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世界最強の魔女、始めました 〜私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます〜(Web版)  作者: 坂木持丸
第12章 あにめを作ってみた

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117話 あにめを見てみた


 エリミナが王宮騎士に追われて、戦場へと向かっている一方。


 話は、ローナハウスの庭へと戻り――。


「あっ、それから、“無”のPRキャラ“むなっしー”を、さらにPRするための“4コマまんが”を作ってきました!」


「えっ、まだ続けるの、この話?」


「はい!」


 ローナは、近くにエリミナがいたことなど、つゆ知らず。

 コノハとメルチェに、そんな話を切り出した。


「……ちなみに、“4コマまんが”というのは?」


「あっ、それはですね」


 と、ローナは簡単に説明をする。


 ――“4コマまんが”。


 それは、“そしゃげ”のSNSなどで、よくキャラクターのPRに使われている絵物語である。


 そう、キャラクターも『ただ考えれば終わり』というわけではないのだ。

 そのことを、以前に港町アクアスのご当地クリーチャー“ふかきモン”を作ったときのローナは、まだ知らなかったが……。


 ローナもそのときから、さらに成長しており。


「というわけで、これが“4コマまんが”です!」


 そう言って、ローナがスケッチブックの次のページを見せる。

 そこに書かれていたのは――。



『タイトル:100日後に死ぬむなっしー』



「「………………」」


 いろいろな意味で不穏すぎるタイトルだった。


「……し、死ぬの? “むなっしー”?」


「はい」


「……そ、そう」


「ち、ちなみにさ、この……ページの右下で、“むなっしー”の生首がのたうち回っているのはなに?」


「あっ、それは、“ぱらぱらまんが”です! 神様たちの間では、生首にゆっくりしゃべらせるのが流行ってまして……えへへ! こうやってページをめくると、“むなっしー”の生首がダンスするんですよーっ!」


「怖い怖い怖い」


「……でも、これは面白い表現ね……絵を動かして物語を表現するなんて」


「はい! 神様たちの世界には、こんなふうに絵を動かす“あにめ”という作品が、たくさんあるんですよ!」


「「……あにめ?」」


 きょとんとするコノハとメルチェ。

 情報通の彼女たちでも知らないということは、やはり“あにめ”もこの世界にはないものらしい。


「えっと、“あにめ”というのはですね……」


 と、ローナはコノハたちに簡単に説明をする。


 ――“あにめ”。

 それは、神々の最重要文化のひとつである(※ローナ調べ)。


 インターネットを見れば、どこもかしこも“あにめ”の絵だらけであり……。


 神々は“あにめ”の絵を自らの象徴(アイコン)とし、“あにめ”の絵だけで会話をし、さらには“あにめ”の絵と結婚したりもするのだとか。


「……へぇ? それは、お金のにおいがするわね」


 と、商人の血が騒いだのか、真っ先に話に食いついたのはメルチェだった。


 それもそのはずだ。

 神々の娯楽というのは、だいたいどれも、この世界のものより圧倒的に洗練されており……。

 以前にこの世界に取り入れてみた『神々のパーティー』も、一大ムーブメントを作り出すほどの影響力があったのだ。


 そんな神々の娯楽の中でも、『最重要文化』と呼ばれるほどの娯楽ならば、その影響力はどれほどのものか。


「……商人として、ぜひ見ておきたいわ」


「まあ、たしかに、説明するより実際に見たほうが早いですね。えっと……“あにめ”はこういうのです!」


 というわけで、メルチェたちに“あにめ”(公式無料公開)を見せた結果――。


「やー、すっごいね、これ……絵画をこんなに生き生き動かすなんて……こんな芸術、あたしのデータにはなかったよ! さすが神々の娯楽だね、商会長……商会長?」




꙳✧˖°⌖꙳――わぁぁっ✧ ぷいき○あ、がんばえーっ!꙳✧˖°⌖꙳




「このキラキラした女児、誰っ!?」


「うわっ、まぶしっ」


 ……メルチェが予想以上にドハマリした。


 最初は『お金のにおい』『商人として』などと言っていたのに……。 

 数分後には、キラキラ女児オーラを全開にしながら。


꙳✧˖°⌖꙳……ふぉぉおおおおっ!!꙳✧˖°⌖꙳


 と、画面にかじりついていた。



꙳✧˖°⌖꙳――今よっ……そこっ✧ 腎臓っ✧ ぷ○きゅあ、腎臓を狙ってっ!꙳✧˖°⌖꙳



「こんな女児は嫌だ……」


「人体の急所を知り尽くしてますね……」



꙳✧˖°⌖꙳――ん゙ッッ!!꙳✧˖°⌖꙳



「うわぁっ、商会長がいきなり死んだ!?」


「いえ、これは……“尊死”です! “尊さ”の過剰摂取によって、メルチェちゃんの心臓が一時的に止まっちゃったみたいです!」


「そんなことある!?」


 こうして、“あにめ”開始から24分後――。



「……もう終わり? まだ始まったばかりでしょ? なに勝手に終わってるの?」(半ギレ)



