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世界最強の魔女、始めました 〜私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます〜(Web版)  作者: 坂木持丸
第5章 レイドクエストに参加してみた

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37話 クリア報酬を受け取ってみた

――――――――――――――――――――

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――――――――――――――――――――

▍曜日クエスト/【水魔侵攻レイド】

 ▍攻略法

 現環境においては、『モンスターの出現位

 置に塔を建てる』のが基本的な攻略法とな

 る。


 モンスターの出現位置に障害物がある場合、

 出現位置が上に移動する性質があるが……。


 それを利用して、20メートルほどの高さ

 に出現位置を移動させれば、この曜日クエ

 ストに出てくる全モンスターを落下ダメー

 ジだけで倒すことが可能。

 (ここのモンスターは落下死が想定されて

 おらず、町への侵攻しようとして勝手に落

 ちる)


 なお、他の出現位置は【魔除けの松明】で

 わき潰しをする)

――――――――――――――――――――




(いやぁ……本当にうまくいったなぁ。やっぱり、インターネットに書いてあることに間違いはないね)


 インターネットを見ながら、ローナはほっとしていた。

 水曜日が始まってからだいぶ時間が経ったが……。


「……ど、どうなってるんだ?」


「なにもしてないのに、モンスターが死んでいくぞ……」


「おい、もしかしてこれ……俺たち、なにもしなくていいのか?」


 今もモンスターたちは、ローナの作った塔の上から、ぼとぼとと落下死をし続け。

 気がつけば、ウルス海岸にはモンスターのドロップアイテムの山ができていた。


 ちなみに、このようにモンスターを自動的に狩るための塔を、神々の言葉で――。


 ――“トラップタワー”と呼ぶらしい。


 ちなみに、この簡単な塔だけでここまでうまくいくのは、


『水曜日クエストで出現するモンスターが弱いうえに、落下死が想定されていない』

『どのみちクリアが簡単なため、修正されず放置されている』

『そもそも、この程度じゃエタリアでは不具合と呼ばない』


 ……などの事情もあるらしいが、その辺りはよくわからない。



 とまあ、そのようなことを、ローナがみんなに説明すると。

 アリエスがいまだに半信半疑といった顔で、おずおずと尋ねてきた。


「つ、つまり……このトラップタワー? というのがあれば、今後は自動的に“水曜日”を乗り切れる、ということなの?」


「はい! これが水曜日クエストの“基本的な攻略法”なので!」



「「「――そんなわけあるかっ!!」」」



 と、町民たちから総ツッコミを食らうローナ。


 なにはともあれ、こうして悪夢の“水曜日”は終わり……。

 今後、“水曜日”はただモンスター素材がタダで手に入る日となった。


 もしも、偶然生き残ってしまったモンスターがいても、堅牢な城壁“ウォール・ローナ”を突破することは、ほぼ不可能だろう。


 かくして、港町アクアスの安全は、ローナひとりの手によって取り戻されたのだった――。



         ◇



「「「――3! 2! 1! かんぱ~い!!」」」


 深夜、日付が変わった頃。冒険者ギルドの集会所にて。

 あふれ返るほど集まった町民たちが、酒杯をがつんっと豪快にぶつけ合っていた。

 日付が変わったことで、水曜日クエストが終了したのだ。


「みんな、今までよく頑張ってきてくれたわね! 今日はこのわたしのおごりよぉっ!」


「うぉぉおおおおお――ッ!! 木曜日だぁああ――ッ!!」


「もう“水曜日”にとらわれなくてもいいんだっ!」


 トラップタワーはあれから何事もなく機能し続け、なんの被害もなく水曜日を乗り切ることができた。

 それどころか、大量のドロップアイテム産の食べ物のおかげで、しばらくは食べるのに困ることはなさそうだとのこと。

 そのため、町民たちのテンションはだいぶ振り切れていた。


「しっかし、すごいねぇ! その歳で“水曜日”をひとりで終わらせるなんて」


「見たか、あれ! 俺たちがあんだけ苦戦したモンスターが一瞬で倒れていったぞ!」


「えへへ! まるで“即落ち2コマ”みたいでしたね!(最近覚えた)」


「そくお……なんて?」


 それからも町民たちは飽きることなく、いつまでもローナの活躍を話し合う。

 一方、ローナはというと。


「ん、んんぅ~♪ これが本物のシーフード!」


 もきゅもきゅと幸せそうにシーフードを頬張っていた。

 テーブルにはハイパーサザエのバター焼きに、カニを丸ごと使った“かにかにランチ”に、爽やかな水色のシーソルトソーダ……と、この町の名物が並べられていた。

 これは、“水曜日”のモンスターが落とした大量のドロップアイテムで作ったものだ。


「がはははっ! もう漁船も壊されねぇし、モンスターに店や倉庫が荒らされることもねぇ! 冒険者たちもモンスターの駆除に集中できる! こっからは、いくらでも魚が食えんぞぉおッ!!」



