第1話 土の下から出て来たそれは…!?
そこは人が殆どよりつかない山だった。その山に訪れた半数以上の人が生きて帰ってこなかったからだ。
いつからかその山には人を喰らう大熊が住み着いているだの盗賊達の根城にしている等といくつもの真偽不明の噂で溢れていた。
しかし、そんな山に今日も足を踏み入れる命知らずがここに一人…
「も〜!本当にこんな山に魔獣の卵なんてあるの〜?」
彼女の名はリリアン
数日前からこのソーブル山に何度も登り、山の何処かに隠されていると噂されている『魔獣の卵』を探し求めている“自称”トレジャーハンターの少女だ。
「やっぱデマ情報掴まされたのかな…」
リリアンはとある情報筋からソーブル山に魔獣の卵は必ず隠されている確信し、登山を繰り返していた。だが、目当ての物は一切見付けられず時間だけが過ぎている。
とりあえず今日は山の峠まで登り、そこで何も見つけられなければ帰ろうと考えながら山道を歩いていたが、リリアンは突如歩みを止めた。
「…なにあれ…」
彼女が目にしたのは地面から突き出た人間の腕だった。
山道から人間の腕が突き出てているという異常事態にリリアンは理解が及ばずしばらくその場に立ち尽くしていたが、ふとした瞬間に視界内に捉えていた腕がほんの少しだがピクリと動いた。
それを見た瞬間にリリアンは全速力で山道を駆け下りた。
(ヤバイヤバイ!!地面から人間の腕が突き出てるとか絶対ヤバイよ!)
命の危機を感じたリリアンは額に脂汗を浮かべながらも全力で走る。このままこの山に長居するのは危険だと判断したからだ。
だが走り続ける脚も徐々にスピードが遅くなりそして完全に止まった。それは走る体力が尽きたのではなくふとした疑問が彼女の中で浮かんだからだった。
(あの腕…一瞬動いたよね…ってことはもしかして埋まってる人はまだ生きてる…?)
地面から突き出ていた腕が動いたということはもしかしたら埋まっている人がまだ生きているかも知れない。そう言う考えが頭に浮かぶと途端に気になり脚を止めると、そのまま来た道を振り返り、少し考えた後に再び傾斜になっている山道を登り始めた。
◇◇◇◇◇
あれから約10分後程経ってからリリアンは再び腕が突き出ている地点まで戻って来た。
今度はより近くで腕を観察してみる。
(やっぱりこれ人間の…右腕だ。そんなに汚れてないように見えるし、地面に埋まったのは割と最近かな)
そんな風に分析しつつリリアンは腕への距離を詰め、戻ってくる道中で拾った木の棒で腕を軽く突付いてみる。
「つんつーん…って動かないな。さっきのは見間違えだったのかな」
などと油断して更に突付こうと近づいた瞬間右腕がリリアンの足首を掴んだ。
「ヒッ!?」
掴まれた瞬間口から小さく悲鳴が漏れ、そのままバランスを崩し倒れそうになるがなんとか堪える。
全身が強張り、一気に身体が熱くなるのが分かった。
(…ま、まさか…)
一瞬の出来事だったが、今の状況は理解出来た。しかし、もしかしたら勘違いかもしれない。その可能性もあるかもしれないとゆっくり視線を下ろし、改めて自分の足首を見るとやはり腕に掴まれていた。それもがっしりと。
「ギィィィィヤァァァァッ!?」
確認した瞬間リリアンは絶叫した。
そしてそのまま走り出そうとするが当然掴まれているので走り出せずそのまま転けた。
「イヤァァァ離してぇぇ!」
掴まれ続けてなお走り出そうとするリリアンだが、当然動けない。しかしパニックになっている彼女の身体にはいつも以上の力が入る。
「無理無理無理!ヤダーッ!ふんぬッ!」
リリアンはまさしく火事場の馬鹿力とでも言うような凄まじい力で掴まれている脚を思いっきり引っ張った。
すると掴んでいた腕が引っ張り出される形で地面が盛り上がり、そこから人間の顔が飛び出した。
そして飛び出た顔は
「ぜぇ…ぜぇ…ごほ…み、みずぅ…」
と微かに声を漏らした。
この日はリリアンの人生において忘れられない一日となる。




