第1.5話 結局キミってなんなの?
「んぐ…んっ…ぷはー!生き返った!」
「ハハ…そりゃよかったよ…はぁ…」
リリアンはあの後自分の脚を掴んできた腕との引っ張りあいの末に地面の下に埋まっていた少年の顔を掴み身体全体を引っ張りだし、携帯していた水筒の水を飲ませた。
「いやー本当に助かったよ!二日前にここを歩いてたら急に地面が沈んでそのまま生き埋めになってさぁ、引っ張り出してくれなければヤバかったよ」
「疲れたぁ〜。まぁ生きててよかったよ。キミ名前は?この辺の人?」
水を飲み終えた水筒を受け取ったリリアンは少年に質問をぶつける。
「俺は恭太郎。最近この辺に来たんだ」
恭太郎と名乗った少年はあっけらかんと言った。
「ふーん…旅人ってやつ?」
「まぁそんなもんかな」
(なんか怪しいなコイツ)
この短いやり取りからリリアンは恭太郎と言う男の存在を怪しいと感じた。
このソーブル山は登れば無事に降りられる可能性が低いとされる危険な山であり、登るのは財宝が隠されている等と言った根も葉もない噂を信じるバカ位であるというのが近くの町に住む人々の見解であった。
(なんでわざわざこんな危ない山に登ってるんだろ…?何も知らないから観光気分で?それとも私と同じで『魔獣の卵』を狙ってるから?)
何も知らないからこそ登ったのかそれとも別の目的か…もし自分と同じく『魔獣の卵』を狙っているのだとしたら、なんとしてもこの男より先に手に入れなくては等と、まだ詳細が判明する前からリリアンは様々な考えを巡らせる。
すると恭太郎は口を開き、この山に登った理由を語る。
「いや〜なんて言えばいいのかな?近くの町からこの山を見た瞬間になにか有るなって感じたんだよ。なんか登んなきゃいけないなって」
「それが理由?」
「うん。それで気が付いたら登ってたんだ。理由としては変過ぎるってのは自分でもそう思うんだけどさ」
「…そう、なんだ…。キミ本当に大丈夫?後で絶対に病院で診てもらいなよ?」
話しを聞いたリリアンはそのよくわからない理由に余計に混乱した。
そんなリリアンを横目に恭太郎は遠くを指差しながら尋ねる。
「ところでさ、さっきからこっち見てるアレって人かな?でもなんか下半身が馬っぽくない?」
「へ?」
恭太郎が指差した方向には一人の男が佇んでいるように見える。
しかしそれは人間と呼ぶには異質な姿をしており、上半身は美しい肉体美を持つ男の姿をしているが、下半身は茶色い毛に覆われた馬のようだった。
そして左手には弓をもっており、背中には撃ち出す矢をストックしておく為の箱を背負っている。
これはまるで…
「…ケンタウロスだ」
リリアンはその名を呟いた。
「ケンタウロス?それがあの人の名前?」
「違うって!多分あれはケンタウロスって言う魔獣の一種だよ!そっかぁ~やっぱりこの山には魔獣が住んでたんだ!」
初めて見た魔獣の存在をリリアンは興奮気味に恭太郎に説明する。
するとケンタウロスは四本脚を二人に向けて近づきながら口を開いた。
「君たちはこんなところでなにをやっているのかね?」
(喋った!)
リリアンはケンタウロスが喋れると言う点と物腰の柔らかそうな紳士的な雰囲気に驚きながらも返答する。
「は、はい!えと私はトレジャーハンターで『魔獣の卵』を探してて、こっちの彼とはさっき知り合ったばかりなんですけど…。そ、それで」
「魔獣の卵?」
『魔獣の卵』と言うワードを聞いた瞬間ケンタウロスの眉がピクッと動いた。
すると歩みを止め、弓を構え右腕で背中の箱から矢を取り出し、その矢を添えながら弓の弦を力強く引く。
「あ、あの〜?」
明らかに矢でこちらを射抜こうとしているケンタウロスにリリアンが問い掛けようとしたが、それに対しケンタウロスは、
「そんな物を求めるなんて…なんて悪い子達なんだ!!」
そう叫ぶと指から弦を離し矢を放った。




