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主人公降格!? ~協力者のはずの幼馴染に主役の座を奪われました~  作者: 金谷羽菜
第13章

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第14話 龍生、祖父からの情報に落胆する

 龍之助から聞いた話には、本当に()()()()()()()()()()


 わかったことは、仁が龍之助に、


「十年ぶりに父親から連絡が来たのですが、会いたくなかったので、無視をしていたんです。すると事務所の方に、『お前がその気なら、こちらにも考えがある。おまえが冷たくなったのは、十年前からだからな。こうなったら、積年(せきねん)(うら)みを晴らしてやる』というような内容の手紙が届きまして……。『十年前』というのは、当然、父が引き起こした誘拐事件のことを指しているのでしょう。しかし、その後の『恨みを晴らす』というのが、いったい誰に対してなのかが、ハッキリしないのです。よもや、秋月家に対してではないだろうと思いたいのですが……。父のことですから、逆恨(さかうら)みと言うことも充分あり得ます」


 ということを話した後、『私も、父のことはよく見張っておきますが、秋月様も、どうかお気をつけください』と注意を(うなが)し、『またしても、ご迷惑をお掛けすることになってしまい、誠に申し訳ございません』と()びて、帰って行ったという。


 それから、ある者(これはたぶん、堤のことだろうが)に調べさせたところ、五十嵐信吾が、最近、(たち)の悪そうな若者に声を掛けまくっている――ということがわかったそうだ。


「それでは、五十嵐が、十年前の事件のことを逆恨みして、何かしようとしている――ということしか、まだわかっていないのですね?」


 内心がっかりしつつ龍生が訊ねると、龍之助は渋い顔をしてうなずいた。


「ああ、そうだ。複数の者に調べさせてはいるのだが、なかなか尻尾(しっぽ)を出さん。信吾は大馬鹿者ではあるが、臆病(おくびょう)で小心者でもあるからな。用心深いのだ。……しかし、若者に声を掛けまくっているというところが、気に入らんな。あやつはまた()りもせず、自身の手は一切汚さず、他者を裏で操ることで、何かしら仕出かそうとしておるのだろう。まったく、相も変わらず卑怯(ひきょう)な奴よ。父親とは似ても似つかん。母親にも似ておらんがな。……まっこと人間というものは、血の繋がりだけでは計れんものよ」



 龍之助が言う、『父親とは似ても似つかん』の〝父親〟とは、五十嵐忠司のことだ。

 忠司はヤクザを生業(なりわい)としていた訳だが、現在で言うところのヤクザとはかなり違い、何よりも〝任侠(にんきょう)〟の精神を重んじていた男だった。



 任侠とは何か?

 辞書を引いてみると、〝弱い者を助け強い者をくじき、義のためならば命も()しまないといった気性に富むこと。おとこ気〟とある。



 それに対し、ヤクザとは何か?

 同じく辞書を引いてみると、〝三枚ガルタの賭博(とばく)で、八九三(やくさ)の三枚の組み合わせで最悪の手となるところから、〈一〉役に立たないこと。価値のないこと。また、そのものや、そのさま。〈二〉ばくち打ち・暴力団員など、正業に()かず、法に(そむ)くなどして暮らす者の総称〟とある。



 今となっては、ヤクザも任侠も、同じ意味のように(とら)えている者達も少なくないが、本来は、全く違う意味の言葉なのだ。



 それでも、昔のヤクザと呼ばれる者達には、共通して、〝素人(しろうと)さん(一般人)には手を出さない〟などのルールがあった。

 手を出すどころか、本来は、困っている人や苦しんでいる人のために体を張るのが、任侠道を(つらぬ)く者達であったはずなのだが……。


 いつ頃からか、素人に覚せい剤などを売ったり、法外な高金利で金の貸付けをしたり、詐欺(さぎ)グループをまとめるなどして素人を(だま)し、お金を巻き上げる――というような、任侠の精神に反することばかりする団体へと、成り果ててしまった。



 だが、忠司はあくまで、〝任侠道〟を(つらぬ)いた男だった。

 そういう意味では、今の世のヤクザとは、全く違う存在だったのだ――……と、龍生は幼い頃から、龍之助に繰り返し教えられて来た。


 龍之助は、昔から忠司と親しく、その人柄にも惚れ込んでいたので、父親とは全く違った性質の息子、信吾が、余計(なげ)かわしくて堪らないのだろう。



 それでも、その忠司から、『息子のこと、よろしく頼む』と、死の間際に言われてしまったので、どんなに呆れ果てようとも、放ってはおけないのだ。


「男と男の約束だからな」


 五十嵐の話が出るたびに、龍之助は、そう言って苦笑するのだった。



「五十嵐が、秋月の者達に逆恨みしている――というのはわかりました。しかし、それで何故、『最近、保科さんから、何か相談されたことはないか?』という話になるのです? そこで咲耶の名を出されたりしたから、私は、咲耶が直接狙われているのではないかと、心配になってしまったのですよ? ですが、今の話を聞いた限りでは、五十嵐は、咲耶のことなど一言も話してはいない。それなのに何故、お祖父様は、咲耶が狙われているとお思いになられたのです?」


 龍之助は『ふむ』と言ったきり、口をつぐんでしまったが、しばらくしてから、龍生をまっすぐに見つめた。


「五十嵐が、『質の悪そうな若者に声を掛けまくっている』という話をしただろう?……それとはべつに、あやつはおまえの学校の生徒達にも、こう訊いて回っていたそうなのだ。『秋月龍生の恋人が、誰なのか知っているか?』――とな」


 瞬間、龍生の全身が総毛立(そうけだ)った。

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