46話 海底で戦ってみた
2日に1回更新と言ったな? あれは嘘だ。
ルル×2とともに、海底にある光の道を進んでいくローナ。
インターネットによると、この道の先に海底王国アトランがあるとのこと。
海底の旅はおとぎ話のようで、ローナはカメラでパシャパシャと景色を撮影する。
「「る~♪」」
ルルたちも海の中を気持ちよさそうに泳いでいた。やっぱり、地上よりも海のほうが居心地がいいらしい。
「るっ! この辺り、見たことあるぞ!」
「もうすぐ、ルルの国ある! ルルが国の中、案内してやる!」
「えへへ、楽しみです――っと、この辺りかな?」
「「る……?」」
ローナはそこで、アイテムボックスから“女王薔薇の冠”と“水鏡の盾アイギス”を取り出して装備した。
「「どうした、げぼく?」」
「あっ、気をつけてください、そこにモンスター出ます」
「「るっ!?」」
ローナがそう言った直後。
前方から、複数の影が猛スピードで飛来してきた。
この“海蛍の散歩道”に出てくる水棲系モンスターたちだ。
「な、なんだ、こいつら……強そうだぞっ!?」
「はい、気をつけてください! このモンスターたちのレベルは、みんな40超えです!」
「「るっ!?」」
ザコモンスターのように出てくるのに、エリアボスに匹敵しそうなほどのレベルだった。
さらに水中ということもあり、敵もあらゆる方向から高速で飛来してくる。
いつものように、まとめて魔法で殲滅というのは難しいだろう。
「「げぼくげぼくげぼくぅうう~っ!!」」
「えっと、ルルちゃんたちは、私の後ろについていてくださいね。私がちゃんと守りますから」
「「ふ、ふんっ……仕方ない。げぼくに戦わせてやる!」」
「あ、はい。それと危なくなったら、さっきわたした釣りエサをまいてくださいね。あれは水棲系モンスターの注意をそらす効果があるそうなので……」
「「…………」」
「あれ、ルルちゃん? なにか口元について……」
とか言っている間にも、モンスターたちは接近してくる。接敵までもう時間がない。
(とにかく、ルルちゃんに攻撃が当たらないようにしないと……っ)
レベル1のルルたちが攻撃を食らえば、ただかすっただけでも致命傷になりかねない。
とはいえ、ルルたちを巻きこまないための戦い方は考えてある。
「まずは――リフレクション!」
「ぎょぎょぎょっ!?」
ルル×2ごと包みこむように魔法反射結界を展開。
遠距離魔法を反射して、モンスターたちにお返しする。
さらに、“女王薔薇の冠”でローナに敵視を集めてから、モンスターが接近してきたところで――。
「――女王の威厳!」
敵をまとめて装備スキルで魅了状態にした。
目をハートマークにしながら、攻撃をやめてローナに無防備に近づいてくるモンスターたち。
(なるほど……このスキルは初めて使ったけど、かなり便利なスキルだね)
“女王薔薇の冠”は『盾役装備』とインターネットに書いてあったが、その理由がわかった気がした。
装備スキルで魅了できるのは『相手のほうがレベルが下の場合』という条件はあるものの、相手を1か所に引き寄せたうえで、まとめて攻撃能力を奪うことができるのは、乱戦ではかなり強力だ。
(水曜日クエストのときに、乱戦対策も考えておいたのが役に立ったね。あとは――まとめて攻撃するだけ!)
と、団子状に群がっているモンスターたちへ向けて、ローナは杖をかまえる。
「ルルちゃん! 今から魔法を撃つので、この結界から出ないでくださいね!」
「るっ! おい、もっとつめろ、偽物!」
「る? 偽物のほうが場所取ってるんだが?」
「る? ルルのほうが小さくまとまってるし!」
「「なにをーっ!」」
「ああぁっ、こんなときまで喧嘩しないでください! 結界の外に出たら危な――」
「ぎょぎょぎょッ!」
「あっ、ちょっと今話してるので――プチサンダー」
「――――ぎょ――――――――」
ばりばりばりばりばりぃぃィイイイイ――ッ!!
と、海が凄まじい雷光にのみこまれた。
本来、水中では雷攻撃が広範囲化して、自分にまでダメージが及んでしまうが……【リフレクション】を使っていれば問題ない。それどころか、反射分も上乗せされて魔法の威力を2倍にすることができる。
この高威力にモンスターたちは、なすすべもなく蒸発していき――。
『イカイザーの群れを倒した! EXP5101獲得!』『ジンベイダーの群れを倒した! EXP4890獲得!』『ハンマーグリードの群れを倒した! EXPを8096獲得!』『シェルモナイトの群れを倒した! EXPを7110獲得!』『エメラルドタートルの群れを倒した! EXP3106獲得!』『LEVEL UP! Lv54→57』『SKILL UP! 【殺戮の心得Ⅳ】→【殺戮の心得Ⅴ】』『SKILL UP! 【フィッシュキラーⅠ】→【フィッシュキラーⅢ】』『SKILL UP! 【魔法の心得Ⅸ】→【魔法の心得Ⅹ】』『初級魔法の消費MPが半分になりました!』……。
そんな視界を埋め尽くすメッセージと、激しい雷光が収まったあと。
目の前に広がっていたのは、はるかかなたまでモンスターが1匹残らず駆逐された光景だった。
ローナはふぅっと息を吐くと、口をぽっかりと開けたまま黙っているルル×2へと向き直る。
「とにかく喧嘩はよくありません! これからは自分同士、仲良くしていきましょう! ね?」
「「………………はい」」
(よかった! わかってもらえた!)
そんな一幕がありつつも。
辺り一帯のモンスターを一気に倒すことができたので、残りの道中は快適だった。
「るぉおっ! たくさん魔石が落ちてるぞ!」
「るっ! でかい魔石も見つけたぞ!」
「わぁっ、本当に大きいですね! でも、なんでこんなにモンスターがいたのかな……まあいっか!」
そんなこんなで、ルル×2にドロップアイテムを回収してもらいつつ、10分ほど歩いたところで――。
「あっ、お城が見えてきましたね!」
やがて、道の先に――純白の城が見えてきた。
その周囲に広がっているのは、泡のような透明な結界に覆われた白亜の街並みだ。
その光景は、間違いない。
――海底王国アトラン。
そこは地上の人間にとって、おとぎ話の国であり……。
水竜族であるルルたちの故郷だった。
というわけで、せっかくの年末年始なので章終わりまで毎日更新でいきます。










