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主人公降格!? ~協力者のはずの幼馴染に主役の座を奪われました~  作者: 金谷羽菜
第12章

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第16話 咲耶、桃花を気の毒に思い龍生に抗議する

 桃花にとっては、〝好きな人の電話番号を訊く〟という行為は、かなり勇気のいることだったろう。

 急激に委縮(いしゅく)してしまったらしい桃花を見て、龍生は一瞬、悪いことをしただろうかと後悔しかけた。


 しかし、いきなり本人から掛かって来たら、結太のことだ。舞い上がり過ぎて、大失態をやらかす恐れもある。

 一応、心の準備をする時間は与えてやらないとなと、すぐさま思い直した。


 すると、


「なんだよ秋月。楠木の電話番号のひとつやふたつ、教えてやればいいじゃないか。減るもんじゃなし」


 龍生の服の袖をつまみ、ツンツンと引っ張りながら、咲耶が不服そうに横槍を入れて来た。

 龍生は苦笑し、


「べつに、教えたくないと言っているわけではないよ。ただ、本人の意思も確認しないうちに、勝手に教えるのはどうかと思っているだけだ。咲耶だって、電話番号を他の人間に勝手に教えられたら、良い気持ちはしないだろう?」

「う…っ。それは、確かに……。だが、桃花と楠木は、知らぬ仲ではないんだし……そこまで問題はない、ようにも……思えるんだが……」


 自信がなくなって行く様が、語尾が小さくなって行っていることから、容易(ようい)に察せられる。

 顔色を窺いながらの上目遣(うわめづか)いが、また可愛いな。――などと思いながら、龍生はクスクスと笑った。


「な――っ!……なんだ!? どーして笑ってるんだ!? 笑えるようなこと、言った覚えはないぞっ?」



 困惑した表情も、更に可愛い。

 ……ダメだ。咲耶の全てが可愛過ぎて、抱き締めたくなって来る。



 ――いや、待て。落ち着け。

 人前で『こーゆーことはしちゃダメ』なのだと、咲耶を怒らせてしまったばかりじゃないか。

 ……堪えろ。堪えるんだ。



 衝動(しょうどう)抑制(よくせい)の間を行ったり来たりしながら、龍生はどうにか欲望を抑え込んだ。


「……あ、ああ……すまない。笑うつもりはなかったんだが。咲耶があまりにもかわ――っ……いや。ンッ、ン、ンンッ、――コホン。……なんでもない」



(……今絶対、『可愛い』って言おうとしたよな……? それを、慌てて咳払(せきばら)いしてごまかした。……ダメですよ。バレバレですよ。そんなんじゃ全然、隠し切れてませんよっ)



 龍生の様子をハラハラとした気持ちで見守りながら、心でツッコむ、鵲と東雲だった。

 しかし咲耶は、


「どうしたんだ、急に咳込んだりして? 風邪か? 大丈夫か?」


 などと、龍生の体の心配をしている。



(あれだけあからさまな〝デレ〟の気配を、全く気付かないでいられるとはっ!)



 ある意味ものすごい人だなと、鵲と東雲は内心舌を巻いた。


「大丈夫。風邪などではないよ。……それより、もうこんな時間か。外はすっかり暗くなってしまっているな。……咲耶。それから、伊吹さんも。今日話したことを、しっかりと胸に(きざ)んでおいてほしい。絶対とは言えないが、咲耶を誘拐しようとしている人間がいるかもしれないんだ。とにかく、しばらくの間は、充分危機感を持って生活していてもらいたい」


 二人に告げた後、龍生は真剣な顔で咲耶を見つめ、


「特に咲耶。先ほど注意したことを、忘れないでくれ。どんなにひ弱に見える男だろうが、油断してはいけない。伊吹さんと二人でいる時もだ。もしも運悪く、怪しい男に遭遇(そうぐう)してしまったら、真っ先に考えてほしいのは、何よりも〝逃げる〟ことだ。決して、自分でどうにか出来るなんて思ってはいけないよ? いいね?」


 再び、言い聞かせるように訴える。

 咲耶は素直にうなずいたが、自分が狙われる恐れがあるとなると、さすがに緊張するのか、いつもより、顔がこわばっているように見えた。


 龍生は、そっと咲耶の両肩に手を置き、


「……大丈夫だ。俺が絶対に守ってみせる。どんな奴だろうと、咲耶に指一本触れさせやしない。だから……」


 そこで言葉を切ると、龍生は他の三人の方を振り返る。


「悪いが、少しの間、ドアの方を向いていてくれ」

「……へっ? どうしてでっ――ッム!? ムグッ! ムググッ!?」


 事情を察した東雲は、ポカンとした顔で訊ねる鵲の口を、慌てて両手でふさぐと、


「承知しましたっ、坊ちゃん!」


 鵲の体を半回転させ、(おのれ)もそれに続く。

 桃花は、『えっ? あの……?』と戸惑っていたが、東雲に、『俺達の真似(まね)してくださいっ』と言われ、きょとんとしながらも、急いで後ろを向いた。


 三人がドアの方へ体を向けたことを確認してから、龍生は咲耶をまっすぐ見つめ、先ほどの台詞を、途中から言い直す。


「どんな奴だろうと、咲耶に指一本触れさせやしない。だから……」


 少しずつ顔を近付け、『全て任せて、俺のことだけ考えていてほしい』ささやくように告げると、咲耶の唇に己の唇を重ねた。


「ん――っ」


 咲耶は驚いて目を見張る。

 だが、三人をドアの方に向かせたのは、このためだったのかと覚ると、恥じらいながらも静かに目を閉じ、龍生の背に、おずおずと両手を回した。


 龍生は僅かに唇を離し、『……好きだ。咲耶』再びささやいて、ギュッと抱き締めながらのキスをする。



 やはりどうしても、気持ちを抑えきれなかったらしい。

 咲耶の前では、普段は冷静な龍生も、(こら)(しょう)のない、ただの男に変貌(へんぼう)してしまうのだろう。



 その後、二人は。

 (しび)れを切らした東雲から、『坊ちゃーん。まだですかー?』と訊かれるまで、うっとりとキスし合っては抱き合う――という行為を、()きることなく繰り返していた。

龍生と咲耶が、完全にバカップルと化しております。

脇役イチャラブ状態で、申し訳ございません!


……というわけで、第12章はここまでとなります。

お読みくださり、ありがとうございました!

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