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世界最強の魔女、始めました 〜私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます〜(Web版)  作者: 坂木持丸
第9章 黄金郷を観光してみた

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75話 ラスボス、倒してみた


 ――黄金郷エーテルニア。

 それは、王都の地底深くに封印されているというダンジョンの名だ。


 インターネットによると、そこは……どんな願いも叶える“賢者の石”によって繁栄した古代都市であり、建物は黄金で作られ、道には石畳のように宝石が敷きつめられ、七色の実をつけた水晶の木々が生え、住民たちは永遠の命を手にしている『イチオシの観光名所(フォトスポット)』とのこと。


 ローナがそんな黄金郷に観光に行くことを決めた翌朝。

 旅行の準備を済ませたローナは、光の女神ラフィエールのいる謎の白い空間へとやって来ていた。


「――というわけで、今から黄金郷エーテルニアに行ってきます!」


『ぶふぉっ!?』


 ローナが黄金郷に行くことを告げるなり、女神が食べていたお供え物の“らーめん”を思いっきり吹き出した。


「だ、大丈夫ですか?」


『え、ええ。それより、黄金郷に行くと聞こえましたが』


「はい!」


 ちなみに、昨日、コノハとメルチェも一緒に行かないかと誘ったのだが。



『い、いやいやいや……ダンジョン観光って。黄金郷って。意味わかんないし』

『……でも、安全さえ確保できるのなら、ダンジョンはいい観光資源になるかもしれないわ。さすが、ローナは着眼点が違う……これは本格的に検討してみても……それこそ、“株式”を使ってダンジョン探索事業を……ぶつぶつ……えっ、行くのは明日? なら、スケジュールが取れないしパスね』



 と、断られてしまい。

 結局、ローナひとりで黄金郷へ行くことになったのだ。


『……なるほど。ついに使徒としての自覚に芽生え、邪神テーラと戦う覚悟を決めたというわけですね』


「?」


 女神はなにかひとりで納得したように、うんうんと頷く。


『黄金郷への旅路は、長く険しいものとなるでしょう。もしも、わたくしにできることがあれば、なんでも言ってください』


「あっ、それなら、この白い空間をちょっと使わせてもらえたらなぁ、と」


『この空間を使う? よくわかりませんが……まあ、それぐらいなら』


「ありがとうございます!」


 というわけで。


「えっと、まず下に1歩、左に17歩、上に142歩……」


 ローナはちょこちょこと白い空間の中を歩き回りだした。


『あの、いったいなにをしてい――』


「あっ、そこ見えない壁があるので気をつけてください」


『――ぶふっ!? ……えっ? なんですか、この壁? わたくしが作ったこの空間、どういうことになってるの……?』


「えへへ、謎ですね!」


『わたくしとしては、笑い事ではないのですが』


「えっと、最後に下に、127、128……と! よし、見えない壁もちゃんとあるし……ここでよさそうだね」


『あの、そろそろ、お告げの時間制限が来そうですが……』


「あっ、ちょうどよかったです」


「へ?」


 ローナが立ち止まると、くるりと女神のほうをふり返った。

 ちょうどそのタイミングで、女神のいる空間が白く光り輝きだす。

 いつものように、この空間から追い出される合図だ。


「じゃあ、今から行ってきますね! 黄金郷エーテルニアに!」


『…………はい?』


 そうして、きょとんとしている女神を置いて、ローナの視界が白く染まり――。



「――――わっ!?」



 ローナが次に目を開けたとき。

 そこは女神のいる白い空間でも、王都の中央広場でもなく――。


 ――真っ暗な空間だった。


 いきなり夜空の中に放り出されたような、上も下もわからない浮遊感。

 とにかく自分が今、落下していることだけは理解できた。


「わっ! わわっ!? と、とりあえず、エンチャントウィング!」


 慌てて飛行スキルを発動して、光の翼をはばたかせるローナ。


「ふ、ふぅ……びっくりしたぁ」


 ローナは空中で姿勢を整え、バクバクいっている心臓を押さえながら周囲を見る。

 そこは、上も、下も、右も、左も――全てが夜空のような空間だった。


 インターネットで見た“宇宙”という場所とイメージは近いかもしれない。

 その空間の中にぽつぽつと浮かんでいるのは、ステンドグラスのような地面。

 いきなり空中に投げ出されたのは、予想外だったものの……。


「うん、インターネットに書いてある通り♪」


 と、ローナは上機嫌に、手元のインターネット画面を見た。



――――――――――――――――――――

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――――――――――――――――――――

▍裏技・小技/【謎の空間バグ】

 ▍概要

 【光の女神像】のムービー空間を利用した

 移動バグ。


 このムービー中にバグ技で1歩右に移動す

 ると、ムービーから戻るときに1歩右にず

 れた状態で出てくるが……。


 この現象を利用することで、あらゆる障害

 物やイベントを無視して任意の場所に飛ぶ

 ことができる(たいてい裏世界に落下して

 詰む)

――――――――――――――――――――



 いろいろとよくわからない言葉も多いが……。

 とりあえず、女神のいる謎の空間で、お告げの時間制限までに『下に1歩、左に17歩、上に142歩、左に1歩、下に320歩、右に289歩、下に128歩』進むことで、王都の地底に封印された黄金郷まで一気に行けるとのこと。

 もっとも、いきなり黄金郷の中に入れるわけではないらしく。


(たしか、ここのどこかに、黄金郷につながる転移魔法陣があるんだよね?)


