97話 スローライフをしてみた
書籍4巻、発売決定しました!
今どき4巻到達というのはだいぶすごいことですし、本当にありがたいです!
まだ原稿も終わってなくて発売日も決まってませんが……「できれば漫画5巻と同時(8/7)に刊行できたらいいなぁ」みたいな話を編集さんとしたりしなかったり(あくまでざっくりとした目安として)
封印されしエクス=ディエスをペットにしたあと。
ローナの新居生活は、さらに快適なものになっていた。
庭つきの家があり、かわいいペットがいて、家にはお風呂もある(なぜか赤い液体がたまっていて、水を抜くと底から謎の鍵が出てきたが)。
とはいえ、まだ念願のスローライフには足りないものがある。
そう、それは――畑だ。
「やっぱり、スローライフといえば畑だもんね! というわけで、今日は庭に家庭菜園を作るよ、封ちゃん!」
『エ、ェ……エクスディエェエエエスッッ!!』
というわけで、ローナはさっそく麦わら帽子をかぶって、かわいいペット(封印されしエクス=ディエス)とともに庭いじりを始めた。
ちなみに、『封印されしエクス=ディエス』という名前は長くて呼びにくいという苦情がテーラから殺到したため。
『今からあなたの名前は“封”だよ! わかったら返事をしてね、封ちゃん!』
『――フ……フウインサレシィィィイッッ!!』
そんなやり取りを経て、呼び名が『封ちゃん』となった。
それはさておき、ローナにとってはこれが初めての家庭菜園だったが……。
しかし、ローナに不安はなかった。
「えへへ、インターネットでちゃんと勉強したもんね! それじゃあ、封ちゃん。ちょっと“無”の力を操って、そこの土を耕してくれる?」
『エ、ェ……エクスデスッッ!!』
――ビュィィィィイイイインッ!! ズガンッ!! ズガンッ!! ドガガガガガガガガッ!! ズドォォォオオオンッ!!
――ギギギギギャイーーーンギャリギャリギャリンッ!! ドカシッゴボッグガガガガガガボガボッ!! ガココココココバキバキバキャキャキャッ!! ガコッガコッガコッガコッグゴゴゴゴゴッ!! グモッチュイーーンボゴゴゴゴゴッ!! プチッ……。
「な……なんじゃ!? 敵襲か!?」
『今北産業(挨拶)』
と、ローナたちが家庭菜園を作っていたところで。
同居人――もとい、同居神のテーラとロムルーが庭にやって来た。
「あっ、ごめんなさいっ……家庭菜園の音がうるさかったですか?」
「今の家庭菜園の音じゃったの?」
『ちくわ大明神』
「でも、畑の“回路作り”も終わったので、もうあまり音もしないと思います!」
「は、畑の回路作り? とゆーか……この庭にいきなり現れた謎の巨大建造物はなんじゃ?」
「あっ、これは――全自動作物収穫装置です!」
「もう家庭菜園する気ないじゃろ」
「えへへ。1時間ごとに作物ができるように土レベルを調整したので、それに合わせてピストンが作動して作物だけ水路に落とす自動収穫用の雷結晶回路を作ったんですが……ただ省スペースのために畑を10段重ねにしたので、ちょっと作業が大変でしたね」
「われの知ってる家庭菜園と違う」
『日本語でおk』
と、ローナが自作の家庭菜園について説明していたところで。
さっそく畑のピストンが作動して、ぼちゃんっ! ぼちゃんっ! と、作物が水路に落ち始めた。
「あっ、ちょうど作物ができたみたいですね!」
「早くない?」
そう話している間にも、水路に落ちた作物たちは、どんぶらこ、どんぶらこ……と水流で運ばれていき――。
そのまま、ローナのアイテムボックスの穴へと吸いこまれていった。
「――と、こんな感じで、1時間ごとに作物が収穫できるわけです」
『8888(拍手)』
「人類には早すぎる家庭菜園なのじゃ……む? なんじゃ、この実は? 瓜っぽいが……こんなでかくて変な模様のもんは見たことないのじゃ」
「あっ、これは“すいか”っていう、最近この世界に“実装”された神々に大人気の野菜です! “めろん”を2つ合成すると種が作れる“めろん”の進化系で、お金の支払いもこの“すいか”をかざすだけでおこなえるんですよ!」
「“すいか”すげえのじゃ!?」
『Q.ちなみに すいか×2を 合成すると?』
「なぜか2つとも消えて、“無”を取得できるそうです」
『???』
「ちなみに、できあがった“無”がこちらになります」
『qあwせdrftgyふじこlp!?』