「「「――うぉおおおおっ!!」」」



 港町ならではの豪快さで、酒と魚料理が宙を飛び交う。


「あっ、黒ローブさんたちが作ってくれた“まよねぇず”から、“たるたるソース”っていうのを作ってみました! 魚のフライなんかに合うそうです!」


「おおっ、こいつはイカした味だなっ!」


「……ふっ……これが、“まよねぇず”の可能性、か」


「うちは、これめっちゃ好き!」


「おいおい、この町の新たな名物になるんじゃねぇか? がはははっ!」


 ローナの作った“たるたるソース”もたちまち人気になり。


「こんだけうまい料理があると、音楽が欲しくなるな!」


「かぁーっ! こういうとき吟遊詩人がいればなあっっ!」


「あっ、じゃあ! 私がスキルで音楽を流しますね!」


「そんなこともできるの、ローナちゃん!?」


「なんでもできるじゃん、この子……」


「それじゃあ、いっきまーす!」


 ローナはそう言って、音楽動画を音量MAXで再生し――。




『――そ……そんなとこ“育成”しちゃダメだよ♡ お兄ちゃん♡』




「わ……わぁああああっ!? ストップストップストップぅう――っ!?」



 そんな一幕もありつつ、にぎやかに宴が続いていたところで。

 やがてローナのもとへ、アリエスが酒瓶を片手にやって来た。


「ふふ、楽しんでるかしら、ローナちゃん?」


「あっ、アリエスさん! ありがとうございます! こんなに、おごってもらっちゃって」


「いえ、お礼を言いたいのは、わたしのほうよ」


「え?」


「……本当は、わたしもあきらめていたの。“水曜日”は終わらないって。だから……またこの町でこんなふうに騒げるなんて、思ってもいなくて……」


「……アリエスさん」


「ダメね……わたしったら。せっかくの楽しい席なのに。でも、本当に……ありがとう、ローナちゃん」


「い、いえいえ! 私のほうこそ!」


 ローナもつられて、ぺこぺこ頭を下げる。

 ローナとしては、とにかく『シーフード食べたい』ぐらいのことしか考えていなかったし、インターネットに書いてある通りに動いただけなので、ここまで感謝されると戸惑うというのが本音だった。


「そ、それに……私へのお礼なら神様に言ってください」


「神様に?」


「はい! えっと、説明は難しいんですが……私は神様のお言葉を聞けるみたいなスキルを持っていまして。今回、作戦を考えたのも私ではなくて神様たちなんです」


「…………マジで?」


 仮にも神官をしているアリエスにとっては、ものすごい爆弾発言だった。

 とはいえ、『神に愛された少女』と考えると、いろいろと納得がいく。

 アリエスはしばらく呆然としたあと。


「ふふ……やっぱり、ローナちゃんは天使様だったのね」


「……?」


 やがて、おかしそうに、くすっと笑ったのだった。


「ああ、それと……“ウォール・ローナ”と“トラップタワー”の使用料の話もしないといけないわね」


「使用料?」


「ええ。さすがに、あれをタダで使わせてもらうわけにはいかないわ。といっても前例がないから、すぐには具体的な金額を出せないけど……だいたいこれぐらいの額を、毎週ギルド口座に振込って形になるかしら」


「うぇっ!?」


 ものすごい量の『0』が並んだ数字を見せられ、ローナが思わず悲鳴を上げる。


「あ、あのっ! こ、ここ、こんなにもらうわけには……っ! そもそも、私が勝手に作ったものですし……」


「いえ、それでも使わせてもらうわけだしね。それに、本来こんな額じゃ足りないわよ。あの規模の城壁や塔を作るには、材料費と運搬費と建築費と人件費を合わせて……数十億シルは最低でもかかるでしょうしね」


「で、でも……お金は大丈夫なんですか? たしか、あまりお金に余裕がないって話でしたが」


「ふふっ、そこは安心して! “借り暮らしのアリエスッティ”と恐れられたわたしの本気を見せてあげるわ!」


「その本気は見せないでください」


 いろんな意味で、このお金を受け取ったらダメな気がしてきた。


「と、ともかく、このお金はこの町の復興のために使っていただければっ! 私としても、お金よりこの町での観光を楽しめることのほうが大事なので!」


「うぅ~っ、ローナちゃん……いい子すぎるぅっ! マジ天使ぃっ!!」


 アリエスにぎゅっと抱きしめられた。酒臭かった。


「それじゃあ、ひとまずお金は復興費にあてるけど……ローナちゃんが必要になったらいつでもギルド経由で引き出せるって形にするわね?」


「え、えっと……とりあえず、それで」


 なんだか、思ったよりも大事になってしまったらしい。

 なにはともあれ、ローナのこの町に来た目的のひとつ、『シーフードが食べたい』を満たしたところで。


「……ん?」



 ――しゅぽんっ♪ しゅぽぽぽぽんっ♪ と。


 ローナの視界の中に、大量のメッセージが浮かび上がってきた。



『曜日クエスト:【水魔侵攻レイド】をクリアしました!』

『ランクS報酬:【水鏡の盾アイギス】【古代のメダル×10】【50000シル】【EXP50000】を獲得しました!』

『Level Up! Lv47 → Lv54』

『システム:【ファストトラベル】が解放されました!』



『称号:【水曜日の守護者】を獲得しました!』



「あっ、水曜日クエストをクリアしたってメッセージが出ましたね! わぁっ、クリア報酬もたくさん!」


「……? メッセージ? クリア報酬?」


 きょとんとするアリエスをよそに、手に入れたものを確認していくローナ。

 そこで、ふと、ローナはひとつの報酬に目をとめた。



「……ん? なんだろう、これ……“ファストトラベル”?」




……というわけで、5章終了です!

ここまで読んでいただきありがとうございました!


この5章では今後のための布石なんかもけっこう打ってありまして、次の次の章ぐらいにいろいろ回収したいなと考えていますので、今後ともお付き合いいただけるとありがたいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] >そもそも、この程度じゃエタリアでは不具合と呼ばない ダメだこのゲーム、早く何とかしな…くてもいいか 難易度あげたら住民死んでしまいますし
[一言] 人前で余計な事を口走るおっちょこちょいですねb
[一言] 急にお金に無頓着になる主人公…大金手に入れば、終点なのかもだが
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