101話 ドンゴワに行ってみた
本当にニコ○コで異変が発生してる……。
ちなみに、書籍4巻は8/6発売予定とのことです(即Amazonの予約ページもできてました)
「――というわけで、またこの謎の空間を使わせてもらえたらなぁと!」
「どういうわけですか……」
そんなこんなで、“期間限定イベント”中の地底王国ドンゴワに行くことを決めた翌朝。
ローナはさっそく旅支度を整えて、光の女神ラフィエールのいる空間へとやって来た。
本来、地底王国ドンゴワに行くには、『なぜか無限に岩が転がってくる険しい山道を越え(以下略)』といった手順が必要らしいが……。
最近、黄金郷エーテルニアへ行ったときのように、『“謎の空間バグ”という移動手段を使えば、一瞬でドンゴワに行くことができる』と、インターネットに書いてあったのだ。
「やっぱり、新しい場所に行くなら、この空間が一番便利ですね! 家から翼5分ぐらいの距離ですし!」
「――我が使徒ローナよ、よく聞くのです。ここは近くて便利な公共交通機関ではありません……って、なぜ目をキラキラさせながら、わたくしに“すいか”をかざしてるのですか? わたくしはなにを期待されているのですか? いえ、ダメですからね? ここは神聖なる空間なのであって、賄賂をもらったからと簡単に使わせるわけには――」
「あっ、そういえば、ドワーゴさんからキンキンに冷えたビールをもらってき――」
「――あ……ありがてぇっ……!」
というわけで、この謎の空間を使ってもいいと許可が下りた。
「かぁ~~~っ! キンキンに冷えてやがるっ……!! 犯罪的です、うますぎます……! 染みこんできやがる……体に……うぅっ、涙が出てきました……」
(やっぱり、賄賂……賄賂は全てを解決するんだなぁ)
またひとつ、世の中について学んだローナであった。
とまあ、豪遊している女神はさておき。
“謎の空間バグ”という移動手段は、それなりに時間制限がシビアなので、ローナはさっそく動き始めることにした。
「――フルスロットル! からのぉ……下に1歩……右に5歩……上に430歩……左に10歩く……下に300歩! ここで見えない壁にぶつかるから――」
こうして、ちょこちょこと動きまわること、しばし。
「うん、ここで大丈夫そうかな……それじゃあ、地底王国ドンゴワへレッツゴー!」
と、ローナが言ったのと同時に、世界が光に包まれていき――。
「――わっ、とと」
気づけば、ローナは落下していた。
とはいえ、この移動方法も2度目なので、ローナは冷静にエンチャント・ウィングを発動して空を飛ぶ。
そのまま、空中で体勢を整えて、改めて眼下に視線を向け――。
「わぁっ!」
と、ローナは思わず、はしゃいだ声を上げた。
ローナの眼下に広がるのは、巨大な空洞の中に広がる地底都市。
かんかんかんッ! と金属を打つ音がひっきりなしに鳴り響き、水路のように流れる赤熱したマグマや、光る鉱石たちが家々を照らしている。
そんな家々の頭上には、トロッコの線路が縦横無尽に張りめぐらされており……。
その光景は、間違いない。
「ここがドワーフの国――地底王国ドンゴワかぁっ!」
ローナはそう言いながら、改めてインターネット画面を確認する。
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▍マップ/【地底王国ドンゴワ】
▍概要
【フーリン火山】の内部にあるドワーフの
国。
西方と東方の境目にあり、東西の文化が混
在している。
【ニコニ坑道】から鉱石・石炭が産出され
ることもあって職人が多く、【鍛冶】関連の
サブクエストでは【ナイスなボート】を作る
ことができる。
名物は、【職人米】【ニコニコッペパン】
【あんこ入りパスタライス】【きしめん】
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(う、うぅ~、火山の中だけあって、動いてないのに暑いよ~……でも、たしか“すいか”を食べれば、なぜか暑さ耐性がつくんだったよね。たくさん作っておいてよかったぁ)
というわけで、ローナは“すいか”をしゃくしゃくと食べつつ、都市を空中から観察することに。
(えっと、インターネットによると、お祭りをやってるって話だったけど……うーん、どこでやってるのかなぁ――ん?)
と、そこで。
なにやら城の前の広場に、人だかりができているのが目に入ってきた。
その人だかりの中心にあるのは――。
(なんだろう、あれ……星の形の石?)
なぜか、やたらと光り輝いていて、『P』という文字が刻まれている☆形の石の山だった。
この国に来たばかりのローナには、なにがなんだわからなかったが……。
(まあ、お祭りってそういうものだよね! とりあえず、あそこに行ってみよっと!)
というわけで、ローナはさっそく広場へと降り立った。
いきなり空から舞い降りたローナに、一部のドワーフたちがぎょっとしたような顔をするが……。
広場にいたほとんどのドワーフたちは、ローナに気づくこともなく騒いだままだ。
それは、お祭り特有の喧騒――などではなく。
「どわぁああぁッ! もう食料の備蓄がねぇどん!?」
「なんでキラキラした石しか手に入らねぇんだど!?」
「もうダメだぁ……おしまいだぁ……っ」
あきらかに絶望の叫び的なものだった。
(あ、あれ? これが、お祭り……?)
なんだか、思ってたのと違った。
というか、ローナにとってなじみ深い“滅亡案件”の空気を感じるが……。
(うーん、誰かに話を聞いてみたほうがいいのかなぁ?)
と、ローナが辺りをうろうろしていたところで。
ふいに、ローナの肩がとんとんと叩かれた。
「そこの人間のお嬢さん? 少々、お時間よろしいですか?」
「え? あっ――はい、いいですよ! えへへ!」
ちょうどいいタイミングでの現地住民からの接触だ。
ローナが思わず笑顔になってふり返ると――。
そこには、自警団手帳をかかげたドワーフの2人組がいた。
「――我々はこういう者ですが、あなたに不法入国の疑いがかけられています」
「………………」
「詰所までご同行願えますか?」
「…………はい」
というわけで、ドンゴワ観光開始から10分後。
ローナは不法入国容疑で、ドンゴワ自警団に連行されることになったのだった。