「え、えっと、聞くまでもないと思いますが、“あにめ”はどうでしたか?」


「……すごかった」


 メルチェがぬいぐるみに顔をうずめながら、興奮気味に頬を上気させる。



꙳✧˖°⌖꙳……絵を自然に動かすために、あえて絵を崩すという超絶技巧……グッズ展開を見すえての設定や画作り……中毒性の高いエンディングのダンス……『女児』という新たな層に完璧にリーチしたキャラクターや設定も見事というほかない……“あにめ”はまさに、物語表現における到達点ね……商人として、とても参考になったわ……そう、商人として……꙳✧˖°⌖꙳



「あ、はい」


「めちゃくちゃ早口で語るな、この女児」


「……それより、ね? ローナ……早く、続きが見たいわっ」


「え?」


 期待に目をキラキラさせながら、おねだりしてくるメルチェ。

 そのあまりの女児力に、ローナもすぐに首を縦に振りたくなるが……。

 しかし、ローナは目を泳がせて――。


「え、えっと、続き……ですか? それは、ですね……えっと」


「……? どうしたの?」


 と、ローナはしばらく言いよどんでから。

 やがて、おずおずとメルチェに告げた。



「あ、あの……私は無課金なので、“あにめ”は基本的に1話しか見れないんです」



「…………え?」


 そう、これほどまでに労力がかかっている“あにめ”が、そうそう無料で見れるわけがなく……もちろん、お金が必要だった。


 それも、神々のお金が。


 ローナとしても自らお金を払いたいぐらいだったのだが、神々のお金を持っていないため、どうすることもできず。


 たまに“一挙放送”というものもやっているらしいが、いつもローナが知らないうちに終了しており――。



「……ぅ、嘘よ……わ、わたしは……信じない」



「ああっ、メルチェちゃんの瞳から希望の光が失われちゃったっ」


「……あ、“あにめ”……“あにめ”が欲しい」


「き、禁断症状みたいになってる……」


「え、えっと、“あにめ”が欲しいんですか? とりあえず、“あにめ”は他にもありますよ! 一緒に見ましょう!」


 そんなこんなで。

 メルチェを元気づけるために、他の“あにめ”の1話(公式無料公開)をいろいろ見せることになり――。


「こちらは、最近始まった変身ヒロイン“あにめ”の新作です!」



꙳✧˖°⌖꙳わぁぁっ✧ ぷいき○あがアイドルにっ!꙳✧˖°⌖꙳



「こちらは、神様たちに大人気の巨人“あにめ”です!」



꙳✧˖°⌖꙳わぁぁっ✧ 真っ赤な巨人さんだぁっ!꙳✧˖°⌖꙳



 “あにめ”が始まるとともに、ふたたびキャッキャと目を輝かせるメルチェ。

 しかし、“あにめ”が終わると同時に――。



「…………はぁぁ……」(クソデカため息)



 ふっと虚無顔に戻ってしまう。

 そう、“あにめ”の1話というのは、どれもこれも、すごくいいところで終わってしまうものであり……。

 その続きを永遠に見ることができないというのは、女児にとっては耐えがたい苦痛であった。



「……ゥ、ァァ……続き……続きが、ない……」(※メルチェ)



「や、やばいっ! 商会長の顔が、どんどん女児がしていい顔じゃなくなってくっ! ど、どうしよう、ローナ……ローナ?」



「……ゥ、ァァ……続き……続きが、ない……」(※ローナ)



「ミイラ取りがミイラに!?」


 より事態が悪化していた。

 そう、ローナはこれまで、長女だから我慢できていたが……。

 もともと、『“あにめ”の続きが見たい』という渇望は、メルチェと同じぐらいにあり。


「こ、こうなったら……」


 と、ローナはメルチェと顔を見合わせて、こくりと頷き合う。


 そう、()()()“あにめ”の続きが見られないなら――。

 やるべきことは、ひとつだけだ。


「コノハちゃん、メルチェちゃん……」


 そして、ローナは決意に瞳を燃やしながら、宣言する。



「――私たちの手で、“あにめ”を創りましょう!」



 ……エリミナが大観衆の前でアイドルライブをするまで、あと7話。

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― 新着の感想 ―
早くも君とアイドルな新プ◯キ○アが(笑) 確かに第一話は無料公開してる。
神々の通貨を課金する手立てはないのかな? この世界の女神様とか知り合いいるんだしワンチャンない?
神々にメルチェちゃんの様子を配信できれば、投げ銭で稼いで課金できるかな?
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