだと』


 翼を大きくばたつかせる。そして空…… 今いる上空よりも、ずっと先を指さした。


『我らドラゴンと神が住む地は、フォトグラスと呼ばれている。神がそう名付けたからだ。だが、その地の詳細を話すことは。禁じられている。例え、お前たちの仲間になった我とてな』


 顔を背中に向けて、ウィンクする。


 俺は(はや)る気持ちを抑え、ドラゴンにあることを尋ねた。それはずっと気になっていたこと。俺の住んでいる時代ではわからないこと。

 深呼吸をして、一語一句違えず伝えた。


「フォトグラスには、どうやって行くんだ?」


 緊張する。手に汗が(にじ)み、体が少しだけ震えた。だってそれは、ずっと知りたかったことだから。

 わくわくと同時に、期待が俺の胸を圧迫していった。


 眼前にいるドラゴンへ目をやれば、太い首を左右に揺らしている。けれど少しして山の上空でとまり、ゆっくりと降りていった。


 降りた先は雪山だ。辺り一面、純白で埋め尽くされている。


 ドラゴンは俺たちを降ろすと、(おもむろ)にタマを呼びつけた。


 タマは『なあ、に?』と、たどたどしい口調でドラゴンに近づく。


『フォトグラスへ行くためには、ドラゴンの卵の(から)が必要となる』


 ドラゴンの頭の上で楽しそうに遊ぶタマを見つめながら、彼は白い息を吐いた。かと思えばタマに爪を立て、宙ぶらりんにする。

 驚く俺たちをよそに、ドラゴンはガハハと笑った。


『安全せい。こんな子供に、何もせんよ。それよりも……こやつは、産まれたばかりであろう?』


「え? あ、うん」


 ぶらぶらと遊ばれているタマを、ドラゴンが背中に乗せる。そしてタマを指差し、がに股でその場に座った。

 未だにタマの方はきゃっきゃっと、空気を掴まないまま楽しんでいる。


 俺は少しだけハラハラしてしまった。だって、このドラゴンが何をしようとしているのか。それがわからないんだ。

 もしもタマに何かしようものなら、容赦なく丸焼き決定だな。


 そんな物騒(ぶっそう)極まりないことを考えていると、ドラゴンが腰を上げた。そして俺とフランネージュに再び背に乗るように促す。

 俺たちはまた上空へと飛び立った。


『よーく、聞くがよい。フォトグラスへ向かうには、ドラゴンの卵から作られた服、そして乗り物でなければ無理だ』


「……っ!? な、ぜ!?」


 上空に昇るのは楽じゃない。こうやって話を聞くのも、喋ることすら厳しいんだ。

 目を開けることはおろか、息を吸うことすら困難。ひゅーひゅーと、喉の奥から痛みを伴っていく。


 ふと、ドラゴンは途中でとまった。そして俺たちを見るなり『苦しいであろう?』と、語りかけてくる。


『この気圧の変化、そしてほとんどない空気。これに耐えられるのは、我らドラゴンのみ。だからこそ卵の殻を使って、抵抗を最小限に抑えた物を作る必要があるのだ』


 ゆっくりと、俺たちを気づかいながら、ドラゴンは地上へと降下していった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