表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の魔女、始めました 〜私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます〜(Web版)  作者: 坂木持丸
第12章 あにめを作ってみた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/139

123話 こみけを開催してみた

今回は長め


「……ともかく、本番はここからよ。気を引きしめていきましょう」


「はい! まずは設営ですね!」


 というわけで、“こみけ”当日――。

 ローナたちは朝早くに会場入りすると。


 動きやすいスタッフ服に着替え、他のスタッフたちと朝礼・打ち合わせ・準備運動を済ませてから、さっそく設営を開始した。



「掃除用風魔法――ヒールウィンド! よし、ワッフルちゃん! 会場の掃除は終わりました!」


「わふっ! んじゃー、すぐに測量しやがりますねっ! “島”の四隅を目印(バミ)ってくんで、終わったら机の搬入を……それと“定点”には絶対さわりやがらないように――」


「「「わっほ! わっほ! どわっほい!」」」


「あっ、机はこちらでーす! アイテムボックス!」


「おーい! あたしのデータによると、その備品は借りてる業者が違うからまぜないように……馬車搬入口の辺りで作業する人は、鉄兜がしっかり装備できてるかステータス画面の確認を――」



 闘技場を借りられたのは、休場日である1日だけ。

 そのため、清掃・測量・設営・同人誌搬入・見本誌チェックなどを、“こみけ”開始までの4~5時間で終える必要があったが。


 そこは、ワッフル&ドンゴワ自警団“わ組”が大活躍した。



「ワッフル組長ッ! 暑さ対策用の冷凍マグロの設置、完了しやしたッ!」

「こちら屋内班ッ! 更衣室と救護室のほうはバッチリだどッ!」

「こちら屋外班ッ! 休憩スペースと屋台の設営も完了ッ!」



「えらいっ!」


 ドワーフたちは手信号で指示を出し合って、見た目に似合わずしゅばばばっと作業を進め――。

 次々とワッフルに完了報告を届けてくる。


「わぁっ、すごい! さすが“わ組”のドワーフさんたち!」


「へぇ、これはあたしのデータにはない早さだよ!」


「……ええ、予想以上ね。あなたたちに依頼して正解だったわ」


「わふふ~んっ! 祭りってんならドワーフにお任せありやがれですよ、メルチェの大将っ! ドンゴワじゃー、昔は毎日が祭りでありやがりましたからねーっ!」


 と、得意げに胸を張るワッフル。

 一方、メルチェは少しきょとんとしてから、ローナにこそこそと耳打ちしてきた。


「……ね、ねぇ、ローナ? さっきから気になってるのだけど……この子の『やがれ』の使い方、おかしくないかしら? 普通、こんな言葉づかいになる?」(小声)


「あー。これはワッフルちゃんが、背伸びしてワルっぽいしゃべり方をしようとした結果、いろいろ失敗してるだけですね。でも、世の中には『らふふ♡』とか『くらら☆』とか言ってくる人もいるので、それよりは普通かなぁと……」(小声)


