表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の魔女、始めました 〜私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます〜(Web版)  作者: 坂木持丸
第13章 異世界に行ってみた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/139

130話 異世界観光してみた


 ローナの魔法でちょっとした騒ぎが起きてから、しばらくして。

 騒ぎの現場から離れたローナはというと。


「わぁっ! JKの“こすぷれ”だっ!」


【ぴぴぴ✜ ひとまず、この格好なら、目立つ確率0%なのデス✜】


 変装のために、目立っていた元の世界の服から、この世界の一般的な市民服――白いブレザータイプの学生服へと着替えていた。


「えへへ、こんな状況ですが……なんだか、青春っぽくていいですね! 私、学園に通えなかったので、ちょっと制服に憧れてたんです!」


【ふむ、異世界人も“制服”を知っているのデスね✜】


「はい! あっ、そういえば……制服ってなぜか、使用済みのほうが価値が上がるんですよね!」


【……おまえは知りすぎたのデス✜】


 なにはともあれ、こうしてローナの着替えが済み――。


【――ぴぴぴ✜ それと今のうちに、ピコが〈都市監視システム/共有ログ〉を改ざんしておいたのデス✜ これでもう、さっきの騒ぎは『なかったこと』になったのデス✜】


「わーい」


 そんなこんなで、もろもろの心配事も解消されたところで。

 さっそく、ローナは観光のために街へとくり出すのだった。


「それにしても、平和な世界ですねー」


 と、ローナは街をぶらぶら歩きながら、辺りをきょろきょろする。


 すれ違う人々は、みんな笑顔でキャッキャウフフと幸福そうに生活しており……。

 ローナが観光に来たというのに、珍しく都市が滅びかけている様子もない。


「えへへ! びっくりするほど“ゆーとぴあ”ですね!」


【まあ、この都市が平和なのは、当たり前なのデス✜ なにせ、完璧なるマザー様が管理しているのデスから✜】


「たまに滅びかけたりしないんですか?」


【……えっ、なに、いきなり……滅び? ……えっ? い、いや、そんなことあるわけないのデス✜】


「わぁっ、すごいです!」


【すごいのデスか、これ!?】


「はい! うちの世界なんか、月1ペースで滅びかけてますし」


【……もうゼッタイに、おまえの世界には行かないのデス✜】


 と、そんな話をしていたところで。

 ローナは、ふと……道端にあった機械に目をとめた。



『――コンニチハ! 今日モ1日、ガンバッテクダサイ!』



 と、言葉を話している大きな箱のような機械。


「こ、これは、まさか……“自動販売機”!?」


【ぴ? それが気になるのデスか?】


「はい! 自動販売機さんは、ジュースに、ケーキに、あつあつの料理に、結婚指輪に……“ふるさと納税”に“大人のおもちゃ”というものまで、なんでも売っている転生者さんなんですよね!」


【……ぴ? いえ、これは自動配給機なのデス✜ ボタンを押せば、無料で食べ物がもらえ――】


 と、ピコが説明しかけたところで。



「――自動販売機さん、こんにちはーっ!」(すぱああああんッ!!)



 と、ローナが自動配給機にハイキックした。


【お……おいィッ!? なにやってんデスか、おまえッ!?】


「ハイキックですが……」


【デスよね!? 見間違えじゃなかったデスよね!? なぜハイキックを!?】


「え、えっと、自動販売機さんは『女の子に蹴られると商品をくれる』って聞いたので……」


【いや、そんな変態みたいな機械あるわけな――】



『――アリガトウゴザイマス!』(ぼろんっ)



「あっ、商品が出てきました」


【変態だーッ!!】


 そんなこんなで、自動配給機からぼろんっと出てきたのは……。

 “ぷらすちっく”のトレイに盛られた、ケミカルなペースト状の食べ物だった。

 一見すると、食べ物には見えないが……その見た目は、間違いない。


「わぁっ、“でぃすとぴあ飯”だぁっ!」


【いえ、『合成市民食SSD‐212号』なのデス✜】


 ――“でぃすとぴあ飯”。

 それは、科学が発展した世界でしか食べられないという伝説の料理であり……。

 いわば、この世界のご当地グルメのようなものだった。


「えへへ! 一度、“でぃすとぴあ飯”を食べてみたかったんです! それに今日は、せっかくの旅行なのでお腹をすかせてきてまして! 今ならいい〝食りぽ〟もできそうです!」 


