初めの一歩
目を開けると、まわりは全て、花と川で囲まれていた。多分ここは、三途の川なのだろう。ここを渡れば楽になれるのか、など思っていると、なにか音が聞こえてきた。それもだんだん近づいてくる。
「た...なた....そなたよ。生きるためには無欲でありなさい。無欲と言っても生きるのを諦めるのはやめなさい。そうすれば最後、良い事があるでしょう。かならず生きていきなさい」
そう言われたあと、パッと全てが無くなっていた。
起き上がり辺りを見渡す。やはり、ベットとトイレしかない部屋に戻されていた。だが、1つ違いがあった。
そこにはまだ、中性的な人が残っていた。その人は口を開く。
「やっと目を覚ましたか。あたいの言葉分かるか?あんた、よく分からない言葉を話していたからな。ちょいと、頭の中を変えさせてもらったよ。」
私は呆然とした。頭が治っている。しかも血だらけでは無い。そして、言葉がわかると分かったとき、涙が溢れてきた。わかる。言葉がわかる。
言葉がわかる、わからないだけでこんなにも違うものかと、痛感した。ごめん、神様?小さなことだけど無欲であるというのは、守れない。心の中には話したいという欲があった。
「あぁ、伝わる。そしてありがとう。通じるようにしてくれて」
涙が止まらない。
「と、とりあえず、あまり泣くな。あたいがリーダーに怒られちまう。そういえば、まだ、なんだって?私は、遠慮しとくが..まぁ、頑張れよ?」
そうだった。この人の前で発言したんだった。と言ってもめちゃくちゃ恥ずかしいという訳でもなかった。疲れてるのもあるが。
「私の仲間はどうした?1人いるのだか」
洋介のことを思い出し聞いてみる。
「あぁ、あのうるさいヤツね。あんたと同じような部屋で過ごしているよ。」
「そうか。とりあえず良かった」
安心して腰が抜けそうになる。
「まだ名前を言ってなかったね。あたいは、ミシスト・マイネミ。こう見えて、一人前の冒険者であり、この世で珍しい魔法使いでもあるのさ」
ミシストは、ドヤっとしている。
「私は、宗 英人。ただの一般人だ。よろしく」
「よろしくな」
ミシストと握手をかわすと、実感がでてきた。
ようやくこの世界からの第1歩って感じがした。
「あっ!先輩!良かったです。無事で」
「なんとかな」
頭をえぐられたことを思い出す。たしかにあれは、想像を絶する痛みだった。洋介はなにかされなかったか聞いてみたが...
「いや〜なんか手を頭にかざされたあとに光が出てきたんですよ。そしたらなんと、この世界の言葉が話せるようになったんですよ!」
ふざけんなという気持ちが少しあったが、それほどの気力は残っていなかった。
「お前は気楽でいいよな」
そう言うと、洋介はキョトンとした顔をしている。
「なんでですか?何かおかしいことでもありましたか?」
なんでもないよと言いながら、薄暗い家から、外へ出た。
「来たな、お前たち。今日ももう日が暮れそうな時間だし、服だけ買いに行くぞ」
笑みを隠しきれていないミシストが言った。多分、背丈が問題で部下とかがいなく、こういう集団で買い物が出来なかったとかであろう。
それに応えるように、洋介が笑顔で、
「よろしくお願いします!!」
と言っていた。
読んでいただきありがとうございます。
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