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神隠しに合う幸せ

作者: 炭水化物

ねえ、私ずっとここにいてもいい?

神様の住むと言う春岳山に家族で出かけた私

所謂迷子となったのだが、たどり着いた一件の屋敷

そこにはとても美しい人がいた。

「どうしましたお嬢さん。迷子ですかな」

そう優しく尋ねてくれた。

迷子?そうみたいです


私には可奈子と言う妹がいる。可愛らしく愛想の良い妹は我が家のアイドル

母は可奈子を溺愛しており、なんにつけても可奈子が中心。

別に私が中心でいたかったわけでもない

ただ私のことも少し気にかけて欲しかっただけ。

妹のお誕生日はレストランで豪勢にお祝いする

兄のお誕生日はお家でパーティー

私のお誕生日はいつも忘れられて何もない


学校の三者面談なんかも勿論忘れられていて、担任が電話すると妹と買い物に出掛けていたと。

結局母は来ず二者面談となったりした。


私が何かを主張すれば貴方お姉さんなんだから我慢しなさいの一点張り。兄からすれば妹なんだけど。


母から見れば大事な長男と可愛い妹

それだけが我が子なんだろう


段々自己主張するのも諦めて何も言わなくなったら最近は存在すら忘れられてるのか私のお弁当は作って無かったりひどい時は食事さえない時もある

妹や兄の食事が不要な時は父と2人で外食に出掛けており、私の事には父も母も気づかない

もしかして私は自分だけが生きていると思っている幽霊なのかしらと思ったが大学生の兄が時々私に気を遣ってお土産など渡してくれるので人として認識されているのだと思う。


ある年家族で旅行に行く事になった

多分私は忘れられて置いてけぼりだろうと思っていたらどうやら私も参加出来るらしい。

知り合いの別荘で宿泊しハイキングをすると。

妹は早速新しい靴や服を買い与えられていた。


その日は晴天でハイキング日和、母は張り切ってお弁当を作っていた。準備が整い家族揃って山登り。

私は自分も家族の一員として参加している事に浮かれていたのかもしれない。山道を歩いている途中急に飛び出して来た小動物に驚き、よろけた瞬間妹にぶつかって転けてしまった。