 そう言って、ローナは近くにあったベンチに腰かけると。

 さっそくペースト食をスプーンですくって、「いただきま~すっ!」と口に運び――。


「……………………」


 無言のまま食べ終わった。


【食リポは?】


「無味無臭でした」


 食リポ終了。

 それ以外に表現しようがなかった。


「いや、なんというか……うーん、ぱさぱさに乾いた水を噛んでるような感覚? 味が薄いとか、そんなちゃちなものじゃない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わいました」


【ぴぴぴ✜ それでよいのデス✜ それこそが、マザー様が演算によってお導きになった『完璧な市民食』なのデス✜】


「え?」


【どれだけ科学的に美味な食べ物を与えても、人間に“好き嫌い”という法則性のない欠陥(バグ)があるかぎり、必ずどこかで『嫌いなものを食べて不幸になる人間』が発生してしまうのデス✜ そこで、偉大なるマザー様は、こうお考えになったのデス――】



 ――そうだ、この都市から“味”をなくしてしまいましょう、と。



【かくして、この都市から“味”という概念がデリートされ、人類はまたひとつ、“不幸”から解放されたのデス✜ さすがマザー様なのデス✜】


「な、なにかが致命的にズレてるような?」


【だというのに……だというのにデスよっ✜ 人間たちの中には、こんな素晴らしいマザー様のお考えに抗議しているやつらがいるのデス✜ まったく……いったい、この都市になにが足りないというのデスかっ✜】


「味では?」


 なんとなく、この都市についてわかってきたローナであった。

 それより、ローナがちょっと気になったのは……。


「ち、ちなみに、さっき言ってた『科学的に美味な食べ物』ってなんですか?」


 ということだった。


「も、もしかして、どこかで食べられたりは――」


【ぴ? 納豆プリンラーメンが食べたいのデスか?】


「……なんて?」


【納豆プリンラーメンなのデス✜】


「そ、それは?」


【ラーメンの上にプリンと納豆を乗せるという、偉大なるマザー様の演算により導き出された、最高かつ完璧な美味なのデス✜】


「…………」


【美味がいっぱいなら、理論的に幸福もいっぱいなのデス✜ なので昔は、市民たちに毎日3食、納豆プリンラーメンだけを与えていたのデスが……なぜか不満がすごかったのデス✜】


「私でもキレますね、それは……」


 とりあえず、この都市で『おいしい名物料理』のようなものは、期待しないほうがよさそうだった。


「まあ、でも……“でぃすとぴあ飯”は、新感覚でいい思い出になりました! まったく味がない食べ物なんて、思えばここでしか食べられませんしね!」


【ぴ? まあ、よくわからないデスが……幸福ならOKなのデス✜】


「えへへ、そうですね!」


 なにはともあれ、こうして食事タイムも終わり。


 ついでに、『異世界に行ったらやりたいことリスト』の『自動販売機にハイキックする』『でぃすとぴあ飯を食べる』にもチェックを入れ終えたあと。


「それじゃあ、次の観光スポットに行きましょうか」


【……次? 次にどこに行くか、もう決めてあるのデスか?】


「はい! 短い旅行なので、しっかり下調べをしてきまして……」


 そして、ローナは告げる。次の観光場所の名を――。



「――次は、『反機械勢力のアジト』ってところを観光したいなって!」



【そこ、ゼッタイに観光スポットじゃねぇのデス!?】



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『世界最強の魔女』11/7、漫画10巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『ラスボス、やめてみた』漫画7巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『時魔術士』漫画3巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『レベルアップ』漫画5巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『装備枠ゼロの最強剣士』漫画7巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023
― 新着の感想 ―
機械は正確に計算するが、そもそ入力した数値が間違っているなら出力されるものも間違えたものになるのである
歯応えのある……水……?
納豆プリンラーメン… せめて別皿に入れてクレメンス
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