「あの……全部、聞こえてやがりますよ?」


 なにはともあれ、ベテランの祭りスタッフであるドワーフたちの加入によって、設営はかなり順調に進んでいたが……。


「んー、つっても、人手も時間もけっこうギリギリでありやがりますねー。初めての現場でありやがりますし、机と椅子の配置なんかは、とにかく人手がいりやがりますし」


「ま、まあ、神様たちの“こみけ”では、1000柱規模で設営するみたいですしね」


「……なにそれ、天地創造?」


「うーん、人手かぁ。今からボランティアを募集するのも遅いし――」


 と、ローナが呟いたところで。



「「「――くくく……我らも、毎日が“(まつ)り”でした」」」



 ず……ずずずずずずず……っ、と。

 地面の影から、黒い人影×6が浮かび上がってきた。

 そうして姿を現したのは、いつものごとく――黄昏の邪竜教団・六魔司教であった。


「あっ! 黒ローブさんたちだ、わーい!」


 そこにローナも加わり、『いつもの7人』となる。


「わ、わふっ!? ……ろ、ローナの姐御? な、なんでありやがりますか、この『裏で世界を滅ぼそーとしている邪教団の幹部』みたいな連中は?」


「あっ、この人たちは、私の“ズッ友”の黒ローブさんです。ほら、“あにめ”で『イーッ! イーッ!』って叫んでる人たちですよ」


「……彼らの人生に、なにがありやがったんです?」


「あっ、でも……みなさん、どうしてここに?」



「「「――くくく……我ら一同“こみけ”に当選しましたので……」」」



 まさかのサークル参加組だった。

 よく見ると、黒ローブ集団は『魔法少女オトナエリミナ』『まよねぇず教入信ガイドブック』と書かれたお品書きやポップを手にしており。


「わっ、すごい! この短期間で2冊も新刊を!?」



「……きひひッ……この日のために……」

「……6人で原稿合宿をしましたぁぁ……ッ」

「……くくく、これほど布教に適した舞台は……ありませんからねぇぇ?」



「えへへ! たしかに、布教して信者(なかま)を増やすのも、“こみけ”の醍醐味ですしね!」


 そんなこんなで、人生をエンジョイしてそうな黒ローブ集団も、ボランティアで設営を手伝ってくれることに。


 さすが『毎日が“(まつ)り”』と言っていただけあり、てきぱきと机と椅子を配置していく黒ローブ集団。


 さらに、そこからも、ローナの知り合いたちが続々と手伝いに来てくれた。



「「「――救世主様! “数”が必要なら、エルフにお任せをッ!」」」



「あっ、エルフさんたちが、床下からわらわらと!」


「救世主様、おはようでやんす! どうやら、“きゃぱい”ようですね!」

「ふっ……わらわは『魔法少女エリミナ』大好き侍……義によって助太刀いたす」


「わぁっ! 女王様とエルナちゃんも床下から!」


「……な、なんで床下からなの?」

「てか、今……“女王”って言った? まさか、おとぎ話のエルフの女王……?」


 なにはともあれ、“こすぷれ”を推奨したかいもあり、さっそく他種族たちが参戦してくれたようだ。


「救世主様、神対応あざまる水産です! これには、エルフのみんなも大草原不可避です!」


「「「――草ァッ!!」」」


「ふっ……わらわも『魔法少女エリミナ』は、ちゅきちゅきで沼なのでな。“こみけ”に来られて、うれしすぎすぎ薬局だ」


「!? あ、あたしのデータにない言語を話してる!? ローナ、これってまさか……伝説の古代エルフ語!?」


「私にもわかりません」


「……えっと、女王陛下? とりあえず、あなたたちは椅子と案内看板を頼むわ」



「ふっ――“よきまるざえもん”だ」



「……なんて?」


 なにはともあれ、エルフ集団も参戦してくれたおかげで、設営はすぐにあらかた完了し――。


 そうこうしているうちに、サークル入場時間となり、同人誌を作ってきたサークル参加組が続々と入ってきた。

 すぐにワッフルたち“わ組”が――。


「追加の椅子の貸し出しはこっちでありやがりまーすっ」

「物販はこっちだど!」

「お釣り用の両替えは大丈夫だど!?」


 と、威勢よく声をかけていく。


 もちろん、これでローナたちの作業は終わりというわけではなく。

 ここから同人誌をそれぞれのスペースに搬入して、参加証や見本誌のチェックもおこなわなければならないが……。



『エ、ェ……エクスディェェェエスッッ!!』(※かわいい鳴き声)

「おーい、ローナぁっ! 手伝いに来てやったのじゃっ!」

『設営乙』



 そこへさらに、ローナの同居神とペットたちがやって来た。


「わぁっ、テーラさんたちも来てくれたんですね! ――あれ? でも、まだこの時間は、サークル参加者しか入れないはずじゃ……」


「まあ、ロムルーのやつが同人誌ってのを出すらしくての。われと封はその手伝いじゃ」


「えっ、ロムルーさんが同人誌を!?」


「…………」(こくこくこく!)