 と、ローナが周囲をきょろきょろしていると。


「…………え?」


 ふと、巨大な影が目に入ってきた。

 山でもあるのかとも思ったが――違う。


「…………な、なに……これ……」


 それは、山のように巨大な人型の“獣”だった。

 赤黒い炎のような体毛。黒い王冠のような10本の角。

 地上のありとあらゆる獣がつなぎ合わされたかのような、そのおどろおどろしい姿は、まさに混沌と絶望の化身であり……。


 そんな恐ろしい存在が今、ローナの眼前で存在感を放ちながら――。




 ――両腕をピンッとTの字に広げて、固まっていた。




(…………うん、本当になんだろう、これ?)


 ちょっと意味がわからなかった。

 やたら存在感だけはあるのが、かえってシュールだった。


(うぅ、なんか変なもの見つけちゃったなぁ……えっと、このモンスターの情報は……)


 とりあえず、インターネットで調べてみると、それっぽい情報を発見した。




――――――――――――――――――――

≡ エタリア攻略wiki [   ]検索 ⍰

――――――――――――――――――――

▍ボス/【黙示獣テラリオン】


 ▍出現場所:【黄金郷エーテルニア】

 ▍レベル :108

 ▍弱点  :光(本体)・物理(右手)

       魔法(左手)

 ▍耐性  :闇・毒・睡眠・混乱

 ▍討伐報酬:アイテムボックス枠拡張

       +50


▍概要

 メインストーリー2部ラスボス【邪神テー

 ラ】の第2形態。

 

 ボス部屋に壁抜けして入るとTポーズで固

 まっており、その圧倒的な存在感から、よ

 くネットでおもちゃにされている。

――――――――――――――――――――




(……ラスボス? “ラス”ってなんだろ? “第二形態”っていうのも、よくわからないし、うーん……とりあえず、アイテムボックス枠も手に入るし、ダンジョンボスってことでいいのかな?)


 と、ローナはしばらく考えてみたが、やっぱりよくわからず。


(ま、いっか! なにか問題があっても、あとで“ぐぐる”すればいいもんね!)


 というわけで、ローナは考えるのをやめた。

 ひとまず、怪物の手をぽかぽかと杖で叩いてみると、「うっ! うっ!」とうめき声が上がる。

 一応、ダメージはちゃんと入っているらしい。

 試しに【星命吸収(テラ・ドレイン)】を使ってみると、MPを吸収することもできた。


 せっかくなのでMPをちまちま吸収しつつ、周囲をきょろきょろしてみるが、出口の魔法陣は見つからない。

 おそらく、ダンジョンのボス部屋と同じように、ボスを倒さないと脱出できないようになっているのだろう。


「うーん、よくわからないけど……」


 やがて、ローナはうんっと頷いた。


「とりあえず、倒しとこっと♪」


 そんなこんなで。

 椅子に座って“そしゃげ”の片手間にちくちく攻撃すること、しばし――。



『黙示獣テラリオンを倒した! EXPを66666獲得!』

『LEVEL UP! Lv68→73』

『SKILL UP! 【大物食いⅣ】→【大物食いⅤ】』

『アイテムボックス枠が50拡張されました』

『称号:【黙示録の王】を獲得しました』


『……海底王国アトランから不穏な気配が? 準備ができたら見に行ってみよう!』

『to be continued……』



「わーい」


 まったく見所のない戦闘を経て、そんな討伐メッセージ(+α)が視界に表示された。


(なんかメッセージがいろいろ出てきたけど……あっ、アイテムボックス枠もちゃんと手に入ってるね! よし!)


 というわけで、ここに来た目的をひとつ達成したところで。

 せっかくなので、ぼぼぼぼぼ……と、なぜかゆっくり爆散している怪物をバックに、「いぇ~い♪」と記念の自撮りもしておく。

 コノハやメルチェにいい土産話ができそうだ。


 そう考えていると、やがて近くの地面に、脱出用らしき魔法陣が現れた。


(えっと、これが黄金郷エーテルニアにつながる転移魔法陣かな?)


 そんなこんなで、少し予想外のことはあったものの。


「よーし、あとはいっぱい観光するぞぉ!」


 ローナはさっそく、その魔法陣へと足を踏み入れたのだった。


???「いま あなたの 眼前で

    存在感を 放つ

    その モンスターは テラリオン!」


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― 新着の感想 ―
アトランの不穏な空気って絶対クリスタル・イヴだろ笑
[良い点] 自撮りやめたげてww
[良い点] ポケモンかな? 本当にすべてのネタが懐かしい 黄金時代だった
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