「い、いかん、宇宙の法則が乱れておる!? は、早くその“無”をしまうのじゃ――ッ!」
と、そんな一幕がありつつも、無事に収穫は完了し。
「よし、収穫完了と♪ あとは、この“すいか”を“全自動すいか割り機”にセットして、レバーを引けば――んん~っ♪ やっぱり、機械で割った“すいか”はひと味違いますね! これぞ、スローライフの味!」
「……恐ろしく速いスローライフ。われでなきゃ見逃しちゃうね」
「あっ、みなさんも“すいか”食べますか?」
『ノ(挙手)』
「われも食べるのじゃ!」
『エ、ェ……エクスディエェエエエスッッ!!』
そんなこんなで。
庭にベンチを出して、みんなで“すいか”をしゃくしゃくと食べることに。
「あっ、塩を振るときはサングラスをかけて、無駄に高いところからやるのがコツなんですよ!」
『(✧д✧)』
『ビャア゛ァ゛ァウマヒィ゛ィィ゛ッッ!!』
「じゃふぅぅ~♪ “すいか”んまんまじゃ。これは人気になるのもわかるのぅ」
「えへへ。次は“ぱいなっぽー”っていう、ペンと合体したり“ぴざ”や“すぶた”に入れたりする果物を作ろうと思ってます!」
「……それは戦争の火種にならんか?」
『テラワロス』
こうして、ローナ史上かつてないほどの穏やかで平和な時間が過ぎていく。
安全で快適な家。かわいいペット。おいしい野菜。
ヴィーン、ガシャン、ガシャン……と稼働する家庭菜園。
これぞ、まさに完璧で究極のスローライフだった。
(うん、ついに念願のスローライフが手に入ったね!)
今までは、世界の滅亡にやたら巻きこまれたりと、慌ただしい日々を送っていたが……。
なんだかんだで、今のローナには不労所得もたくさんあるし、今後はこうして働かずにのんびり暮らすこともできるだろう。
(えへへ♪ スローライフって、最高ぅ~っ♪)
こうして、ローナの念願のスローライフ1日目が始まり――。
それから、数時間後。
「……………………飽きた」
ローナのスローライフが今――終わろうとしていた。
(やることが……やることがない……)
居間のソファーに座って、ぽけーっと虚空を見つめるローナ。
畑も全自動だし、“すいか”も10個ほど食べたし、テーラは気持ち悪い笑みを浮かべながら掃除してるし、ロムルーはずっと読書してるし、封印されしエクス=ディエスもお昼寝の時間であり――。
(……あれ? もしかして……スローライフって、わりと退屈なのでは?)
いざスローライフをしてみたら、『なんか違うな……』となったローナであった。
思えば、インターネットで『神々は異世界に行くと、とりあえずスローライフをする』という話を聞いて、なんとなく『スローライフって楽しそう! 私もやってみたい!』と考えていただけなのかもしれない。
いや、たしかに、のんびりだらだらするのも、ローナは好きなのだが……。
(私……いったいなにやってんだろ。あと5年しかない貴重な10代の時間を、こうやって浪費しててもいいのかな。もっとこう、なにかやるべきことがあるんじゃ……“部活”に入って青春の思い出作りをするとか、“インド”に行って人生観を変えるとか)
なにもすることがないためか、いろいろと考えてしまうローナであった。
(それにしても……野菜がすごい数になったなぁ)
何気なく窓の外を見ると、どんどん収穫されていく野菜たち。
アイテムボックスに収納すれば腐らないとはいえ、この様子だとテーラ家で食べる量よりも収穫される量のほうが多そうであり……。
このままでは、毎日がサラダ記念日になってしまいそうだった。
「うーん……あっ、そうだ! みんなにおすそわけすればいいんだ!」
そこで、ローナはぽんっと手を打つ。
思えば、光の女神ラフィエールへのお供えもしばらくしていなかったし、ちょうどいい機会かもしれない。
ついでに、“ばーべきゅぅ”の肉やソースもアイテムボックスにたくさんあるし……せっかくなので、そちらも一緒におすそわけしてもいいだろう。
というわけで――そうと決まれば、善は急げだ。
「ロムルーさん、ちょっと出かけてきますね!」
『(・ω・)ノシ』
そんなこんなで、ローナのおすそわけが始まったのだった。
編集「かわいいペット・物作り・スローライフとかも見てみたいですね!」
作者「いいですね! 考えてみます!」
というやり取りから生まれた回でした。