 ロムルーは頷きながら、『魔砲少女リリカル☆エリミナ 著:カキコ』と書かれたお品書きを見せてきた。


 ついでに、よく見れば……ロムルーはその夜色のシスター服のような格好には似つかわしくない『巨大リュック』と『付箋まみれのカタログ』も装備していた。


 どうやら、“こみけ”は、ロムルーの本好きとしての血を騒がせたらしい。


 その月色の瞳も、かつてないほどキラキラと輝いており。

 手にした筆談用の本には――。


『wwwwwwwwwww』


 と、たくさんの草を生やしている。


「こやつ、テンションぶっ壊れて、完全に語彙力なくなっとるの……」


「こ、こんなに目がキラキラしてるロムルーさん、初めて見ました」


「まあ、ロムルーのやつは置いといて……それより、われにもなにか手伝えることはあるかの? せっかくの祭りじゃし、われも一体感を感じたいのじゃ!」


「ありがとうございます! では、封ちゃんとテーラさんは、ステージの設営の手伝いを――」


「…………」(じ~~っ)


「? どうしましたか、ロムルーさん」


『Q.ローナ氏 その箱の山は?』


「あっ、これはみなさんの同人誌なんですが……まだ、それぞれのスペースへの搬入が終わってなくて」


「…………」(ちょいちょい)


「え? はい、これがサークル配置図ですが」


『おk』


 と、ロムルーは配置図に目を通すと、すっと手をあげた。

 その次の瞬間――。



 ――ぱら……ぱらぱら、ぱらぱらぱら……っ、と。



 無数の同人誌が、箱の中から紙吹雪のように舞い上がり……。

 そのまま、同人誌たちが意思を持ったように、それぞれのスペースへと飛んでいく。


「わぁっ、手伝ってくれるんですか! ありがとうございますっ!」


『(`・ω・)b』


 こうして、ロムルーのおかげで、同人誌の搬入もすぐに終わり……。


 それから、ローナも負けていられないと、『会場案内図』『注意事項』が書かれたお絵描きサイトの画面や、“すぴーかー”代わりとなる通話サイトの画面をあちこちに貼りつけていった。



「……よし、と! うん、これで全部かな? なんとか、開始までに間に合ったぁ」



 自分の作業が一段落して、ほっと息を吐くローナ。


 そこで、ふと……。

 作業していた特設ステージの上から、改めて会場を見まわし――。



「ぉ……ぉぉお~っ!」



 と、感動したように小さく歓声を上げた。


 ついさっきまで、そこは……なにもない、だだっ広い空間だったが。

 今やそこには、長机が整然と並べられ、カラフルな商会ブースもできており。


 そして――。


「あ、あれ!? 忘れ物したかもっ!?」

「……や、やっぱ、50部は刷りすぎたかなぁ」

「あっ、ど、どうも……今日はよろしくお願いします」(ぺこぺこ)