妹もよろけて膝を擦りむく怪我をした。私は大きく転んだので両手両足に大きな擦過傷ができ一部裂けて切り傷になっていた。


母は妹に怪我をさせた私を詰り、ハイキングは中止

妹を病院に連れて行くと父をせかし、兄に荷物を運ぶように指示して妹を抱き抱え足早に歩いて行った。

父も兄も呆れてはいたが母に従い歩いて行く

私は遅れ無いよう必死で付いて行ったが怪我が痛くて歩けなくなった。私の方が怪我酷かったのにな。

私がここで消えてもきっと誰も気づかないだろうな。

ここで死んでも悲しむ人なんていないんだろうな。

なんて思うと付いて行くのが馬鹿らしくなり座り込んでしまった。


しばらくぼーっと座っていたがふと目の前に綺麗な花が咲いている小道を見つけた。

天国へ誘う道かしらなんて心の中で戯けながら歩いて見る。

しばらく行くと一件の屋敷の前に出た

こんな所に家が?と訝しげにみていると中から驚く程綺麗な人が現れた

「どうしましたお嬢さん、迷子ですかな」

そうみたいですね。

「おや、怪我をされてるようですね。お手当しますので中にどうぞ」

そう言うとその美しい人はうちの中に誘ってくれた。


傷の手当を受けながら温かく声を掛けてくれる優しさに触れるうちに私は涙が止まらなくなった

「どうしました?傷が痛みます?家が恋しくなりました?」

美しい人が色々尋ねてくれましたが私は首を横に振るのが精一杯でうまく答えられなかった。


私が落ち着くまでお茶お淹れてもてなしてくれた美しい人に

何かあったのかな、よかったら話してごらん。人に話すとスッキリすることもある。と言われ今まで自分が感じていた疎外感や寂しさ居場所のなさを打ち明けた。

あの家にもう帰りたく無い、消えて無くなりたい。

そう言うと

「しばらくここにいれば良い。帰りたくなったら送っていこう」

そう言ってくれた。


しばらくここに住んでみてわかったことだがあの美しい人は山神様のようだ。

山道で飛び出して来た小動物は山神様が使役する狐でコンと言う。コンは脅かすつもりでは無かったのに怪我をさせてしまってすまなかったと私に謝って来た。

狐が喋った!と初めは驚いたが段々と慣れてくるものなのね

今では普通に会話を楽しんでたりする


ここでの生活は楽しい。薪割りや火おこしは大変だけど畑で取れる野菜や川の魚何故か定期的に届くお米や調味料。

生活に困る事は何もない。時々山神様に家に帰らなくてもいいのかと尋ねられる事もあるが、もう帰りたく無い。

ねえ私ここにずっといてもいいよね?と聞くと

神様は好きなだけいるといいと頭を撫でてくれた。

時々山を降りて街の様子を見に行くコンによると私がここに来て3日後くらいに急に私の捜索が始まったそうだ。

3日もいない事に気づかれ無いなんて、改めて私の存在価値の無さを思い知ったが逆におかしくなって笑ってしまった。


ここには時々迷い込む子供が来る

大なり小なり心に傷を負って

でも、みんなここで癒されて帰って行く

ちゃんと山神様が家まで送って行く

ここでの記憶を消して

人はそれを神隠しって言うんだって

でも、私はずっとここにいる

神様とコンと3人で幸せに暮らしていく



母side


私はあの子が嫌いだったわけではなかった。

私は子供の頃から容姿にコンプレックがあった。

それでも大人になりそれなりに綺麗に着飾り今の夫と知り合い家庭を持つことができた。

生まれて来た長男は夫に似て綺麗な顔立ちをしていた。

長女が生まれて来た時、私に似た顔立ちを見て嫌悪感を覚えて、可愛いと思えないまま接していた

とても可愛らしく整った顔立ちの次女が生まれた時はこの世の幸せは全てこの子のためにあると思えるくらい愛おしく感じた。

成長するにつけ愛らしさが増す次女

私は夢中になって行く。

たまに目に入る長女の事は邪魔でしかなかった。


あの日山で怪我をした次女

長女がぶつかって転けて膝を擦りむき大泣きをしていた。

私の大事な次女に怪我を負わせた長女に罵詈雑言を浴びせたのは覚えている。長女の方も怪我を負っているのもわかっていた。次女の事で頭がいっぱいになり長女の怪我なんかかまっていられなかったが長女の青ざめた表情だけは覚えている。


夫の車で次女を病院に連れて行き治療を受けた頃にはすっか暗くなり泊まっていた別荘に戻るよりはと親子4人で近くの温泉旅館へ泊まった。息子や夫は長女の事を気にしていたが

あの子はしっかりしてるから別荘に戻ってなんとかしてるでしょと言うと渋々納得してくれた

翌日すぐに別荘に戻るつもりが近くの観光地に興味を持った次女にねだられ観光して戻る事になり、別荘に戻ったのはかなり遅い時間だった。


別荘の中は空っぽで長女が戻って来た様子はなかった

長男と夫が怪我をした辺りの山道まで探しに行くと長女の持っていた水筒だけが残っておりどこにも姿が見つからなかった。翌日捜索願いを出し大掛かりな捜索を行ったが結局長女は見つからなかった。行方不明になった経緯を聞いて捜索隊は私達家族に対して呆れているのがわかった。


あの日すぐに戻ればよかった。翌日も直ぐに戻ればよかったのにと夫や長男に責めらたが、戻らなかったのは皆同じじゃ無いと喧嘩になった時、次女が「お姉ちゃんなんていてもいなくても一緒っていつもママが言ってたじゃん。ママもパパもお姉ちゃんの事嫌いだったんでしょ。もうどっかで死んでんじゃ無いの、不細工で暗くて鬱陶しだけのどうでもいい子なんだし、いなくなっても困らないし逆にラッキーじゃん」と天使のような笑顔で言い、皆が固まってしまった。


あれから我が家はバラバラとなった

天使のような姿の悪魔の様な次女

家に寄り付かなくなった長男

話をしなくなった夫

あの子に愛情を持てなかった私の罪なのか

最初からあの子がいなければ幸せな家庭だったのでは?

色々な思いが錯綜したがいなくなったあの子は戻ってこない

そして幸せな私の家庭も戻ってこない


いつものごとく思いつつまま書いてみました

誤字脱字ありますが悪しからず

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