 サークル参加者たちが、期待と不安にそわそわしながら、それぞれのスペースを思い思いに飾っている。


 その光景は、まさに――。


「うん! インターネットで見た“こみけ”と同じだっ!」


 だんだんと自分たちの手で形になっていく会場の光景に、思わず胸がじーんと熱くなるローナ。


 もちろん、神々の“こみけ”と比べて規模はかなり小さいし、足りないものも多いだろう。

 それでも、この“熱”だけは、きっと同じであり――。


「す……すごい一体感を感じますっ。今までにない、なにか熱い一体感を――風……なんだろう、吹いてきてます、確実に、着実に――私たちのほうに!」


「……ん、そうね」


 と、ローナの声が聞こえたのか。

 メルチェも近くにやって来て、感慨深げに会場を眺める。


 もともとは、ローナとメルチェの“好き”から始まった“あにめ”作りだった。

 それが、この短期間でここまで大きな“好き”へと成長し、これほど大きなイベントにまで発展したのは、やはり驚きであり――。


「えへへ! “あにめ”と“こみけ”の力は、やっぱりすごいですね!」


「……うん」


 と、メルチェも微笑む。


「……みんなに、“こみけ”も楽しんでもらえるといいわね」


「はい! ――あっ、そうだ!」


 そこで、ローナはいいことを思いついたとばかりに、ぽんっと手を打った。


「せっかくなので、()()()()()()()()()()()()()から会場を見てみませんか!」


「……え? 見晴らしのいいところ? でも……もう開始まで時間もないし――」


「いえ、大丈夫です。すぐそこなので」


「……すぐそこ?」


「はい、ひとっ飛びです!」


 そう言って、ローナはメルチェの手を取ると。


「それじゃあ、行きますよ! エンチャント・ウィング!」



「……え? ひとっ飛びって―――――ぇぇぇぇええッ!?」



 ぐん――――っ! と。

 勢いよく、メルチェの手が空高くへと引っ張り上げられた。


 顔にかかる風圧で、メルチェは思わず目を閉じ……。

 そして、次に目を開けたとき。


「……ぁ……っ」


 そこは、“こみけ”会場の上空だった。


 たしかに、ローナの言うように、(ここ)ほど見晴らしのいい場所はなく。

 メルチェが、おそるおそる下を見ると……。


「……っ」


 会場前の広場を埋め尽くすほどの、人、人、人、人、人、人、人、人…………。


 もしかしたら、数万人はいるかもしれない。

 ローナの提案によって、“こすぷれ”も推奨したため、人間以外の種族も――水竜族や、エルフや、黄金郷の魔族なども、堂々と列に並んでおり……。


 その参加者の群れを、百戦錬磨の闘技場スタッフや、警備員として雇っていた元衛兵のラインハルテが、必死に列整理している。


 その人の数は、“数字”としては想定していたはずだったのに。

 実際に見てみると、思っていたよりも、ずっと多くて……。


「……こ、これっ、全部……“こみけ”に?」


「えへへっ! まるで、人がゴミのようですねーっ!」(※最近覚えた)


「……ご、ごみ? で、でも、こんなにたくさん、お客さんが――」


 と、メルチェが思わず目を見開くが。



「いえーっ! あそこにいるのはーっ! “お客さん”じゃないですよーっ!」



「……え?」


 ローナがはためく髪を手で押さえながら、風に負けじと叫ぶ。


「……“こみけ”にはーっ! “お客さん”はいないんだそうですーっ! スタッフも、同人誌を出す人も、それを買いに来た人たちも、全員が同じ“参加者”なんだって……インターネットに書いてありましたーっ!」


「……お客さんは、いない?」


「はいーっ! “こみけ”はーっ! ここにいる“仲間”みんなで作るお祭りなんですよーっ! だから、“みんな”だけじゃなくてーっ! メルチェちゃんも、一緒に楽しみましょうねーっ!」


「………………」


 そんなローナの言葉に、メルチェはしばし目をぱちくりさせてから。


「…………そうね」


 と、小さく頷いた。


 思い返してみれば、たしかに……。

 “こみけ”当日になってから、メルチェのキラキラ女児オーラが――。

 『メルチェの子供らしい“好き”や“楽しい”という感情の発露』であるキラキラが消えており。


『……ともかく、本番はここからよ。気を引きしめていきましょう』

『……みんなに、“こみけ”も楽しんでもらえるといいわね』

『こんなにたくさん、お客さんが――』


 途中から、『“こみけ”を成功させること』を優先して、『自分が“こみけ”を楽しむ』ということが頭から抜けていたかもしれない。


 もちろん、“こみけ”を成功させることは大事だが。



『――楽しみましょうね!』



 そんな、かつてのローナの言葉が……。

 ローナと初めて出会ったときにかけられた言葉が、メルチェの脳裏によみがえってきて――。


「……まったく……ローナには、いつも敵わないわね✧」


 メルチェは思わず、ふっと表情を緩めた。

 いつしか、その顔にはキラキラが戻っており。


「……くすくす✧ そうね、わたしも楽しまないとダメね✧ だって、この“こみけ”を一番楽しみにしてたのは――わたしなんだから✧」


「はいーっ! そのいきですーっ!」


 と、ローナもにこにこと微笑む。


「えへへーっ! ところでーっ! こうしてるとーっ! なんだか、“あにめ”の“おーぷにんぐ”みたいですねーっ! メルチェちゃんも、そう思いませんかーっ!」


「……そ、そうね✧ ところで、ローナ? さっきから、ずっと言いたかったことがあるのだけど――」


「はいーっ! なんですかーっ?」


 そして、メルチェは告げる。少しだけ顔を青くしながら――。



「……そろそろっ……降ろしてっ……すごぐ、ぎぼぢわるいっ✧」



「あ、はい」



      ◇



 そんなこんなで、さっきまでいた会場の特設ステージに戻ると。

 コノハとワッフルが血相を変えて、ばたばたと駆け寄ってきた。


「あーっ、ここにいたっ!?」

「もうどこ行ってやがったんですか、2人とも!? この忙しいときに!?」


「え、えっと……ちょっと、空に行ってました」


「「なんで!?」」


「……くすくす✧ でも、いい気分転換になったわ✧」


「ん? あれ、商会長? なんかすっきりした顔してるね?」


「……そう? まあ、そうかもね✧ くすくす✧」


「?」


「んなことより、もうすぐ開始時間でありやがりますよーっ!」


「え? あっ、もうこんな時間――!?」


 と、ワッフルの言葉で、ローナが慌ててインターネットの時計サイトを見ると。

 すでに、“こみけ”の開始時間まで、残り数分を切っていた。


「……それじゃあ、ローナ✧ 開始の挨拶をお願い✧」


「えっ、私がですか? 準備を一番頑張ってたのは、メルチェちゃんなのに――」


 そんなローナの言葉に……。

 コノハとメルチェが顔を見合わせて、くすりと笑う。


「なーに言ってんのさ」


「え?」


 コノハに背中を、ばしんっと叩かれる。


「……くすくす✧ これは……ローナが始めた物語でしょ?」


 と、メルチェも、ぽんっとローナの背中を押すように叩く。

 そう、そもそも……。


『――私たちの手で、“あにめ”を創りましょうっ!』

『――この世界でも、“こみけ”をやってみませんか!』


 そんなローナの言葉がなければ、なにも始まらなかったわけで。


「それにさ、やっぱ最初の一言は、ローナじゃないとねー。そのなんも考えてなさそうな声聞くと、不思議となんとかなるような気がしてくるし」


「……ん、そうね✧ あと、わたしは……しゃべるの苦手だし✧ やっぱり、ローナが適任よ✧」


「そ、そうですか……わかりました! そういうことなら、やってみますっ!」


 そうして、ローナが緊張しながら、“まいく”代わりの通話画面を出すとともに。

 インターネット画面に表示させていた時計が……10時をさした。



 ――“こみけ”の開始時間だ。



 ローナは特設ステージの上から、まだまだわちゃわちゃと慌ただしい会場を見わたしてから。

 通話サイトの画面へと顔を近づけ、すっと息を吸い――。



『『『……お待たせしました』』』



 あちこちに設置された通話画面(すぴーかー)から、ローナの声が幾重にも響きわたる。


 しん……と、静まり返る会場。


 そんな静寂の中――。

 ローナは、仲間に呼びかけるような声で。

 きっと、これから何度も口にするであろう言葉を――告げた。



『『『――ただいまより、“こみけ”を開始しますっ!』』』



「「「――わぁああああああああああああ……ッッ!!」」」



 そして、遠雷のごとく空気を震わせる大歓声と、万雷の拍手とともに。

 この世界初の“こみけ”が、始まったのだった――。



 ……エリミナが大観衆の前でアイドルライブをするまで、あと1話。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『世界最強の魔女』11/7、漫画10巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『ラスボス、やめてみた』漫画7巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『時魔術士』漫画3巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『レベルアップ』漫画5巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『装備枠ゼロの最強剣士』漫画7巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023
― 新着の感想 ―
>でも、世の中には『らふふ♡』とか『くらら☆』とか言ってくる人もいるので あ、やっぱり変だと思ってたんだw あまり気にしてる様子もなかったので普通に受け入れてるのかなーと。 さーて、もう逃げられないぞ…
まさか「なんかすっきりした顔」って初心を取り戻しただけじゃなくて上の口から虹色の噴水を出した後だったり
いやぁ…すごい一体感を感じるわ スタッフが優秀過ぎる件
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